労働安全衛生法関連:世界と日本の重機の起源や重機の将来を考える。

はじめに

労働安全衛生法の概要については先に投稿した。重機は一般的に理解される言葉だろうか。Wikiを調べると「重機関銃の略称」、「重工業に用いる機械」、「建設機械の総称」の3つが併記されている。ここで深掘りしたいのは最後の建設機械の総称の意味の重機だ。建機とか重機という。英語のWikiでは「Heavy Equipment」となる。なんてことはない。重機は英語をそのまま直訳したものだった。重機は建設作業を行うために特別に設計された大型車両ということになる

エジプト時代の重機

エジプトの建設には泥レンガが使われた。この泥レンガはPDFで有名なadobeと同じスペルだが、発音はアドービだ。砂と砂質粘土とわら、有機素材で作られる天然素材だ。下の図はそんな風景を示したもので、紀元前1550年から1292年の壁画だ。泥レンガは熱を吸収して、ゆっくりと放射するので、建築物の内部は涼しく保たれる。日本は暑いが多湿なので普及しなかった。エジプト時代の巨大な建造物であるピラミッドなどもより大規模なブロックで積み立ててて建造したという説もある。

出典:History of construction – Wikipedia

ローマ時代の重機

下の写真は、ローマ時代の重機を再建したものだ。ローマの遺跡に関する情報はよく保存されている。滑車の技術などを活用している。クレーンのような外見だ。

出典:History of construction – Wikipedia

日本の神社の建造

日本の古くからの建物物の代表はやはり神社だろう。今年の1月には伊勢神宮を参拝した。特に、20年ごとに正殿を造り替える遷宮の仕組みに感動した。最初の遷宮は、飛鳥時代の690年(持統天皇4年)だ。2013年(平成25年)の第62回式年遷宮まで続いているのは素晴らしい。いわゆる宮大工が建造のノウハウを継承している。しかも、素晴らしいのは、古い正殿の柱などの部材は廃棄するのではなく聖材として全国の神社に配布され、補修等に活用される点だ。これは究極のリサイクルではないか。現在の家屋をリフォームするときの廃材はゴミとして処分されるのは悲しいと感じる。

日本の重機

古代から馬や牛などの動物や、道具、人力を使っていたが、18世紀頃になると蒸気機関で動く鉱山用の揚水ポンプが発明された。日本に輸入されたのは明治3年という。明治時代には建設機械を含め欧米の土木技術を取り入れ、急速に発展した。大正時代には労働力不足から機械化が更に進展した。面白いのは、昭和初期の大恐慌が起きると、雇用対策として機械化が禁止され、建設機械化が後退した。しかし、朝鮮や満州では機械を使用した建設が続けられた。終戦後は復興に向けて建設機械が使用され、国内の建設会社も建設機械を積極的に活用するようになった。

機械化とAI化

日本の機械化の歴史を振り返ると、同じようなことがAIでも起きそうに思うのは妄想だろうか。AIの技術が進化し、人手不足に対応するためAI技術は積極的に活用された。しかし、xx年に不況になると雇用対策としてAIの利用が禁止された。しかし、サイバー犯罪の世界ではAIは活用され、yy年になるとAI技術は積極的に社会インフラとして活用されるようになった。機械化もAI活用も二転三転しながら活用されるようになるのだろうか。。。

現在の重機

日本の重機は多様だ。どんどん新しい重機が導入されるが、同時に労働災害が発生する。そして、これに対応するために、規制を強化する。そんなサイクルがある。下の写真で示す鉄骨切断機、コンクリート圧砕機、鉄骨切断機などは労働安全衛生法上の車両系建設機械の解体用機械として規制の対象外だったが、2013年(平成25年)7月1日から、規制の対象となった。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei52/)

重機のトラブル

例えば、前項のように新たに規制の対象となった重機の2011年(平成23年)の労働災害の発生状況だ。休業が4日間以上の災害がもっとも多かったのは解体用掴み機の100人だ。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei52/)

労働安全衛生法の規制追加

2013年7月からは、解体用機械に対して、次のような規制が追加されている。ここで法とは、労働安全衛生法のことだ。
(1) 機械等貸与者(リース業者)は、貸し出すに際しあらかじめ、点検、整備を実施(法33条)
(2) 厚生労働大臣が定める構造規格を具備しないと、譲渡、貸与等を禁止(法42条)
(3) 定期自主検査(1年以内、1月以内ごと)を実施(法45条第1項)
(4) 1年以内ごとに行う定期自主検査は一定の資格者が実施(特定自主検査、法第45条第2項)
(5) 3トン以上の機体重量の機械の運転の業務は、技能講習の修了者以外は禁止(法61条)
(6) 3トン未満の機体重量の機械の運転の業務に就かせるときは特別の教育を実施(法59条第3項)
(7) その他使用上の規制の履行(安衛則第2編第2章第1節)

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei52/)

労働安全衛生法の改正のポイント

どのように規制を強化したのかといえば、下の図にあるように次の3点だ。つまり、まず岩石等の落下による危険を防止するためのヘッドガードを備えること。転倒時の保護構造やシートベルトの着用。そして、フロントガードや前面ガラスなどで運転室を保護し、そのような運転室のない解体用機械の使用を禁止した。

出典:厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei52/)

労働安全衛生規則

重機の種類

重機の安全を守るには定期検査が有効だ。このため労働安全衛生法では、車両系荷役運搬機械、高所作業車そして車両系建設機械は全て定期自主検査を義務づけている。

出典:建設荷役車両安全技術協会(特定自主検査制度について)

まとめ

重機を操作したこともない自分が、重機を操作して現場で仕事をする人たちに安全研修を行う。果たして説得力のある研修ができるのだろうか。ただ、受講生の多くは深い知識と様々な経験を有するので、そういう部分は受講生の討議で引き出し、自分は全体を俯瞰しながら、研修を良い方向に誘導する。そんなことならできるだろう。

以上

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