病院の3分2が赤字経営。製薬会社も病院も厳しく医療崩壊の危機。外資系新薬トップ企業は巨額の利益を独占。これはやばい。

はじめに

コロナ禍で感染者が急増する中で、高齢者は病院に近づかず、自宅や終の住処でおとなしくしているためか増大し続けてきた国民医療費が減少に転じている。これは良いことなのかどうか。2020年4月の調査では病院の67%が赤字経営だという。日本は世界一病床が多い。感染症指定を5類に変更すれば医療崩壊は起こらないと日本医科大学の松本尚救急医学教授は説明する。この問題も重要だけど、その前に日本の病院は経営面で崩壊の危機に直面しているのではと心配になった。

(出典:正論)

増大し続ける国民医療費

国民医療費とは、国民が1年間で保健や医療費に使う費用の合計で、患者が支払う自己負担分を含むが保険適用外の医療費は対象外だ。1950年代は数兆円だったけど、1974年に5兆円を超え、その後も伸び続け2018年度には43.4兆円に達した。昨年11月の厚生労働省の発表によれば、一人当たり34万3,200円となった。これは、前年度より3,300円(1.0%)の増加だ。2020年度は、コロナ禍で医療費が増大するかと思ったら、病院に近寄る年寄りが減少したためだろうか、2020年4月から2021年1月の速報ベースでも4%程度の減少傾向が続いている。これは良いことなのか、どうか。

(出典:バリュートレンド

新薬メーカーと後発品メーカー

製薬会社には新薬を開発する新薬メーカーと、ジェネリック薬品を製造する後発品メーカーがあり、アルフレッサ、スズケン、メディパルなどの医薬品の卸売企業経由で病院や薬局に販売する。国内の新薬メーカの代表は武田薬品やアステラス製薬、第一三共などだ。ジェネリックメーカーの代表は日医工や沢井製薬、東和薬品などだ。

(出典:バリュートレンド

上場製薬企業の給与と従業員数の増減

下図は、横軸に過去5年の従業員の増減、縦軸に過去5年の給与の増減でプロットしたものだ。右上のゾーンは従業員が増加し、給与も増加という絶好調企業群だ。ジェネリックメーカーの多くがプロットされている。一方、左上のゾーンは従業員が減少しながら給与が増加している堅実の企業群だ。第一三共やアステラス製薬など新薬メーカーの多くがプロットされている。右下や左下は給与が減少しているリストラ企業群だ。どこの業界も淘汰が厳しい。

(出典:Answers News)

減少するMR数と増大するCSO活用企業

MRとは、製薬会社の営業マンで高給で有名だ。一方のCSOとは、医薬品の営業やマーケティング活動を請け負う企業(Constract Sales Organization)の略だ。コントラクトMR(CMR)とも呼ばれる。MRは、2013年度の6万5,752人をピークに減少し、2019年度は5万7,158人まで減少している。逆に、CSOの活用企業は、2009年の52者から2019年には130社に増加した。CMRも2014年の4,148をピークに減少していたが、2019年には3,445人まで再び増加に転じている。MRに代わりにCSO(CMR)を活用する流れは加速する勢いだ。

(出典:日本CSO協会

減少する日本医薬品卸売連合会の会員数

薬品の卸売企業が病院に卸します。その連合会の会員数は1978年の615社から2019年には70社まで減少した。卸売企業は、メディセオ、アルフレッサ、スズケン、東邦薬品の大手4社が仕切っていて、大きな権限を握っているようだ。

(出典:Answers News)

薬価、仕切価、納入価の謎

医薬品の価格の決まり方は独特であり、謎が多い。病院や薬局が消費者に売る薬価は固定で決まっている。納入価と薬価の差額が病院や薬局の利益となる。病院や薬局は納入価をできるだけ下げようとし、メーカーは仕切価(販売価格)を高く設定して、薬価に近い価格にしようとする。安く買おうとする病院・薬局と、高く売りたいメーカーの間に医薬品卸は挟まれるため、営業利益は低い。また、古い商習慣も残っていて、納入価が決まらないまま納入する仮納入や、ひと山いくらで値引きする総価取引などだ。また、納入価が仕切価を下回ることもあり、メーカーは割戻(リベート)やアローアンス(販売奨励金)を支払うことで損失を補填することもある。

(出典:業界動向

市場実勢価格で決まる薬価

薬価は固定だけど、市場実勢価格に合わせて公定価格が改定される。例えば、下図のように改訂前薬価が100円だけど、販売かくの加重平均(消費税込み)が80円だとすると、改訂前薬価の2%の調整幅を加えて、新薬価は82円となる。薬価改定のたびに通常は薬価が下がる。薬価は公定価格だけど、仕切価や納入価は当事者間で自由に設定されるのがこの業界の特徴だ。2018年度は薬価制度の大幅な見直しに伴い平均7.48%の引き下げが行われた。

(出典:Answers News)

悪化する医療機関経営

新型コロナの影響で病院や薬局の経営が苦しくなっている。このため、医薬品の値下げ圧力が強まるが、実質価格が低下すると薬価もそれに連動して引き下げられるため、さらに苦しくなるという悪巡回に陥る懸念がある。赤字病院の割合は2019年4月の45.4%から、2020年4月は66.7%に増加している。緊急事態宣言で医療崩壊の危機が盛んに叫ばれているが、確かに医療機関の経営は危機的な状況に陥っているところが増えている。これはやばい。

(出典:Answers News)

絶好調のワクチン会社

コロナ禍への対策はワクチンしかないと政府もマスメディアも総力を上げている。米ファイザーはワクチンの共有能力を13億回から20億回に引き上げた。他のメーカーも軒並み増産体制を進めている。ファイザーは米政府には、「1億回分のワクチンを約20億ドルで調達する契約を結んだ」と報道されている。しかし、日本政府がこの価格で調達したのか、それとも1回40ドル程度で調達したのかは明らかにはされていない。テレ朝ニュースによると、『アメリカの製薬大手「ファイザー」が、90%以上の効果がみられたと発表した新型コロナワクチンの販売価格について、先進国には1回分で2000円が基準となることが明らかにされました。』と報道している。仮に二億回で一回2000円とすると、4,000億円という巨額の資金が国を跨いで支払われる。ワクチン開発は10億ドルの費用が掛かるとしているので、巨額の利益がワクチン会社に集中する。医薬品業界でも貧富の格差が加速するのだろう。

(出典:日本経済新聞

まとめ

医薬業界は複雑だし、利権が絡む。MRが高給取りであることは聞いていたが、近年はMRが減少し、CMR(CSO)の活用企業が増えているのは初耳だった。ワクチン開発で巨額の利益を上げる企業がいる一方で、その他の企業や卸売会社は薄利での営業を強いられている。2020年4月現在で病院の67%が赤字というのも驚きだ。これこそ医療崩壊の危機だ。病院経営の健全化は長く厳しい課題だ。今すべきは、新型コロナに有効と言われるイベルメクチンなどのジェネリック薬品の製造や販売の推進ではないのだろうか。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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