ローカル5Gの課題と戦略、住友商事はホワイトナイトになりえるのだろうか。

5G

はじめに

先週のWirelessJapan2021については、6月4日に投稿した。携帯電話事業者は5Gのエリア整備・強化に努めている一方で、NTT東/西日本などの通信事業者やNEC/富士通などのメーカー、東京都などに加えてケーブルテレビ会社などがはローカル5Gに意欲的だ。今回は、特に住友商事及びJ:COMなどの戦略について検討してみたい。

Gartner社のハイプ曲線

英国シンクタンクのGartner社は1995年依頼、要素技術のステータスをハイプ曲線として毎年発表している。2020年8月に発表したものでは、Private 5Gが新技術の黎明期として位置づけさせていた。

(出典:ガートナー社

スマートシティ構想

ローカル5Gソリューション事業を提供する会社も出ている。例えば、ドコモと連携して5Gに関する知見を深めるとともに、ローカル5Gを始めるにあたって電気通信事業者の資格を取得するとともに、無線局の免許申請や有資格者の確保などが必要だが、アジアクエスト社はこれらの支援を行うソリューション事業を提供している。

(出典:PR Times)

総合商社の業績実績(2019年度)

5大総合商社というと、三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅だろうか。この5社の2019年度の売上高と当期純利益をマッピングすると下のグラフのようになる。右上のゾーンに位置する売上も利益も良好なのは三菱商事と伊藤忠商事だ。一方、この2社に比べると売上や利益が少ないのが三井物産と住友商事だ丸紅はこの期では当期利益が赤字となっていた。各社の有価証券報告書で5Gのキーワードの出現回数をカウントすると住友商事が5回と圧倒的に多かった。丸紅と三井物産がそれぞれ1回だった。5Gと業績との関係は微妙だ。


(出典:各社の有価証券報告書より(2019年度)筆者作成)

住友商事のメディア戦略

住友商事は以前から映像やメディアへの事業に積極的だ。下の図は2020年1月20日に5G網の早期活用を目的として業務連携をすると発表した時の図だ。東京都もローカル5Gには関心を持っており、3社が協力して進めようということなのだろう。

(出典:日本経済新聞

インテリジェントポール

住友商事のプレスリリースを見ていると、下のようなインテリジェントポールの紹介をしている。製造しているのは住友グループのNECだ。5Gではサブ6と呼ばれる3.6GHzから6GHzの周波数や、ミリ波と呼ばれる28GHzの周波数を用いる。電波伝搬損失は周波数の二乗で大きくなるので、エリアの半径が小さくなるだけではなく、設置するアンテナ自身の高さも低くなる。このため5Gでは、電柱や信号等や街灯が候補となる。インテリジェントポールは街灯の機能とアンテナの機能を包含したものだ。携帯電話各社のアンテナもスッキリと収納しやすくしている。港区の街並みにこのような街灯が並ぶ日も遠くないのだろうか。

(出典:住友商事

ローカル5Gに割り当てられる周波数の候補

ローカル5Gに周波数帯域としては、前述のようにサブ6とミリ波だ。特に、サブ6のうちの28.2~28.3GHzについては100MHz幅での利用が予定されている。4.6~4.8GHzの帯域や、28.3GH~29.1GHzの帯域についても割り当てが検討されている。ローカル5Gの利用の申請にあたっては基本的に所有している土地や建物が対象となる。しかし、道路や橋などの土地や施設を持っている公共機関には、ローカル5Gを提供するスキルも、ノウハウも不足しているし、そもそもそれで儲けようという発想も取りにくい。このため、総合商社のような橋渡しが重要なのかもしれない。

(出典:総務省

ローカル5Gの課題と対応策

課題1:高額な電波利用料

ローカル5Gの事業者になるには、ローカル5Gの周波数の利用を申請し、免許を取得する必要がある。放送事業者に比べて通信事業者が支払う電波利用料は高額だ。ミリ波のローカル5G基地局を設置するには、年額で1局あたり2,600円を支払う必要がある。数百局や数千局ならまだしも、例えば十万局だと2.6億円となる。それなりにしっかりとした事業計画と財務基盤がないと厳しいだろう。

(出典:日経クロステック

課題2:非対称なローミング

これはローカル5Gなどの新規MVNO事業者を育成するためだろうか、ローカル5Gから携帯電話事業者(MNO)へのローミングは可能だが、MNOからローカル5G事業者へのローミングは原則許容されていない。しかし、ローカル5G事業者は自らインフラを持ち事業者なので、対等の相互ローミングがなぜ許されないのだろう。もし、これが許容されれば、例えば、道路の5G整備やビル内の5G整備、商業施設内の5G整備などをローカル5G事業者が行い、既存のMNOは必要に応じてローミングできれば、無駄な基地局投資をする必要がなくなるし、ローカル5G事業者もビジネスプランが成り立つ。この辺りは再考のタイミングがあるのだろうか。

(出典:日経クロステック

課題3:不安定な品質の改善

C/U分離とは、制御信号(C-plane)とユーザ信号(U-plane)を分離することだ。これのメリットは、良いとこ取りだ。つまり、800MHzや2GHzなど広いエリアを有するマクロ曲からの信号で安定的にユーザ端末との制御信号をやりとりする。そして、大容量通信や高速通信、低遅延通信が必要な場合には、最寄りの最適な基地局との通信を行う。携帯電話事業者はこのC/U分離技術をコアの技術の一つとして5G展開する予定だけど、ローカル5Gに割り当てられる周波数は限られているため、C/U分離を実現できない。携帯電話事業者のマクロ局を使って制御信号をやり取りすることができれば、ローカル5Gとしての品質向上が図れるのではないだろうか。

(出典:LuckyOeanのブログ

まとめ

インフラシェアリングについては、以前投稿した。対象となるのは、ビル内や商業施設内などの屋内だけではなく、屋外も当然対象となる。行政機関とも連携しながら、インテリジェントポールのようなインフラ施設に投資して、整備する方法は非常に戦略的だ。本来なら東京オリンピック&パラリンピックに合わせてメインストリートにこれらインテリジェントポールを整備し、5Gだけではなく、コロナ対策や熱中症対策などの安全・安心対策をカーボンニュートラルに実現するようなプロジェクトを立ち上げてもよかったのかもしれない。2021年のオリパラが成功裡に開催されるのかどうかは予断を許さないが、コロナ禍の沈静化を含めて、良い方向に言って欲しいと願う。

以上

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