5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人、大事なことは勤務時間を短縮して、やる気を高めること。

はじめに

アマゾンで購入した図書の数を数えると2021年の12月7日までで42冊、金額にして5.3万円ほどだった。全ての図書を全て完読したわけでもないけど、興味ある分野の図書はまずは東大の図書館で検索して、あれば借りて読む。非常に良い本だと思ったら購入する。でも、購入すると、おすすめの本などがあり、我慢できずについオーダーする。そんなこんなで42冊になった。図書館で読んだ本を入れると100冊はゆうに超えるだろう。でも、本当は読むだけではなく、読んだ感想もアウトプットしておかないと何をその本から会得したのかが後になってわからなくなってします。もちろん、全ての図書に対する感想を書き留めることは難しいけど、今回は、会社のライブラリーで借りた方で面白いと思ったので、まとめてみた。

5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人

これは刺激的なタイトルだ。帯にも書かれているが、仕事の生産性は日本の1.5倍で、夏休みは2週間以上で、有給消化率100%だという。ここまでは知っている方人も多いかもしれない。個人的に凄いと感じたことを後述したい。

熊谷徹(くまがい とおる)

筆者の熊谷さんは、大学を卒業後モーレツ社員としてNHKの記者を8年間働き、1990年から27年間はドイツでフリージャーナリストとして働いている。ドイツでは厳しい残業規制があるが、フリージャーナリストは対象外なので、実はこの熊谷さん自身はドイツでも猛烈に働いているのではないかと穿ってしまうが、それは本論ではない。

サバティカル

恥ずかしながら初めて聞いた。サバティカル(Sabbatical)とは、使途に制限がない職務を離れた長期休暇のことだ。1か月から1年間の休暇を取ることだ。語源は、旧約聖書の安息日(ラテン語 でsabbaticus)だ。 大学の教員が伝統的に採用した制度だが、牧師、芸術家、スポーツ選手などがしばしば充電期間として使う。いきものがかりが、2017年1月にいきなり「放牧宣言」をしたのには驚いたが、これもサバティカルかもしれない。ドイツの企業の約5%はサバティカルを導入している。その制度も様々だ。サバティカルの期間は、無給のところもあれば、1年間25%の減給を受ければ3ヶ月のサバティカルを取得できるところもあるという。ドイツではコンサルティング企業で採用が広がっているようだ。昨年は3週間有給休暇を取得して、バルト三国を旅行したが、今度は3ヶ月の休暇を取って海外を旅したいなあと妄想が始まる(笑)。

罰金は管理職のポケットマネー

ドイツではほぼ全ての労働者は1日の勤務時間の上限が10時間でかつ平均労働時間が8時間を超えてはいけないという規則がある。規則を守ることが大好きなドイツ人の労働者も管理者も会社もこれを遵守する。この平均で8時間というのも凄い。つまり、今日10時間勤務したら別の日は6時間勤務にするということだ。これはいいなあ。しかも、この規則を守らないとどうなるか。管理職は労働者を管理できないダメ管理者として評価を落とすことになる。それだけではなく、最高1万5千ユーロ(約180万円)の罰金を管理者が管理者のポケットマネーで支払うことを求められる。このため、管理者は文字通り必死になってこの規則を守ろうとする。それはそうだろう。管理者の心理をよく理解して制定された規則だと感心する。

サービス精神は期待できない

まだ20台の頃にヨーロッパを旅行したことがある。ドイツの地ビールを飲もうと小料理屋のような小さな店に入って注文すると、グラスには線が引いてあって、ビールの泡がピッタリその線と重なったときに「bitte」と出される。「danke」といって飲む。これは最高に美味しい。しかし、せっかくドイツにきたので、ソーセージでも食べたいので何かないかと聞くと、「Nein(ない)」という。なぜと聞くと、ここは飲む店だ。食べるならレストランに行けという。なるほど。そうかと感心した。日本でも、東京に進出したばかりの「京都の餃子の王将」に入ると、餃子のみだった。ラーメンを食べたければラーメン屋に行け。ここは餃子屋だ。ドイツ人も餃子の王将もプライドを持って仕事をしていると感心した。

日本人のような過剰サービスは期待できない

お客様は神様ですというのは、歌手の三波春夫のセリフだ。日本人はこの言葉に共感する人も多いだろう。でも、ドイツではそのような感覚はない。日本人が得意な「忖度」も苦手だという。良いサービスを受けたければ対価(チップ)を払うのが当然という感覚だ。日本人もドイツ人も勤勉だが、このサービスに対する考え方は両極端だ。どちらが良いということはないだろう。しかし、お互いに良いところは取り入れたいところだ。

裁量労働制の課題

以前、裁量労働制についてブログにまとめた。その時の結論が下の図だ。つまり、タテ軸にやる気(やりがい)、横軸に労働時間をプロットすると、月100時間を境にして、やる気が急激に増大する。4つのゾーンに分割すると、やる気もなく、労働時間も少ないのがダラダラゾーンだ。そして、やる気が高く、労働時間が長いのが猛烈ゾーンだ。やる気は高いが、労働時間は短いゾーンをハイカルチャーゾーンと呼ぶ。大好きなスタバはこの代表格だ。そして、問題なのは、やりがいもなく、社会的な評価も低く、賃金も低くてやる気が低いにも関わらず長時間の労働を強いるゾーンだ。さらにはサービス残業で労働の対価も払わないとなるとまさにブラックゾーンだろう。

出典:裁量労働制を考える

労働時間を下げるよりも、やりがいを高めるべき

これは自論だが、労働時間が長いから悪いのではない。やる気ややりがいを持てないことが問題だ。これは企業側の問題だけでなく、働く側の問題でもあるが、このやる気をいかに高めて、付加価値の高い業務を行うようにするのか。この点を重点的に検討して、追求すべきではないのかと思う。その上で、労働時間を短くするのか、長時間働くのかは個人の自由だろうと思う。

猛烈ゾーン

個人経営者や企業の幹部などはやり甲斐もあるし、やった分だけ対価も得られる。年間数千万円とか数億の収入を得られるならもう必死で働くと思う。そして、疲れたら、サバティカル休暇でリフレッシュするのもいいかもしれない。問題は体力の限界と、健康と家族だろう。ワークライフバランスを心がけられるかどうかはこのゾーンの人たちにとっては課題だろう。

ハイカルチャーゾーン

やる気もやり甲斐もあるが、短時間で仕事を終える。勤務時間は仕事に集中して、成果を出したら、さっと帰る。現在の社会が求めているのは、コチラだろう。でも、日本人は勤勉だ。会社から早く帰って趣味を楽しむ人もいるけど、スタバとかで必死に勉強している人もいる。資格試験にトライしているのだろうか。資格試験に合格しても人生が劇的に変わることは少なく、結局資格取得ビジネスに踊らされているだけということもある。自分自身その毛があるが、まあ人それぞれだ。いずれにせよそれぞれの夢を是非実現して欲しいとは思う。

ドストエフスキーの地下室の手記

自分自身はまだ読んでいないが、ドストエフスキーは「地下室の手記」のなかで、「重犯罪人に自分の罪を思い知らせるなら、土を掘り移動させてそれをまた元に戻す。ということをさせれば良いのだ。しかし、それは全く拷問と同じことになって、精神に異常をきたすだろう。」と書いているという。やる気が低い事に長時間の労働を強いることの究極はこのような行為だろう。そして、彼の指摘のように精神的に異常をきたす悲劇が日本では続いていると言えるのではないか。

まとめ

以前「熱意x能力x考え方の最大化の鍵はやる気アップだ。」と投稿した。残念ながら一般的には勤務時間とやる気は正の相関関係がある。典型的なのは経営者や研究者だ。持てる時間をフルに使って創造性と独創性を発揮している。一方、単調な作業ではやる気も出ない。問題なのは、単調でやる気も出ない辛い仕事を長時間強いることだ。そして、理想はその逆で、短い労働時間で高い成果を発揮することだ。働き方改革とは、残業時間のカットのみではない。そうではなく、やる気を高めて、集中率を高めて、より短い時間で一気に成果を出すことだ。しかし、これは実はなかなか難しい。一般的には、成果を出そうとすると長時間頑張って、頑張って、粘って、粘って実現する。それが日本人の美徳であり、特徴だった。しかし、それも見直すタイミングなのかもしれない。17時からの時間を有効に活用できるようにすることで、仕事も17時までに終わるように頑張ろうと思えるのでないだろうか。まずは、17時からの予定を作ってみてはどうだろう。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

広告
最新情報をチェックしよう!