欧米と日本の中央銀行の設立の経緯を振り返り、今後のデジタルマネーの可能性を考える。

はじめに

江戸時代には、日本には銀行はなく、両替商だった。NHKの朝ドラ「あさが来た」で波瑠が演じた嫁ぎ先は1625年(寛永2年)創業の両替屋である加島屋だった。江戸時代は大阪の堺が栄えた。なぜかと言えば、例えば山形で生産した紅花は一旦堺に送られ、そこからそれを加工したものを全国に配送される。物流の中心だったのだ。そんな物流を支えたのが大阪の両替商だ。1662年(寛文2年)には、江戸幕府が小判を天王寺屋五兵衛などの両替屋から購入した。1970年には、鴻池、平野屋などとともに加島屋など10名となった。両替屋は、手形取引の統制や金銭相場の監督・報告、本両替仲間の取締り、幕府御用金調達などの役割を演じた。今の日銀のような存在だ。そこで、日本銀行を含む中央銀行の起源や中央銀行が検討する中央銀行デジタル通貨(CBDC)の可能性などについて考えてみた。


(出典:山寺紅花)

世界最古の銀行と世界最古の中央銀行

世界最古の銀行はどこなのだろう。じぶん銀行のホームページを見ると、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(Banca Monte dei Paschi di Siena、MPS)で、1472年にイタリア中部のシエナ市で誕生したという(出典:じぶん銀行)。また、世界最古の中央銀行は1668年に設立したスウェーデンのリスクバンクという。英国のイングランド銀行の設立はその6年後の1694年だが、当初は中央銀行ではなかった。19世紀の初頭に英国で金融恐慌が発生し、その対策としてイングランド銀行のみが紙幣を発行するという体制になった。これが実質的な中央銀行の始まりだ。


(出典:Sankei.biz)

米国の中央銀行(FRB)の設立は1913年

米国では1776年の建国以来複数の銀行が設立されたが、1837年に大恐慌が発生し、さらに1873年から1896年の大不況に対抗するために主にユダヤ系の資本家の後ろ盾をベースにして、1913年にFRBの体制が確立された。銀行の歴史は不況や大恐慌との戦いの歴史でもあった。FRBが設立されるまでは、米国の大統領が発行する政府紙幣が使われていた。経済社会の中枢の金融の役割は1913年から政府ではなく、中央銀行が担うようになった。

(出典:マネー研究所)

日本の中央銀行(日本銀行)の設立は1882年

日本では、1867年に大政奉還があり、1873年に日本初の第一銀行(現みずほ銀行)が設立された。そのあと、1882年に中央銀行としての日本銀行が設立される。日本銀行の株主は非公開だが日本国政府の保有は55%と過半数を占めている。また、資本金は一億円だ。これは日本銀行法第8条に明記されている。元々は、明治15年6月に制定された日本銀行条例を適時改正し、現在は日本銀行法として平成10年4月1日に施行されている。あまり深掘りしない方が良いのだが、ミステリーなのは残る45%の株主構成だ。第二次世界大戦の終戦時には天皇家が約20%の株式を保有していた(出典)という説があるが、現在も保有しているのかどうかは公開されていないので不明だ。

【日本銀行法第8条】
日本銀行の資本金は、政府及び政府以外の者からの出資による一億円とする。
2 前項の日本銀行の資本金のうち政府からの出資の額は、五千五百万円を下回ってはならない。

宗教と銀行

世界の金融業界はユダヤ系資本が牛耳っているとよく言われる。なぜなのだろう。宗教と金融が結びつかない。調べると、ユダヤ教では金利を取って金を貸すことを禁じていたという。そして、ユダヤ教から派生したキリスト教やイスラム教でも同じようにこれを禁じた。しかし、ユダヤ教では、ユダヤ人以外に金を貸すときには金利を取っても良いという。このためにユダヤ人のみが金貸しを行った。「なぜ世界のお金持ちの35%はユダヤ人なのか?」の著者である滝内恭敬氏は、聖書が成功のためのバイブルだという。

(出典:@Press)

仮想通貨(暗号資産)と電子マネーの違い

ここまで金融の基本の基本をレビューした。仮想通貨(暗号資産)にも言及したい。そもそも仮想通貨と電子マネーは何が違うのか?という質問がある。一般には、仮想通貨は、国が発行する通貨とは別の独立した通貨だが、電子マネーは国が発行する通貨を電子的な手段で決済するものと説明される。しかし、最近は、銀行や中央銀行も仮想通貨やその仕組みのエンジンであるブロックチェーンの活用を検討している。問題は消費電力だ。特に、オープン型ではマイニングのための消費電力が大きい。ある調査ではビットコインの電力消費はノルウェイの電力消費よりも高いという。テスラがこれを懸念して、ビットコインの価値が暴落したことも記憶に新しい。ブロックチェーンでは、オープン型だけではなく、コンソーシアム型やクローズ型もある。今後は電力消費の少ないエコなブロックチェーンが見直されるのではないだろうか。

(出典:Gigazine)

中央銀行が仮想通貨を発行する可能性

欧州中央銀行は2012年に仮想通貨を特殊な仮想空間で取り扱う電子マネーと呼び、2014年には欧州銀行監督局は仮想通貨を中央銀行や政府が発行したものではなく、電子的な取引用通貨と定義した。つまり、下の図(左)のCryptoCurrencyが仮想通貨だった。しかし、各国の中央銀行間の決済を行うために1930年に設立した国際決済銀行(BIS)によると、下の図(右)のように、中央銀行が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)の定義を示している。今後は、このCBDCが各国の中央銀行と連携するのか、Facebookが企画したLibra(現在はdiem)と連携するのか、中国が推進するデジタル人民元とは連携するのかなどには引き続き注目していきたい。


(出典:BIS

まとめ

前回は日本における金融概況を投稿したが、今回は中央銀行の設立や今後の活動に焦点を移した。日本の最初の銀行は1873年(明治6年)に渋沢栄一が設立した国立第一銀行(現みずほ銀国)だ。日本銀行は、日本銀行条例に基づいて1882年(明治15年)10月10日より業務開始した。国立銀行条例の営業免許が1896年(明治29年)に終了し、これに伴い国立第一銀行は一般銀行の第一銀行として再出発する。明治の前半の激動の時代は、銀行の激動の時代でもあった。同様のことは米国でも発生した。現在は、世界の金融組織は中央銀行が連携して機能している。その中央銀行連合がデジタル時代に狙うのがCBDCだ。このCBDCが各国の中央銀行と連携して新時代を開くのかどうかが当面の注目課題だろう。Facebookが創設したLibraは事実上消滅し、ディエム(Diem)として各国の中央銀行と連携することを模索している。中国は、デジタル人民元を世界の基軸通貨にしようと戦略を練っている。すでにデジタル人民元の実験を始めていて、取引回数は7,075万回、取引金額は345億元(約6千億円)という(出典:ZuuOnline)。

以上

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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