エネルギー問題(その1):エネルギー確保は可能。課題は環境への影響の見える化と抑制だろう。

はじめに

技術士の二次試験でも、環境保護やSDGs、温暖化対策についての知見や解決能力を問う問題が出ている。技術士の試験の場合には、21の専門部門に別れているため、その質問も例えば電気電子部門の技術者としてCO2の排出問題について課題を示し、解決策を示し、リスクとそれへの対応についての考えを述べよといった感じだ。それぞれの専門分野の立場での記述を求めている。今回は、そのような受験生の読者を想定しながら、エネルギー問題について考えてみたいと考えた。少しでも参考になる部分があれば幸いだ。

エネルギー問題

エネルギー問題は重要な問題だが、その原因や対応策が多岐にわたっている。人類のエネルギー消費に伴って地球の温暖化や環境・生体破壊が発生しているが、それがなぜ問題なのか、現在行っている対策は本当に有効かつ十分なのか。自分は、エネルギー分野の専門家ではないが、日本技術士会のセミナーに参加して、新たな気づきや知らなかったことがたくさんあった。そこで、現時点での自分の理解を深めるという意味で、特に次の4つの問題を整理してみたい。今回はその1として、エネルギー確保が可能かを考えてみたい。
その1:人類は必要なエネルギーを将来にわたって確保できるのか。
その2:エネルギーを消費することで環境への深刻な影響を与えないか。
その3:各発電方式で環境に与える影響は軽減可能か。
その4:将来の望ましいエネルギーは何か。

世界が目指すべき化石燃料の消費量

下の図は、東京工業大学の久保田名誉教授と日本技術士会の平田さんがNPO法人「もったいない学会」に投稿した資料(参考1)の引用である。2015年でパリで開催されたCOP21に置いて日本政府から提案して欲しいと提言したものだ。人口が急速に減少する日本にとっては実現が厳しい内容なので残念ながら日本からの提案に採用されなかった。しかし、有限な化石燃料を地球の全人類が公平に利用するには、このような全世界的な目標に対するコンセンサス形成は非常に重要だし、面白い取り組みだと思った。

世界各国における一人当たりの化石燃料使用量

四国電力のホームページにおいて主要国に於ける一人当たりのエネルギー消費量が掲載されていた(参考2)。これには化石燃料以外のエネルギーも含まれている。2014年度実績では、カナダ、アメリカ、韓国、ロシアが上位国で日本は7位だ。前項の提案レベルは下の図の世界平均と同じ水準だ。エネルギー消費の多い先進国がいかにして、生活レベルを下げる事となくエネルギー消費量を下げるかが本質的な課題かもしれない。

一次エネルギーと二次エネルギー

前項の縦軸が一次エネルギーとなっているが、これは自然界に存在する石油とか、風力とか、太陽光とかのエネルギーであり、かつ石油の使用量に換算している。我々が生活に使っている電気とかガソリンは人工的なエネルギーであり、二次エネルギーもしくは最終エネルギーと呼ぶ。下の図はWELLNESSHOMEのホームページに掲載されている資料(参考3)を加工した。仮に電気使用量を現行レベルを維持しても、発電効率を高めたり、自然エネルギーを活用すれば、一次エネルギーを削減することができる。つまり、技術革新によって問題を解決できる可能性がある。

必要なエネルギーを確保できるのか?

経済産業省のレポート(参考4)によると一次エネルギーを100とすると、最終エネルギーは68だった。同レポートの内訳を集計すると次のようになった。単位は、1015Jで、熱量に換算されている。自家発電と事業用発電の効率がそれぞれ39%と41%と低いのが特徴である。また、最終エネルギー消費では企業事業所等が全体の約63%をしめている。企業による自家発の比率を高めることが有効ではないか。

自家発の自家消費量の割合は減少傾向

一般事業者の自家用発電を用いた発電量は増加傾向にあるが、自家消費電力の割合は下図のように減少傾向にある。これは、矢崎雅俊さんの環境工学のホームページに掲載されたいた資料(参考5)に矢印を加筆した。自家消費比率が減少している原因は燃料費の高騰でコージェネが下がっているためという。電力買い取り制度(FIT)を活用して、自家利用よりも売電を優先しているのではないかという疑問もあり、もう少し精査が必要だ。

燃料別のCO2排出量では石炭が多い

特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令(参考6)から各種燃料の単位発熱量と炭素排出係数が掲載されていたので、再掲する。これによれば、一般炭はガソリンに比べると炭素排出係数が高い。しかし、下表の参考値ではガソリンと石炭はほぼ同じである。また、日本を除く海外では石炭による火力発電が常識であり、石油による火力発電が多いのは日本だけという指摘がある。

エネルギーの埋蔵量では石炭がダントツに大きい

経済産業省資源エネルギー庁が発行する総合エネルギー統計(平成12年版)によるとエネルギー資源の可採埋蔵量と可採年数は次の通り石炭が圧倒的である(参考7)。しかし、問題は石炭によるCO2やNOx、SOxなどの排出ガスである。

日本の石炭による火力発電はクリーン

電気事業連合会によると日本の火力発電によるSOx/NOxの排出量は他国に比べても低い数値に抑えられているという(参考8)。

日本の石炭による火力発電効率は高い

電源開発のホームページには各国の石炭火力発電所の発電端効率の推移が掲載されている。これによると、日本は他国に比べて高い水準を維持している。中国も急速に改善しているが、それでも2010年の発電端効率は35%程度であり、日本の41%よりも6ポイントも低い(参考9)。インドに至っては26%で低迷している。これら海外諸国の発電効率を高めることは日本にとっても海外にとってもメリットのあることではないか。

CO2のリサイクル技術

詳しくは次回に回すが、CO2を地中深くに送付して、埋蔵させる技術や水素とCO2からメタンを生成する技術などが近年急速に進展している。CO2の課題は大きいが、CO2の産出を抑制するとともに、このように地下に貯蔵させたり、再利用することで解決に寄与するのではないかと期待される。

COP21での合意

2020年以降の地球温暖化対策の取り組みとして、パリ協定が2015年に採択された。これは、世界の気温上昇を産業革命前から2度未満に抑えることを目標として、各国が自主目標を設定してこれの実現に取り組むという内容だ。日本では、2030年に2013年度比26%の削減を宣言している。環境省のホームページにはパリ協定の概要が掲載(参考10)されている。これによると、先進国は2020年までに全体で年間1000億ドルの資金動員を行うとされている。結局、先進国と途上国の間の格差の是正の問題を金で解決したと言われるのはこの点が問題なのかもしれない。また、設定されている2度の目標もどうやってトレースするのだろうか。確かに冒頭で挙げたような一人当たりの化石燃料消費量を定め、これに向けて各国が努力する方が実行性もあるし、レビューもできるのではないかと思う。

まとめ

エネルギー問題は、幅が広くて奥が深い。調べれば調べるほど疑問が湧いてくる。専門家ではないので責任ある提言にはなりえないが、次の4つの案の私見を記載したい。
案1) 再利用可能エネルギー(風力、潮力、地熱、太陽光など)
案2) 海外と日本を結ぶ天然ガスのパイプライン構築:これは本ブログでも考察した。
案3) 石炭による高品質な火力発電所によるつなぎ

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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