脳型情報処理機械論#12-1:神経美学。美の認知神経科学の予習

はじめに

國吉教授の脳型情報処理機械論も残すところあと2回だ。第12回目の講義はクリスマスイブである12月24日(金)だ。しかも、今回はこれまでと少し系統が違うというか、神経美学についての講義だ。もう楽しみしかない。
その1:美の認知神経科学の予習(⇨ 今回)
その2:参考図書のざっと読み(次回
その3:美の認知神経科学の概要(次々回

石津智大准教授

今回のゲスト講師は関西大学文学部総合人文学科心理学専修/大学院心理学研究科の石津智大(Tomohiro Ishizu)准教授だ。京都大学オープンイノベーション機構の特任准教授やThe Dana Alliance for Brain Initiativesでもある。2009年9月に慶應義塾大学大学院社会学研究科心理学専攻後期博士課程を修了された博士(心理学)だ。下の写真(左)は現在の写真で、写真(右)はロンドン大学ユニーバーシティカレッジのリサーチフェローの時の写真だ。2009年から2016年にロンドン大学(UCL)、2016年から2018年にウイーン大学、そして2018年から2020年には再びUCLに赴任されている。どのタイミングのロンドンかは不明だけど、楽しく充実した日々が表情に表れている。

(出典:リサーチマップ123deta.com

機能的ニューロイメージング(Functional neuroimaging)

石津准教授の論文をサーチしていると幾つかのキーワードが浮かび上がってきた。その一つが機能的ニューロイメージングだった。機能的ニューロイメージングとは、特定の実験変数に関連した脳内の神経活動を非侵襲的に可視化するために用いられる手法のことである。過去15年の間に、美的活動や芸術鑑賞の神経生物学に関する新しい知見を提供し始めているという。下の図は、機能的ニューロイメージングについてまとめた図書だ。臨床医を念頭に作られていて、早期診断、神経学的判断、癌治療への反応性評価など、機能的神経放射線学の臨床的応用と活用を実証している。米国Functional Neuroradiology学会の創立会長が編集し、脳の機能とメカニズムを描いた高品質のカラー画像を紹介している。

(出典:Functional Neuroimaging

神経美学(neuroaesthetics)

石津准教授は、ロンドン大学のシニアリサーチフェローとして活動する中で、次のように解説されていた。神経美学に対する想いに溢れていると感じる。

芸術ときくとまったく興味のない人もいるかもしれない。しかし、しばしば芸術と同じ文脈で取り上げられる美はどうだろう。美はどこにでも立ち現れる。海岸でのサンセット、お気に入りの絵画、好きな人の顔。見た目だけの話ではない。心根の綺麗さ、友情の美しさ。善行や正義を美徳としない文化はないだろう。かように多様な対象を貫く「美」という感覚。これがわたしたちにどんな意味をもっているのか、脳機能画像法を利用して研究している分野がある。それが神経美学(neuroaesthetics)だ。美学的体験の脳機能や芸術的創造性に関係する脳の仕組みを研究する認知神経科学の一分野である。誕生から10余年の比較的新しい分野だが、美学的体験や芸術についての認知神経科学・心理学的アプローチは各国の研究機関でも重視されている。現在,欧州と北米を中心にUCL、マックスプランク研究所、ニューヨーク大学、UCバークレーなど主要大学・研究機関において研究講座が開設されている。2018年からはロンドン大学ゴールドスミスカレッジ心理学部で正式に当分野を修めることのできる修士課程コースも開講された。今後さらなる展開が期待される。知覚・認知と美学的体験との関係を科学の対象として研究した最初の試みは、19世紀末頃のフェヒナーによる実験美学に端を発する。複雑な感性的体験を一つの変数で説明し、共通の要素をみつけることで多様な感性的体験を定式化しようと試みたのだ。しかしフェヒナーにとってより重要な目的は,刺激への反応の背後にあるであろう神経活動との関係性を説明することであり、それは心理物理学と実験美学のひとつの目標でもあった。非侵襲の脳機能画像法と認知神経科学の発展により、現在その実証性の理念は神経美学に引き継がれたといえる。ここで気をつけたい点は芸術と美学的体験との関係だ。美醜や崇高さなどの美学的体験は芸術作品だけでなく幅広い対象から受けうる。逆に芸術の鑑賞と創作に関係する体験・認知は美学的体験だけに限定されるものではない。双方は密接なつながりがあり重複する面も多いため区別する必要がある。ゆえに神経美学のカバーする領域は大まかに下位分類となる。美学的経験についての認知神経科学的・進化生物学的研究と芸術認知・創作についてのそれだ(出典)。

共感覚(synesthesia)

神経美学のアプローチには、記述的なものと実験的なものがある。記述的な神経美学とは、脳の特性を美的体験にマッピングすることを指す。例えば,フォービズム芸術の体験に色が重要であるならば,そのような芸術を見るときに色を処理する脳の領域が関与する可能性がある。実験的神経美学は、他の実験科学と同様に、定量的で統計的に検証されたデータを作成し、仮説を検証し、結果を予測し、再現または反証を求める。特定の脳領域と芸術活動の関連は神経美学の分野では非常に重要である。神経メカニズムを解明するための一般的なアプローチは、サヴァン症候群(savant syndrome)や何らかの外傷性障害などの神経障害を持つ個人、特に芸術家の研究である。神経症を調べていたら、共感覚(synesthesia)という単語が気になった。ここからどんどん脱線してしまうが、共感覚は、ある1つの刺激に対して、通常の感覚とは異なる種類の感覚も自動的に生じる知覚現象をいう。共感覚には多様なタイプがあり、これまでに150種類以上の共感覚が確認されている。共感覚を持つ人の割合については、昔は10万人に1人などと言われていたが、最新の研究では23人に1人というものもあるようだ。共感覚の一つには、人の容姿、性格、感情に色を感じるタイプの共感覚がある。これはオーラと同一なのか。

オーラ(aura)

スピリチュアルな信念によると、オーラや人間のエネルギーフィールドは、人体や任意の動物や物体を包むと言われる色の発散だ。スピリチュアルな代替医療では、人間のオーラは、クライアントの状態や健康を反映する隠された解剖学の一部とみなされ、しばしばチャクラ(chakras)と呼ばれる生命力の中心からなるとさえ理解されている。このような主張は科学的証拠によってサポートされていないため、疑似科学である。科学的に制御した実験下で検証しても、オーラを見る能力の存在は立証されていない。オーラという言葉はラテン語と古代ギリシャ語で、オーラは風、そよ風、息という意味だ。イギリス生まれの神智学協会の初期の指導者であるチャールズ・ウェブスター・レッドビーター(Charles Webster Leadbeater, 1854年2月から1934年3月)がチャクラなどの著書により、オーラの概念の一般化させた。

(出典:Aura)

神智学(theosophy)

神智学とは、神秘的直観や思弁、幻視、瞑想、啓示などを通じて、神とむすびついた神聖な知識の獲得や高度な認識に達しようとするものだ。神智学は、智と認識を重視するものだ。神あるいは超越者が叡智的性格をもち、宇宙や自然もこのような叡智からつくられ、人間の智も神の智に通ずる性格をもっており、人間は霊的認識により神を知り、神に近づくことができるという。神智学という用語は、古代ギリシア語で神を意味するテオスと叡智を意味するソフィアの合成語に由来している。

(出典:神智学

まとめ

石津准教授の紹介から機能的ニューロイメージングや神経美学までは論文を見ていて感じたキーワードだ。その後のオーラや共感覚、神智学は個人的な興味から調べたものだ。ただ、先にソマチットについて投稿したけど、体内に数京個も存在するのだとしたら、体外に滲み出ててもおかしくはないし、それぞれが感情に反応するとしたら、祖先の霊を担っているのも理解できなくはない気がする。話を戻して、今回は神経美学をより科学的に、仮説を設定し、実験し、検証した結果などの紹介があるのだと予想する。もう期待しかない。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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