火災は減少傾向だが課題も多い。自動運転による救急車両やアップルカーは実現するか。

はじめに

地震・雷・火事・オヤジとは、恐い者の代表として言い伝えられていた諺だ。アイキャッチの図は、江戸時代に出版された鯰絵(なまずえ)だ。地震を引き起こすナマズと、雷を鳴らす鬼、火事を擬人化した職人と善人顔(づら)した親父が登場している。この鯰絵は1855年(安政2年)10月2日に起きた安政の大地震の後に江戸を中心に大量に出回ったようだ。今回は、そんな火災について少し深掘りしてみたいと思った。
(出典:消防防災博物館

全国の火災発生数は10年で3割減少

総務省消防庁のデータによると、2011年の出火件数は約5万件だったが、2020年の出火件数は3.45万件と約7割に減少している。火災による死者数は、2011年の1766人から2020年の1321人への約75%に減少している。しかし、なぜ火災が発生するのだろう。
(出典:Yahoo News

出火原因のトップはタバコ

出火の原因のトップはタバコであった。これは平成29年のデータだけど、出火件数3万9,373件のうち失火による火災は全体の70.5%であり、その多くはタバコやこんろ、焚き火など火気の取扱いの不注意や不始末から発生している。失火に次いで多いのが残念ながら放火だ。

(出典:fdma

放火関連による火災件数は10年で半減

江戸時代には、放火は厳しく取締られた。放火したものには、放火場所や本人の居住地などを引き回した上で、火罪や死罪に処した。火罪とは、いわゆる火炙りの刑であり、死罪とは斬首の刑だ。みせしめの目的もあり、非常に厳しく処罰された。現在でも、人が住んでいる建物等に放火した現住建造物等放火罪では、死刑もしくは無期、5年以上の懲役と非常に重い罪となっている。放火や放火の疑いのある火災の発火原因をみるとライターによるものが全体の約29.0%と最も多い。また、火災一件あたりの損害額を時間帯別にみると深夜の0時から2時の時間帯が最も多い。

(出典:fdma

出火が多いのは春だった

家事というと、空気が乾燥し、暖房を使う冬場に多いというイメージがあるが、消防庁の資料によると出火件数が最も多いのは3月だった(平成29年実績)。冬場に続いて春も乾燥するが、その上で、さらに風が強い季節である点が背景にあるようだ。つまり、着火しやすい乾燥と燃え広がりやすい強風という条件が重なるためだという。

(出典:zenrousai

火災による死者数の多くは高齢者

火災による死者の年代別の分布を示したものが下の図(平成29年度実績)だ。65歳以上の高齢者が71.6%を占めている。特に81歳以上の死者数が多い。高齢者を火災の被害から守るにはどうすれば良いのだろう。消防庁によると、住宅用火災警報器の点検と、住宅用消化器の用意、そして防炎品の利用の3つが重要だという。火災警報器を活用することで逃げ遅れを防ぐ。ポイントは電池だ。火災警報器の電池の寿命は約10年とされており、定期的な点検と電池交換が求められる。また、被害を最小限にとどめるには初期消化が重要だ。高齢者でも使えるエアゾール式簡易消化器などもある。最後に延焼の防止だ。大切なおじいちゃん、おばあちゃんには、燃えにく素材で作られた衣服や寝具、パジャマなどを使って欲しい。身近に高齢者の方がいたらプレゼントしてはどうだろう。

(出典:fdma

救急活動件数は増加中

東京消防庁によると、昭和35年には8万件程度の救急出動件数だったが、平成17年には約70万件に増加した。その後平成21年には約65万件まで減少したが、令和元年には82万5,929件と過去最高を記録した。また、新型コロナの感染拡大に伴って、搬送困難件数も増加している。東京都が2002年の事業コストを分析した結果では、救急業務で年間約285.5億円を支出しているので、救急出動1回あたりのコストは約4.5万円となる。

(出典(左):都庁、出典(右):朝日新聞

世界の救急車両等

救急車両を呼ぶ時は日本では119番だけど、米国では911番だ。EU内の共通番号は112番で中国は120番、台湾は119番だ。国によって番号が異なるため、海外旅行中や海外赴任者は注意が必要だ。異なるのは電話番号だけではない。車両の色も形もサイレンの音も異なる。最近では二輪車やヘリコプターや船もしくは水陸両用車などが投入されている。

(出典:ambulance

トヨタのe-Care

2020年1月に米国ラスベガスで開催されたCES2020に、トヨタ自動車は未来の電動救急車e-ケアを発表した。まだまだコンセプトレベルだけど、自動運転機能を有して、車椅子のまま乗車でき、移動中の車両の中でディスプレイを通じて医師と会話し、診察を受けながら病院に向かうというものだ。自動運転の技術が救急車両にも活用されれば、救急に伴うコストを低減しながら、利用者への利便向上を図ることも可能になるのではないだろうか。

(出典:response.jp

アップルカーのコンセプトモデル

自動運転ではテスラが一歩も二歩も先行している感があるが、アップルも虎視眈々と自動運転自動車の開発や投入の準備を進めているようだ。下の図は、テスラスタイルのアップルカーのコンセプトイメージだ。ティム・クックCEOは、「自動運転技術の開発はすべてのAIプロジェクトの母親と述べ、その重要性を強調している。」という。しかし、Bloombergによると、自動運転車Apple Carの開発プロジェクト「Project Titan」の複数のメンバーが退社し、自動運転自動車開発のスタートアップ企業「Zoox」に転職したという報道がある。また、Apple Carのソフトウェア開発の統括責任者であるジョー・バス氏がAppleを退社し、Meta(旧Facebook)に転職して複合現実(MR)を開発する技術プログラム管理ディレクターに就任したという。Apple Carは2025年には登場すると推測されているが、その道のりは遠く・厳しい。特に、自社で製造するのか、パートナー企業に製造を委託するのかも決まっていないため、早くても2028年という声もある。開発エンジニアの想いを結集したアップルカーが早期に市場に出ることをアップルファンの一人として切望したい。

(出典:ipadmod.net

自動運転機能付き消防ロボット

火災の話に戻すと、三菱重工は、自動運転付きの消防ロボットを開発している。特に、石油コンビナートでの火災など人が近づくことができない場所でも放水できる放水砲ロボットとホース延長ロボットの組み合わせだ。まだ、試作機の段階だけど、最大300メートルまで消化ホースを自動で敷設して、水を供給する。飛騨高山の白川郷では火災に対応して毎年放水訓練を行っている(参考)。屋内のスプリンクラーのように、屋外で火災が起きてもそれを検知して、放水ロボットが消化するような世界をもう視野に入っているのだろうか。

(出典:clincher.com

まとめ

今回は火災の動向が気になって調べてみた。火災自体は減少しているが、冬場よりも春の方が多いと気づいた。また、高齢者の死亡者が多いのが気になった。いつも高齢者の身近にいて、何か異変が生じた時にすぐに通報するようなロボットを開発できれば、早期検知、早期消化、早期救出が可能となるような気がする。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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