エネルギー問題(その2):多様な発電方式での環境への影響を考える。どの方式でも環境への影響はある

はじめに

人類はエネルギーを消費しながら生活している。狩猟民族の頃は太陽のエネルギーや自然のエネルギーに囲まれて生活してきたが、農耕民族になると灌漑工事をして水の流れを制御した。現在は、電気エネルギーなどを主に活用して生活している。電気を消費するには、電気を供給する必要があり、電気を供給するには発電と送電と配電が必要だ。ここでは、特に多様な発電方式を外観した上でそれぞれで発生する環境への影響について考えてみたい。

エネルギー問題

前回のその1では、エネルギーを将来にわたって確保できるのかについて深堀してみた。今回は、その2として、環境への影響について考えてみたい。
その1. 人類は必要なエネルギーを将来にわたって確保できるのか。
 その2. エネルギーを消費することで環境への深刻な影響を与えないか。
その3. 各発電方式で環境に与える影響は軽減可能か。
その4. 将来の望ましいエネルギー活用への3つの方向性

発電方式の構成比

世界主要各国の発電方式とその比率

下の図は原子力・エネルギー図面集経由の資料だ(参考1)。2009年時点なので、東日本大震災の発生前の構成比なので、原子力が26.9%を占めている。この比率は、対象の12ヶ国の中でもフランスの76.2%、韓国の32.7%に続き3番目に多いことに驚きを感じた。しかし、そのフランスも2025年には原子力発電比率を50%まで下がるという目標を掲げている(参考2)。
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日本の発電方式の比率の推移

下の図は、電気事業者連合からの資料(参考3)だ。若干数字が異なっているが、原子力発電の比率が、2010年の28.6%から2012年の1.7%に急激に減少した。その代わりに火力発電が61.7%から88.3%に増加した。特に、LNGによる火力発電が29.3%から42.5%へ13.2ポイントも増加している。
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火力発電による環境への影響

CO2の排出と温暖化

下の図はIPCCの第5次評価報告書の概要からの掲載だ(参考4)。CO2の排出量の増大と世界平均地上気温の上昇に相関があるのではないかという仮説のもと、いかにCO2の排出量を抑制していくのかが課題である。COP21のパリ条約においても、産業革命からの世界の平均気温上昇を2度未満に抑えることを共通目標とすることが合意されている。
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CO2の排出量

下の図は国立環境研究所のホームページからの引用だ(参考5)。世界的には1993に比べて2013年には60%も増加している。特に、中国の増加が著しい。日本はほぼ横ばいだが、火力発電所の比率が増えているために増加傾向にあり、この抑制は課題だ。
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原子力発電による環境への影響

原子力発電所のメリットはCO2の排出がないことと、エネルギー源を特定の国・地域に依存しないで、安定して発電できる点だろう。しかし、問題は事故や災害が発生した時の影響が大きすぎる点だ。一般に、完璧な技術はなく、失敗やトラブルの原因を究明し、それを解決する中で技術が磨かれる。しかし、原子力の場合には、一度の事故が致命的な環境破壊を引き起こし、それを改善する方策を検討して実践する機会を得ることさえが難しくなる点ではないだろうか。世界的に原子力離れが進む中では、若手の技術者の育成やノウハウの継承が困難になっていくのも人的に厳しい点だ。また、出力調整が困難なため、需要の増減への対応は他の方式に依存することになる。
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水力発電による環境への影響

一般水力発電所と揚水発電

水力発電には、一般水力と揚水発電がある。揚水発電とは、夜間のオフピーク時には余剰電力を用いて下方ダムの水を上方ダムに吸い上げる。昼間のピーク時には上方ダムの水を下方ダムに流すことで発電に活用する。揚水発電所は国内に50近くあるが、問題はその稼働率の低さである(参考6)。
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主要な揚水発電

揚水発電所のうち認可出力のトップ10を抜き出した。単位はKWである(参考7)。所在地は水車発電機が置かれた都道府県だ。いずれも大規模な発電所だ。需要調整を火力発電所が対応して、揚水をやめれば、これら水力発電所の効率は倍増するのではないか。ただ、水力発電所は需要地から離れているため、風力発電と同様に、送電コストが大きい点も要注意だ。
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ダムによる環境への影響

ダムが環境に与える影響は広範囲だ。技術的な面で言えば、堆砂問題が特に深刻で、ダムは100年経つと砂に埋もれて使えなくなるという意見もある。また、堆砂率20%が健全なダムの目安だが、日経新聞(2014年10月24日:参考8)によると、会計検査院が調査した211のダムのうち100か所以上でダム内の土砂堆積が進んでいると報告されている。また、貯水機能を担っているため水力発電の効率だけを考えた運用ができないのも悩ましい点だ。
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風力発電の環境への影響

世界各国の風力発電所の拡大状況

下の図は、Global Wind Reportに基づいて、サステナビリティ・CSRマネジメントブログに掲載されていた図の引用だ(参考9)。ドイツが世界をリードしていたが、2008年には米国がこれを抜き、さらに2010年には中国がトップに躍り出た。なお、デンマークは2013年において風力で3分の1以上の電力を賄っている。世界の電気需要のうち風力で賄っているのは4%程度だが、今後さらに増大すると期待されている。
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日本での風力発電所の拡大状況

下の図は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるレポートを環境ビジネスオンラインのホームページで掲載されたものを引用したものだ(参考10)。国内でも建設は進められ、2014年度には設備容量約294万kWまで拡大した。2014年と2015年の設置基数は、それぞれ2022基と2102基と過去最高水準だった。
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風力発電の環境への影響

風力発電所を建設するための建設地及びそれにつながる道路の工事が発生する。山林の伐採が河川やこれにつながる海洋の自然環境に影響を与える。これに加えて、風力発電特有の問題として低周波音による騒音が挙げられる。
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低周波音による騒音問題

下の図は、「南伊豆の和」のホームページに記載されていたものの引用だ(参考11)。私自身、調べていて初めて知ったのだが、風力発電所では低周波数の影響が生じる。低周波音とは、一般には500Hz〜20Hzの帯域を言い、20Hz以下を超低周波域と言う。しかし、この超低周波と低周波騒音をILFN(Infrasound and low frequency noise)と呼でいる。これは海外でも風力タービンで体調が悪くなることが話題になっている(参考12)。
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太陽光発電

世界各国の太陽光発電の拡大状況

下の図はアジア・バイオマスエネルギー協力推進オフィスのホームページに掲載されていたものの引用だ(参考13)。太陽光発電はドイツが先行していたが、2011年にはイタリアに抜かれた。そして急激に増加しているのが中国だ。2014年に新しく導入された太陽光の設備容量は中国が10.6GWでトップ、日本は9.7GWで2位だった。これは、固定価格買い取り制度(FIT)を中国が2011年に、日本が2012年に導入したことが背景にある。先行していたドイツやイタリアでは、買い取り価格が引き下げられた結果、失速している。2014年末の累積では、ドイツ、中国、日本の順番となった。
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日本の導入数と買い取り価格

下の図は、経済産業省資源エネルギー庁のホームページに掲載されていた図の引用だ(参考14)。2014年の累積では、住宅用が407万kWと全体の約83%を占めている。住宅用の買い取り価格は25円/kWh、産業用は24円/kWhだが、産業用電力料金は16円/kWhなので、今後段階的に値下げが進むと見込まれている。日本の買い取り価格は諸外国に比べても倍近い相場で高いと言われているのも課題だろう。
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太陽光発電の環境への影響

太陽光発電はCO2の発生もなく、自然に優しい発電である。特に、既存の建物に設置する家庭用ソーラでは問題はないが、大規模な産業のメガソーラの場合には太陽光パネルを設置するための敷地が必要である。すでに人工的な場所であれば環境への追加破壊はないが、農地や森林などを整備してメガソーラにする場合にはやはり環境への影響を与えることになる。
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まとめ

環境への影響はどの発電方式でもある。問題はそれを軽減できるのかどうかではないか。次回に詳しく記載したいが、CO2に対しては地中深くに貯蔵する方式が検討されている。化石燃料のリサイクルにもつながる可能性がある。水力発電も大規模なものではなく中小規模の発電所を連携させる方策が検討されている。しかし、原子力発電は故障や災害のリカバリーが非常に難しいのでやはり避けるのが賢明だろう。風力は微妙だが、IFLNの存在が確認できたので、これを改善する方策は見つかるだろうと期待したい。太陽光発電は、ゼロエミッションの概念を拡大する観点から議論するべきだと思う。

以上

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