感染症病床の強化が必要なはずだが、厚生労働省の病床削減指示に基づいて病床のある病院が減少。これで良いのか。

はじめに

前回、朝生で感染者が急増しているのは確かに危機的状況だが、一方で死者数が平日平均10名程度まで減少していることも、メディアは報道すべきという議論があったことを投稿した。また、その時に、感染症病床が減少していると指摘があり、今後増加を検討するといった発言があった。今から検討を開始するのかと憤慨している人がいた。本当に病床が減少しているのかと調べてみたら、確かに病床が減少していた。感染症の病床が不足する中で感染症の病床が増加していない。なぜなのだろう。医療の逼迫を起こして、緊急事態宣言を出させて、日本の経済をストップさせようと誰かが考えているはずはなく、そこにはきっと正当な何らかの理由があるはずだと思った。原因と対策はまだまだ深掘りが必要だけど、病院や診療所がコロナ治療に対応するほど苦境に陥るリスクを抱えている。今後は、コロナ治療に対応するほど十分な報酬を受ける仕組みにするなどインセンティブを高めることが政策として実施すべきことだと感じた。

病院・診療所の状況

人口1,000人当たりの病床数の国際比較

日本の医療政策は病床の充実だった。2016年時点では日本では人口1000人あたり13.1床が確保されている。これは2位の韓国の12.0床や3位のドイツの8.1床を抑えてダントツに多い。病床が多いことはそれだけ患者が容易に医療を受けることができる。これは良いことではないのか。ただ、医療政策の世界では、病床が多いと医療費が増えるという考え方がある。これは医師需要誘発仮説と呼ばれるものだ。詳しくは後述するが、医師の判断で医療の需要が作り出されるという考え方だ。

(出典:ニッセイ基礎研究所)

医療施設動態調査(令和3年5月末時点)

2021年(令和3年)5月時点では、病床数は約160万床ある。確かに、日本の人口を1.2億人とすると1000人あたり13.3床となる。しかし、現在問題となっている感染症の病床はわずか1,886床だ。全体のわずか0.119%だ。これほど少なければ、新型コロナ患者が急増したらもたないだろう。

(出典:厚生労働省医療施設動態調査)

増加する病院・診療所と減少する病床有病院・診療所

新型コロナに対して政府は4度も緊急事態を宣言し、国民に自粛を繰り返し、繰り返し要請している。飲食店にも酒を出さないように、営業時間を短縮するように要請している。当然、病院側も感染症のための病床を増やしていると思ったが、令和2年4月と令和3年4月を比べると、病院も一般診療所も増加しているが、療養病床を有する病院は3,609から3,541に68も減少している。無償の診療所や地域医療支援病院は増加しているが、療養病床を有する病院がなぜ減少しているのか。

減少し続ける病院病床数

療養病床を有する病院や診療所が減少していても、病床が増加していれば問題はない。しかし、病院病床数は令和元年5月の153.5万床から令和3年5月の150.5万床に削減されていた。ただし、流石に感染症病床数を削減するのはまずいと判断したのだろうか、令和3年4月は令和2年4月の1,886床のままだった。これは、コロナ禍が爆発する中でなぜもっと増やせられなかったのかと叱責されるべきなのか、病院全体では病床が削減する中で感染症病床を減らさなかったが称賛されるべきなのか。あなたはどう思いますか?

(出典:厚生労働省医療施設動態調査)

なぜ感染症病床が増加しないのか

それではなぜ医療が逼迫しているとして緊急事態を何度も宣言しているのに、そのボトルネックの感染症病床を増えないのだろうか。調べるうちに3つの理由が見えてきた。

理由1:感染症病床の低い病床利用率

一般の病床では利用率は80%程度だ。しかし、平成30年の実績では感染症病床の利用実績は3.6%だ。ほぼ96.4%は空いているということだ。病院から見ると赤字を垂れ流している要因として苦慮されているのだろうと想像はつく。

(出典:シニアライフ研究所

理由2:厚生労働省が病床削減のための財政支援

厚生労働省が病院の病床を削減することを計画していたとは聞いていた。下の図は、令和2年10月9日の第1回医療政策研修会資料だ。冒頭に「今般の新型コロナウイルス感染症への対応により顕在化した地域医療医の課題への対応を含め」と書かれているが、感染症の文字は5ページの中でこの冒頭に出ただけだ。記載されていることは、病院が病床の削減に協力したら財政支援をします。病院を統合したら廃止病床1床あたり、病床稼働率に応じた額を関係病院に公布とある。つまり、感染症病床を統合して、稼働率が上がったらお金がいっぱい貰える事になる。さらには、病院を廃止して借金が残っていたらその利子も一定の範囲で病院に交付とある。つまりコロナ禍の対応として、病床を削減しろと全国の病院にお金で誘導しているので、病院の病床数はどんどん減少している。これは厚生労働省の計画通りということだ。医療崩壊への対処という考え方はどこにあるのだろうか。


(出典:厚生労働省

理由3:医師誘発需要

厚生労働省がこのように病床を減らす理由は、病床を減らさないと医療費が削減できないという国家的な事情がある。下のグラフは年度ごとのMRIの撮影回数とそのための医療費だ。2002年にMRIの診療報酬点数が30%カットされた。MRIを受信する患者から見ると自己負担が下がったのであれば需要は増大するはずだけど、実際の需要は減少した。これはなぜかといえば、MRIでは儲からないので、医師が患者にMRIを勧めなくなり、その結果撮影回数が減少した。これは残念だけど、日本でも医師誘発需要は存在するということになる。


(出典:医療政策学x医療経済学)

感染症病床を増やせられないか

対策1:スウェーデン方式

スウェーデンでは感染症の増大に合わせて一般病床をコロナ用の病床に転換し、コロナ禍が沈静化したら、すぐにまた一般病床に戻すという。なので、コロナ感染者が増大した時には感染症の病床を増やし、コロナ感染者が減少したら感染症の病床を減らす。非常に理にかなった運用だ。また、日本医師会の中川俊男会長は、「民間病院は公的病院に比べてICUの設置数が少なく、専門の医療従事者がいない」から新型コロナ向けの病床を大幅に増やせないとしている。しかし、なんとしても感染症病床を増やそうという意思がそこにあるのかどうかが重要だ。実際は逆に減らそうと言う施策展開中なのではないか?

対策2:診療報酬の改定

病床数を減少したら、「削減病床1床あたり、病床稼働率に応じた額を交付」という施策にはびっくりした。もし、このような施策が有効だとしたら、感染症用の病床が増えるわけはないし、病床が減少している理由もわかる。また、病床の減少を強調するようなグラフを厚生労働省の施設動態調査で堂々と掲載している理由も理解できる。逆に言えば、感染症用の病床を増やしたら、それに伴う金額以上を交付するようにすれば、一気に増えるのではないか。医は仁術か算術かは別にして、医療の本来の目的と経済性合理性が合致すれば多くの病院や診療所は感染症への対応を強化してくれるだろう。

対策3:5類に変更して一般診療所を活用する

新型コロナは、感染症指定の分類の2類にあることが問題ではないかと以前のブログで投稿したが、藤井聡さんと木村盛代共著の「ゼロコロナという病」を読んでいたらが、2類ではなく実質1類としての運用に変更されていると書かれていて、びっくり。 5類にするのではなく、逆に1類にしている。そんな厳しい類に指定したら一般診療所ではとても対応できない。逆に5類に変更することができれば、一般の風邪と同様に無症状や軽症の患者の対応は一般診療所で行い、中症になりそうならすぐに病院にバトンタッチする。重症になりそうならさらに専門の病院にバトンタッチする。そんな体制を制度面と経済面で推進出来なものか。

(出典:dspace)

まとめ

自分自身は医療の専門家ではないので、責任あることは言えない。しかし、病院病床数がこの1年で減少していること。それを厚生労働省は予算を使って推進している。医療費の削減は確かに国家的な課題ではあるが、それは中長期の課題であって、コロナ禍ではそれよりも医療崩壊を回避するための措置が求められているのではないのか。医療崩壊の危険があると国民に対しては自粛を要請しながら、医療崩壊を促進するような病床削減を推進することは許されることではないと思う。全体で160万の病床のうち感染症用の病床数はわずか0.1%程だ。スウェーデンのように需要に合わせて病床数を調整することがなぜできないのか。政府は少なくともこれを経済面で後押しする施策を推進すべきだ。多くの病院や診療所は必死に治療をしてくれている。コロナ患者に対応するほど収入が減少する状況ではなく、報われる状況にするのが政府や官僚に求められているのではないのだろうか。少なくとも改善点は多いと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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