技術士二次試験(口頭試験)にチャレンジする方へのエール

はじめに

技術士法に基づき技術士になるには、技術士の一次試験と二次試験に合格する必要がある。この二次試験は筆記試験と口頭試験がある。筆記試験で合格した人には、11月6日に発表があり、口頭試験は年内の12月2日から24日と、年明け2024年1月6日から14日に実施される。筆記試験に合格した方は、口頭試験に向けて想定問答集を作成したり、模擬面接を受けたりしていることと思う。自分は、2015年度に電気・電子部門、2016年度に総合技術監理部門、2017年度に経営工学部門にチャレンジして、幸いにもそれぞれストレートで突破した。その中で感じたことを「はてなブログ」に書き連ねていたが、時期的に口頭試験にチャレンジする人の参考になる部分があればと、少しリバイズして投稿することにした。受験生にとっては口頭試験は最後の関門のように感じるかもしれないが、技術士として活動するためのスタートである。その意味では、技術士として活躍できるように自らのスキルをブラッシュアップする絶好の機会と捉えて、上位合格を目指してほしい。

SukiYaki塾の手羽先の会

技術士の試験にチャレンジする人を応援する会がSukiYaki塾だ(出典)。これは主宰者である鳥居先生が始めた活動で、世話好き(Suki)、世話焼き(Yaki)が語源だ。すき焼きが好きな会ではなかった。また、名古屋にもそのローカル組織があり、それが手羽先の会だ(出典)。この会に入って3年目になるが、皆世界の山ちゃんの「手羽先」が大好きだ。昨日も、2017年度の二次試験の筆記試験に合格した人が次の口頭試験に合格できるように応援する活動に参加した。内容的には、鳥居先生による講演と、先輩技術士によるエール、そして、先輩技術士と受験者による模擬試験だ。そして、世界の山ちゃんで幻の手羽先をたっぷり頂くお疲れさん会だ。その活動の中で感じたことを受験生へのエールとしてまとめてみた。

(出典:世界の山ちゃん

最後の頑張り

技術士の筆記試験(二次試験)で合格した人は、技術士の登録まであと少しだ。下のグラフに示すように技術士試験は合格率1割程度の難関試験だ。しかし、最後の口頭試験に限定すれば、過去の実績では分野によっても異なるが概ね9割程度は合格している。これは逆に言えば1割は不合格になっているということだ。その1割に入らないためにはどうするか!と考えるか、合格の5割に入るにはどうするか!を考えるか、それとも合格の上位に入るか!と考えるかによって、学習の戦略は異なるだろう。

(出典:技術士インフォ

不合格の1割に入らないための戦略

最近の合否通知は下のようなハガキが送付される。必須科目は選択式の問題で60%以上の正解率が合格基準だ。記述式の問題IIと問題IIIの点数は、A判定は60%以上、B判定は40-60%、そしてC判定は40%未満だ。下の例は問題IIも問題IIIもA判定だが、どちらかがB判定でも、トータルで60%以上の場合の総合判定はAとなる。しかし、選択問題の評価がA/BやB/Aの方は要注意だ。特に、口頭試験では、課題解決能力を問う問題IIIも口頭試験の試験官の面接材料として配布される。したがって、なぜ評価がBだったのかをしっかりと反省する必要がある。技術士の資質として、「フォローする」という能力が問われている。このため、口頭試験でのツッコミは必然的に厳しくなることを覚悟すべきだ。これに対応するには、やはり入念な準備をするしかない。

(出典:筆者が当該者の了解を得て掲載)

合格の5割に入るための戦略

要は合格者の平均像を目指すということだ。技術士のセミナーにて先輩技術士の先生が指導することを真面目にきちんとマスターすることだ。現在のパターンは平成25年度から5年目なので、口頭試験の傾向と対策も多くの先生が指摘する通りだ。オーソドックスな質問を50問程度は用意して、それへの回答を用意すること。模擬面接を最低でも3回程度は実施して、想定問答の見直しをすること。忙しい日常の中でも、時間を捻出して、致命的なミスをしなければ、合格するだろう。

1) 人の評価は最初の3つの印象でほぼ決まる

技術士にふさわしいと試験官に感じてもらえることが重要だ。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが1971年に提唱したメラビアンの法則によると人は目から入る情報が55%、耳から入る情報が38%、そして話している内容はわずか7%だという。また、スリーセット理論によると、人は最初の印象と二回目の印象と、三回目の印象でほぼ決まるという。口頭試験で言えば、書類による印象と入室時の見た印象と、受験者が話す声の印象で受験者の印象=評価はほぼ決まるという。入室時の身なりや動き、そして、受験番号や名前を述べた時には、試験官の印象がほぼ決まっていることをよく理解すべきだ。

(出典:トレンディに追いつかなきゃ

2)口頭試験は加点主義

口頭試験の試験官は、筆記試験であなたの答案を見て合格と判断してくれた人です。つまり、あなたを合格させようとしている。その期待に沿った努力をすることは当然の責務です。しかし、本番の口頭試験では、回答に困るような質問や、回答しにくい質問、質問の意味がよくわからない質問がある。そのような時にはどうすべきでしょうか?適当に答えるのはダメだ。時間の無駄だけではなく、試験官の印象まで悪くなる。必ず質問の主旨を再確認して、相手の意図に合うように回答しましょう。また、本当に知らないことは「すいません。その点は不勉強でよくわかりません。」「うまく説明できません。この後しっかり調べて勉強します。」などと潔く降参して次の質問に取り組みましょう。米国は加点主義だが、日本は減点主義が多い。幸い技術士試験の口頭試験は加点方式だ。ホームランではなく、ヒット狙いがお勧めだ。


(出典:仕事辞めたいの?

3)試験官との論争は禁物

優秀な受験者ほど、自分の知見や意見に自信を持っていることが多い。試験官が理不尽なことを言うこともないとは言えない。そのような時に論争するのは厳禁だ。これは座談会ではないし、議論の場でもない。あなたは評価されている立場だ。「へりくだる」必要はないし、自分の意見を曲げる必要もないが試験官に対する攻撃は最低だ。そのような場合にも、「そのような見方があるのですね。勉強になりました。」とか、「この件は議論の余地がないと考えていましたが、そのような解決法もあると気づくことができました。ご指摘ありがとうございます。」など、要は相手の立場を理解し、試験官の意見を尊重する姿勢を崩さないことが肝要だ。

4)PREP

プレゼンテーションでは、SDS法やPREP法が有効だ。SDS法とはSummary、Details、Summary、つまり、まず結論を述べ、その詳細を説明し、最後にまた結論を述べる方法だ。またPREP法とはPoint、Reason、Example、Pointの4文字のイニシャルで、まず結論を述べ、その理由を述べ、その例を示し、最後に結論をもう一度述べる。人は、抽象的な一般論と具体的な各論を繰り返すと理解の幅が広がり、納得しやすい。これと真逆なのは、背景→条件→考慮事項→理由→(最後に)結論で、公務員が陥りやすいパターンだ。口頭試験では時間の制限がある。SDS法やPREP法でまず結論を述べたら、試験官の顔を見て、「理由を詳しく説明した方がいいですか?」「この内容で詳しく説明してよろしいでしょうか?」とか聞いてから次に進むのがお勧めだ。試験官によっては、最初の結論だけで「次の質問に移ります」と言ってくれることがある。その場合には最初の結論だけで回答になっているので、貴重な時間の節約以上に加点を繰り返せるという効果がある。


(出典:Kaizen Base

5)イメージとロジックで人は納得する

人は物事をイメージして、ロジックを理解できたときに納得する。これは人間の脳が左脳と右脳に分かれていることに起因する。これは、口頭試験の特に小論文(詳細業務)の説明のときに意識すべきだ。つまり、例えば「橋梁」の改善を説明するなら、どんな橋かを試験官にイメージしてもらうことが先決だ。幅員10mの橋なのか、100mの橋か、それとももっと巨大な橋なのか。どんな橋なのかのイメージがずれていたらこれは悲劇だ。何を説明しても質疑が食い違ってしまう。手振りをまじえなが試験官との間で同じイメージを共有できたら、次は冷静に端的にロジックを説明する。課題は3点です。目的はこれです。解決策は3つありますが、私はA案が最適と判断した。その理由は3つあります。このようにマジックナンバー3をうまく活用しながら説明すると、人は納得した気になるものです。


(出典:ロジックとパッションの狭間から

6)沈黙を恐れない

口頭試験で最悪なのは試験官の質問に対して回答できずに無言の時間が続くことだ。これは時間の無駄だけではなく、印象も悪くなるので最低の対応だ。分からなければ、「すいません。勉強不足です。また、勉強します。」等でなんとか切り抜けよう。口頭試験は加点主義なので、わからないことをわからないと回答しても何も減点されない。場合によっては潔ぎ良い態度として好感される可能性さえある。そのような受動的な沈黙は避ける必要があるが、能動的な沈黙(=間)を使えれば、プレゼンの上級者だ。つまり、試験官の質問に対して、先のPREPの最初のPを説明する。そのあと、わずか1秒弱の沈黙、つまり間をおく。そして、その1秒弱の試験官の反応を見極めて、詳細説明に続くのか、それとも、先に行ったように「続けてよろしいでしょうか?」と試験官とキャッチボールをするのか、その後のプレゼンを微妙に起動修正させる。大切なことは話すことではなく、理解してもらうことだ。そのためには、間をおくことがとても有効だ。また、ヨッヘン・バイヤーが書いた『プレゼンのパワーを最大限にする50のジェスチャー』には、プレゼンのテクニックが満載だ。例えば、下の図のように表情を使い分けたり、手のひらを見せたり、プレゼンと口頭試験は同じではないが、余裕があれば一度してみるのも一考だ。

(出典:LifeHacker

まとめ

口頭試験の目的は合格することだ。そのためには、不合格の1割に入らないという戦略でも、合格者の5割、つまり平均的な合格者の戦略でもいいと思う。しかし、本当に合格して、技術士として活躍したいと考えるのであれば、合格の上位者を目指して欲しい。技術士試験に合格するのはゴールではなく、スタートだ。技術士として活躍するには、物を書いたり、講演で話をしたり、経営者の相談に乗ったりすることがある。そのようなことに対応できる能力を有するのかどうかを試されているのが試験だが、同時にそのような能力を伸ばすチャンスでもある。単に合格するのではなく、上位者での合格を是非目指して欲しい。サッカーに例えて言えば、1点差で勝利するのではなく、2点差で勝利を確実にするのではなく、3点差をつけて、圧倒的な勝利を目指して欲しいと思います。そうすることで、相手に1点を取られても、2点を取られても、勝利=合格できると確信出来る。最後の一踏ん張りです。
一緒に頑張ろう!

以上

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