日本技術士会環境部門の3月度部会は気づきが多かった。

はじめに

3月31日の18:30から20:20は、日本技術士会環境部会の講演会だった。講師は、大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻の下田吉之教授による「未来社会における環境エネルギー~省エネルギーの重要性と大阪・関西万博への期待」だった。脱炭素社会の実現に向けて、エネルギーマネジメント、次世代エネルギー開発さらには市民の行動変革により目指すことの重要性をお話し頂いた。講演を拝聴していて感じたことを中心に課題や疑問、提案についてまとめてみた。

2つの課題

下田教授の講演では多くの課題が指摘されていたが、特に次の2つの課題が気になった。

課題1:電力供給のためのエネルギーポートフォリオの最適化

人類が直面しているのは、急激な温暖化であり、その原因が温室効果ガスの大量発生だ。このきっかけになったのが19世紀の産業革命だ。特に、世界最初の蒸気機関車は、1802年に開発された。当時は石炭を燃やして、大量の粉塵を吐き出しながらが走行した。日本原子力研究開発機関(JAEA)によると1960年代から急速に石油の利用が増大した。石炭利用も着実に増大している。石炭や石油の比率をいかに下げるかが課題だ。CO2の排出量を抑制するためのエネルギーポートフォーリオが重要だ。
(出典:JAEA

課題2:電力需要の抑制・効率化のためのダックカーブ問題への対応

現代社会は電力が基本的なエネルギーだ。これを効率的に発電する仕組みと同時に、この電力を効率的に利用する需要側の工夫が必要だ。ここで課題となるのが、24時間での変動や、季節での変動だ。24時間の変動では特に夕方から夜にかけてが1日のピークとなるため、ダックカーブと呼ばれている。この変動をどのように対応するかが需要面での課題の一つだ。

(出典:Inside Energy

3つの疑問

疑問1:本当に温暖化は問題なのか

CO2の排出を抑制しないと地球の温暖化がさらに進み、非可逆的な事態になると警鐘を鳴らす専門家が多い。確かに、近年は異常気象が日常化しており、対応策や改善策が必要なことは論を待たない。ただ、温暖化が本当に問題かといえば、少し疑問がある。地球は温暖化と寒冷化を約10万年周期で繰り返している。現在の地球は約1万年まえの温暖化が進んだ。これまでのパターンで見ると温暖化の時期は短く、その後は徐々に寒冷化に進み、長い氷河期に耐えている。日本では春夏秋冬の四季に恵まれているけど、地球は冬冬冬冬と続き一瞬の夏の後、また冬冬と続くようなものだ。暑いのも嫌だけど、寒いのも嫌だ。熱帯化はまずいけど、温暖化であれば、どちらかといえば望ましい変化とも言えるのではないだろうか。

(出典:地球環境研究センター

疑問2:メガソーラのための森林伐採して本当に環境は改善されるのか

地球温暖化を阻止するため、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると、2020年10月26日に菅首相(当時)が宣言した。これを実現するために全国に太陽光発電所の整備が進んでいる。2018年時点で中国が178TWhで世界一位、アメリカが97TWhで世界2二位、そして日本が72TWhで世界三位にランキングされている。平野の少ない日本でここまで太陽光発電を整備するために、山を削り、農地を太陽光発電所に転用している。しかし、山を削ってパネルだらけになるのは自然に優しいとは思えない。環境保護を目的にして、環境破壊を実行的に進めているとしたらこれは悲劇だ。なぜ悲劇かといえば、元に戻せないからだ。これでは持続可能とは言えないと思う。

(出典:太陽光発電最安値発掘隊

疑問3:電気自動車はダックカーブの解決策か、悪化要因か。

電気自動車の蓄電機能は諸刃の刃だ。充電や放電を制御するシナリオ3はベストシナリオだ。電力の供給が需要を上回る時期には蓄電し、逆に需要が供給を上回る時に放電すれば、ダックカーブの解消になる。しかし、日常的にEVを利用するシーンを想定すると、昼間はEVで外出(放電)し、夕方に帰宅して、電力需要がピークの時に充電するシナリオ1だとダックカーブをさらに促進することになる。つまり、EVによりダックカーブを解決するには、単にEVが普及するだけではダメで、その充電や放電を適切に制御することが必要だ。

(出典:日経X TECH

5つの提案

そんな課題や疑問を感じることの多いエネルギー問題をどのようにすれば解決するのだろう。まだ仮説のレベルのものも多いけど、いくつくかを提案してみたい。

提案1:EVのシェアリング普及

個人がEVを所有すると、どうしても昼間に走行して、夜間に充電するパターンになる。電池容量が64kWhの場合に、普通充電だと200V3kWだと満充電まで24.5時間も要する。一方、急速充電であえば1時間ほどで80%充電が可能だけど、3相200Vで50kWの容量が必要だ。一般家庭の電力は世帯数にもよるが10kWhとか20kWhなので、家庭の電力需要を倍増させることになりかねない。集合住宅の場合にはさらに大量の電力が必要だ。本当にこれがエコなのか。しかし、シェアリングを前提に考えると、電力需給に基づきながら充電し、充電の完了したEVを利用すれば良い。ゴミの焼却熱を用いた発電所を充電スポットとして整備するようにすれば、EVの充電とシェアリングをセットにしたビジネスモデルが成り立つのではないだろうか。

提案2:昼間の利用が多い=走行時充電の実現

太陽光発電が可能な昼間電気で充電する方法として考えられるのは、走行しながら充電する方法だろう。世界中で開発競争が進んでいる。特に、高速道路での整備が進めば、長距離走行を促進するインフラになるだろう。

(出典:YouTube

提案3:メタネーション

太陽光発電や風力発電で余剰に生成された電気を活用して蓄積可能な水素を生成し、これをCO2を合成して、メタンを作るメタネーションを都市ガスなどのインフラでエネルギーとして活用する仕組みも有望だ。


(出典:エコノミスト

提案4:ペロブスカイト太陽電池の活用

現在の太陽光発電はパネルが厚く、重いという欠点があるが、これを解決する新技術がペロブスカイト太陽電池だ。これは薄膜構造なので、たとえば、あらかじめ屋根の素材や壁の素材に加工することで一体形成できるというメリットがある。東芝を中心に日本企業も開発を主導している。個人的には、さらに反射の問題なども解決すると一気に普及する起爆剤になると期待される。

(出典:S-Energy

提案5:地熱発電の活用推進

地味だけど、火山国である日本には地熱発電所というオプションもある。地熱発電に適した立地は限られるけど、温泉でも活用できるバイナリー発電の技術も開発されている。温泉街との利害関係を調整し、お互いにWIN-WIN関係になるような構造ができれば、無駄に山を削ったり、土砂流を誘起させることも無くなるのではないだろうか。

(出典:松川地熱発電

まとめ

今回は、日本技術士会の環境部会に参加して、感じたことをまとめてみた。講演資料をそのまま出すのは控える必要があるかと思って、気になった点をネット等で深掘りしてみた。ただ、トピックそれぞれについては以前も投稿しているので、そちらも参照しながらまとめてみた。色々と課題もあるけど、解決策もあるので、うまく改善しながら活用できればと思う。何か参考になる点があれば幸いだ。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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