ワイヤレスジャパン2021の初日に参加して感じたことと6つのキー技術の解説

はじめに

2021年6月2日から4日まで東京ビッグサイト青海展示棟Aホールでワイヤレスジャパン2021が開催されている。昨年度はコロナ禍で中止になったが、本年度は敢行された。初日の午前中のみだけど、会場に行って展示物を見て、基調講演等を聞いてきたので、簡単に報告する。また、5Gの重要な要素技術6つについて最後に解説する。

Wireless Japan 2021

東京ビッグサイトとあるので、臨海線の国際展示場で降りてビッグサイトに向かったけど、どうもおかしい。人がほとんどいない。よく聞くとここの会場ではなく、隣の東京テレポート駅から徒歩2分の青海展示館だった。その会場に行くと開場の10時少し前だった。入り口で体温をチェックして、あらかじめ登録した用紙を見せるとバーコードで読み取って、ホルダーを渡されてOK。入り口ではバーコードを読み取ってとスムーズなものだ。

主要な展示会者

会場では基調講演のコーナーと特別講演のコーナーと4つのセミナー会場のコーナーがあり、主要な企業ではNTTドコモ、OKI、ZETA、華為、KCCS、総務省などが単独出典だ。NECと富士通、日立物流と日立製作所などはコーナーをシェアして出典していた。通信事業者は1社のみの展示で、全体的にかつての元気はない。テーマはいずれも5Gやローカル5Gなどだった。

藤岡雅宣エリクソンジャパンCTOの特別講演

藤岡雅宣CTOの講演はわかりやすいのでいつも真っ先に拝聴している。今回もこれがあったので、頑張って出かけたぐらいだ。世界での5Gの状況などを概説したあと、5GのSA*1での進化や5G無線アクセスの特徴、さらに産業応用の事例、6Gへの要求条件などを交えて講演があった。やはりわかりやすい。特に5Gでは、どのようなユースケースを想定し、それにどのように対応するかが各キャリアの独自性を出せるところであり、差別化要素だ。講演ではスマート工場のユースケースや5Gによるロボット制御などの事例について説明があった。

NTT東日本のローカル5G x 地方創生へ取り組みの基調講演

初日はローカル5G*2もテーマの一つだ。NTT東日本は固定の電話やインターネットの事業が連想されるが、Wi-Fiの分野でも頑張っていて、LPWA*3やローカル5Gなどにも成長の機会を求めてアグレッシブに活動している。これまでのローカル5Gのトライアルの結果から得た教訓などについて講演があった。

メインは6月4日のキャリア登壇

NTTドコモ、NEC、KDDI、JTOWER、NICTなどの基調講演が6月4日にある。いずれも30分のインターバルがあるので、その時間で展示物を見て回れるように配慮されている。もし、5Gなどの情報通信に興味があり、時間を確保できる人は事前に登録して、会場に足を運んで欲しい。

まとめ

今回はできるだけ分かりやすいところの解説に努めたが、そうすると専門的な部分の記述が疎かになる。なかなか難しいところだ。少し専門的になるけど、技術解説もしておきたい。3Gでは800MHz、4Gでは2GHzなどをメインで使っていたが、5Gではあらたにサブ6帯(4.6GHz)やミリ波帯(28GHz)などを利用するため、エリアの作り方や品質の担保の仕方が難しいが、これを解決するのが、ビームフォーミング*4の技術や、C/U分離の技術*5、キャリアアグリゲーション*6の技術だ。ポイントだけ下の技術解説で説明しておきたい。5Gシェアリングは別に投稿済だけどこれも興味深い。

技術解説

*1 SAとNSA

5G(第五世代)にはNSA(Non Stand Alone)とSA(Stand Alone)の2方式がある。初期は、NSAであり、4G(第4世代)のプラットフォームに依存する方で5Gを活用する。そのあと、SAとなる。つまり5Gのコアネットの整備が進めば、5GのNR(New Radio、新しい電波)は5Gのコアを経由して疎通され、5Gで完結する。このため、NSAの世界で提供可能な機能・仕様とSAの世界で提供可能な機能・仕様は当然異なる。例えば、スライシングという技術も本格的に利用可能となるのはSAからだ。

(出典:GearBest)

*2 ローカル5G

ローカル5Gとは、通信事業者が提供する5Gの仕組みや技術を活用して、自営で構築するシステムだ。関東では、東京都、NTT東日本、NEC、富士通、ケーブルテレビ株式会社、ジュピターテレコム(J:COM)などが免許申請を受付開始した2019年12月に申請している(出典)。ローカル5Gでは4.5GHzや28GHz帯の周波数の利用を想定している。ただし、実際の運用開始に当たってはエリアのシミュレーション結果や干渉問題の有無や対策手法についての検討が必要だ。
(出典:EETIMES)

*3 LPWA

経営管理に活用できるIT技術」で解説したが、LPWA(Low Power Wide Area)とは電波伝送損失が比較的少ない900MHz帯を用いて低速だけど、低消費電力な通信を可能とする仕組みだ。大量のデータや高速のデータ通信、頻繁なデータ通信が必要がない場合には、このLPWAの有効な手法となる。構築費用も低廉なので、自衛システムに興味があれば、まずはLPWAで経験を積むという戦略もあるだろう。

*4 ビームフォーミング

5Gで用いるサブ6帯やミリ波は指向性と直線性が高く、伝送損失が大きい。このため、複数のアンテナ素子をメッシュ状に配列させて、その電波の位相を操作することで放射する電波の指向性を制御する技術が有効となる。これがビームフォーミングだ。相手の目を見て話をすることで心が通雨ものだが、5Gのビームフォーミングではまさに相手につながるようにビームを調整する。

(出典:総務省)

*5 C/U分離

個人的には、このC/U分離の技術が5Gのキーテクノロジーの一つだと考えている。これはどういうことかというと、最寄り局と通信すると高速通信が可能だけど品質が安定しない懸念がある。このため、例えば800MHzのマクロ局が制御信号(C-Plane)を担当し、最寄り局がユーザ信号(U-Plane)を担当することにより、移動機の制御は安定的に行い、常に最適な最寄り局と高速・大容量の通信を可能とすることができる。

(出典:NTTドコモの図表をベースに筆者が加筆)

*6 キャリアアグリゲーション(CA)

キャリア・アグリゲーション(CA)とは、通信キャリアを束ねる技術だ。初期のCAは同じ800MHz帯の中の複数のキャリアを束ねたり、同じ2GHzの中の複数のキャリアを束ねる技術だったが、現在では複数の周波数のキャリアを束ねることができる。さらに、5GになるとWi-Fiのキャリアと5Gのキャリアを束ねることも検討されている。これはユーザへのインパクトが大きいだろう。現状、Wi-Fiの不満は、使えないのにWi-Fiを掴もうとして通信に支障が出たり、Wi-Fiが使えるのに使わなかったりする。しかし、Wi-Fiと5GのCAが可能になれば、利用者はWi-Fiの存在や5Gの存在すら意識する必要がないかもしれない。

以上

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