タシュケントのメトロの今と未来への戦略

  • 2026年7月21日
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1. はじめに

ウズベキスタン、特にタシュケントの地下鉄駅は素晴らしい。それぞれの駅が、まるで博物館のような個性を放っている。初日はドキドキしながら利用したが、何度も乗るうちにすっかり慣れてきた。今日は日本では「海の日」で、仕事のメールもあまり来ないはず。そこで朝から、タシュケントのメトロで環状ルートに沿って集会を挑戦してみた。また、仕事柄GPSデバイスを持ち歩いているので、1日の軌跡をなぞってみた。午後からは博物館を巡ったけど、それはまた別の機会にしたい。実際にタシュケントのメトロに乗って感じた魅力や課題と、少し調べた今後の拡張計画や未来についてまとめてみました。

2. タシュケントのメトロを使ってみて感じたこと

2.1 現在の路線

現在、タシュケントのメトロには4つの路線がある。国営企業のタシュケント・メトロポリタン(Toshkent Metropoliteni)が運営している。以前は、ウズベキスタンの国営鉄道の一部だったが、現在は、ウズベキスタン運輸省の直属組織となっている。国営鉄道は、7月23日から7月28日に利用する予定。今回は、メトロに絞ってまとめたい。

2.2 素晴らしいところ

(1) メトロの駅の構内が素晴らしい

これはさまざまなメディアやSNSでも紹介されているが、構内がまるで美術館のようだ。しかも、それぞれの駅によって個性がある。天井が高いので、開放感もある。特に乗換駅の構内が素晴らしいと思う。

(2) メトロの利用料金が安い

タシュケントのメトロの特徴は、全区間一律料金であることだ。一律料金なので、改札の入場時に支払うだけだ。支払い方法には2つあり、それぞれの料金は次のとおり。圧倒的な安さは素晴らしい。

1) ICカード・クレカ決済・スマホ決済:1,700スム(約24円)
2) QR乗車券:3,000スム(約43円)

見た限りでは、ほとんどの利用者が1)の方法を使っていた。自分もクレカでのタッチ決済のみだった。日本でもクレジットカードのタッチ決済が始まっているが、Suicaなどの方が便利なため、これまで使う機会はなかった。こちらではクレジットカードを利用しているが、反応も早く、とても便利だ。しかも、改札を出ない限り、4路線を自由に乗り継げるのは便利だ。

(3) 利用客のマナーが素晴らしい

これは主観的だけど、比較的マナーは良い。日本のような整然とした行列ではないが、降りる人を優先し、自然に譲り合っているので気持ちが良い。

(4) 避難場所を兼ねている

地下鉄のホームだけでなく、地上からホームへ向かう地下通路も非常に広い。天井はそれほど高くないが、横幅があり、かなりゆったりしている。平和な時代には、コンサート会場にしたりすることもあるようだが、災害時や戦争になったときには、市民の避難場所となるように設計されている。

(出典:YouTube)

2.3 残念なところ

個人的には、残念と感じることは次の3点ぐらいかなあ。

(1) ループが完成していない

今朝は早起きしたので、メトロの旅に出た。路線図を見るとループになっているので、これにチャレンジした。今日の最寄り駅は青い区間(ウズベキスタンライン)のToshkant駅なので、ここからこの区間の最後のDo`stlik駅に向かう。そこで黄色の区間に乗り換える。Texnopark駅から最終区間のQipchoq駅まではほぼ地上の走行で外が見える。途中、ウズベキスタンでは珍しいゴルフ練習場やゴルフ場の近くも通る。車窓からは確認できなかったが、タシュケントでゴルフができることを知ったのも意外な発見だった。未完成なのは、赤い区間(チロンゾールライン)のChinorからSergeliの区間だ。メトロの乗り換えができないので、途方に暮れていると、メトロバスに乗れと言われる。乗ったら無料だった。メトロができるまではピストン輸送を続けるようだ。

(2) タシュケント国際空港に乗り入れていない

ウズベキスタンの空の玄関がタシュケント国際空港だ。路線図を見るとこの周りを周回している。ここはぜひ、空港にも乗り入れてほしい。そうすれば旅行客も白タクにぼられることもなくなるだろう(苦笑)。

(3) エアコンがまだ未整備な区間がある

全車両を確認したわけではないが、エアコンが効いている車両と、そうでない車両があるようだ。特に黄色の区間は地上というか高架上を走行するので、結構暑い。車内でアナウンスがあり、乗客が一斉に窓を閉め始めた。その後、エアコンが効いてきた。多分、そういうアナウンスだったのだろう。

3. タシュケントのメトロの未来

3.1 政府の発表

2026年5月、ウズベキスタン政府は2035年を見据えたタシュケント地下鉄の大規模拡張計画を承認した。この計画の目的は単に駅を増やすことではなく、「人口が急増する首都の移動を、自動車中心から地下鉄中心へ転換する」ことにあるという。これによると、2030年までの目標として、路線を延長し、駅数も1.6倍に増やし、1日の利用者を2.3倍にして、列車間隔を約半分にするという。

項目 現在 2030年目標
路線延長 約70km(4路線) 103km(4路線)
駅数 50駅 79駅
1日利用者 約78万人 180万人
列車間隔 約4~6分 1.5~3分

(出典) President Mirziyoyev approves major expansion of Tashkent Metro through 2035

3.2 タシュケントのメトロの未来

(1) 環状線(Circle Line)の完成

現在の環状線(Halqa Line)は、市内南部から東部にかけて一部区間しか開業しておらず、名前のとおり「環状」にはなっていない。そのため、郊外同士を移動する際にも、一度市中心部を経由する必要があり、時間がかかるケースがある。2035年計画では、現在建設中の外側の環状線を完成させるだけでなく、空港・南駅方面への新線を組み合わせることで、都心部にも環状に近いネットワークを形成する構想となっている。将来的には、外側の環状線に加えて、空港・南駅方面への新線や既存路線が連携し、都心部にも環状性を持つ地下鉄網へ発展する可能性がある。

(2) 空港・南駅方面への新路線

現在、タシュケント国際空港へは地下鉄が乗り入れておらず、旅行者はタクシーやYandex Go、バスを利用する必要がある。今回の計画では、市中心部のMing O’rik駅から南駅(Tashkent South Railway Station)方面へ新路線を建設し、その先の空港方面につながる。これにより、鉄道、高速鉄道、空港が地下鉄で結ばれる都市交通ネットワークが形成される。海外からの旅行者だけでなく、市民の通勤・通学にも大きな利便性をもたらし、タシュケントの玄関口へのアクセスが飛躍的に向上するだろう。

(3) 東側(TTZ方面)への延伸

赤線(Chilonzor Line)の東端にあるBuyuk Ipak Yo’li駅から、さらに東側のTTZ(旧タシュケント・トラクター工場地区)まで約4駅延伸する計画だ。この地域では近年、大規模な住宅開発や再開発が進んでおり、人口増加への対応が求められている。地下鉄が延伸されることで、市中心部への通勤時間が短縮されるだけでなく、自動車交通の増加を抑える効果も期待される。また、シルクロードの名を冠した終点駅からさらに都市が広がることになり、将来の都市発展を見据えた先行投資として位置づけられているようだ。

(4) 西側(Karakamysh方面)への延伸

青線(Oʻzbekiston Line)は現在Beruniy駅が西端だが、ここから住宅地が広がるKarakamysh地区へ約2駅延伸する計画だ。この地域は人口が増加している一方で、市中心部へのアクセスはバスや自動車への依存が大きいエリアだ。地下鉄の延伸により、通勤・通学の利便性が向上し、交通渋滞の緩和も期待される。東西両方向への延伸を進めることで、市街地全体をバランスよくカバーする地下鉄網へ発展させることが、この計画の狙いの一つだ。

(5) 新型車両の導入と運行本数の増加

新型車両の一部には、ウズベキスタン国旗を思わせるカラーリングが採用されている。地下鉄の利便性を高めるため、路線を延ばすだけでなく、新型車両の導入や車両基地(デポ)の整備、信号設備の近代化も進められる。これにより列車の運転本数を増やし、現在よりも短い1.5~3分間隔での運行を目指している。待ち時間が短くなれば、地下鉄は「時刻表を気にせず利用できる交通機関」となり、自家用車から公共交通への転換も進むだろう。人口増加が続くタシュケントにとって、輸送力の向上は路線延伸と同じくらい重要な施策となっている。

(6) ホームドアの設置

安全性向上のため、まずShakhristan駅でホームドア(ガラス製の可動柵)の試験導入が予定されている。ホームドアは転落事故や線路への立ち入りを防ぐだけでなく、列車進入時の安全性を高める効果がある。また、広告スペースとして活用できるため、地下鉄の新たな収入源にもなる。試験結果が良好であれば、今後は主要駅へ順次拡大される見込みだ。日本でもホームドアの設置が広がっている。世界の主要都市では一般的な設備となっており、タシュケント地下鉄も国際水準の安全性・快適性を目指している。

(7) 運賃制度の見直し

現在のタシュケント地下鉄は均一運賃制で、距離に関係なく同じ料金で利用できる。そのため、運賃は改札に入る際に支払うだけで、出口では精算しない仕組みになっている。しかし、今後、距離別運賃を導入する場合は、乗車駅だけでなく降車駅も記録し、実際に乗った距離に応じて運賃を計算する必要がある。つまり、現在の「入場時だけ課金する方式」から、「入場時に記録し、出場時に運賃を確定する方式」へ変更しなければならない。そのためには、すべての駅の出口に対応改札を設置し、ICカードやクレジットカードの決済システム、通信ネットワーク、運賃計算システムなどを再整備する必要がある。単なる料金表の変更ではなく、地下鉄全体の課金インフラを作り直す大規模な事業になる。収入増とコスト増のバランスをいかに図るかが課題だ。

(8) Park & Ride(パーク・アンド・ライド)の導入

郊外に大型駐車場を整備し、自家用車を駐車して地下鉄へ乗り換える「Park & Ride(パーク・アンド・ライド)」も重要な施策となる。現在は市中心部まで自家用車で移動する人が多く、朝夕の交通渋滞が大きな課題となっている。郊外で地下鉄に乗り換える仕組みが整えば、市内への車の流入を減らし、渋滞や排気ガスの削減につながる。これは欧州や日本の大都市でも採用されている交通政策であり、地下鉄網の拡充と組み合わせることで、持続可能な都市交通システムの実現を目指している。ただし、地下鉄駅から最終目的地までの「ラストワンマイル」をどう確保するかも重要な課題だ。駅周辺のバス路線やシェアサイクル、タクシー、Yandex Goなどとの連携が進めば、自家用車から公共交通への転換はさらに進むだろう。

4. まとめ

タシュケントの地下鉄は、「移動手段」であると同時に「観光スポット」でもある。美術館のように美しい駅、驚くほど安い運賃、市民のマナーの良さなど、実際に乗ってみて初めて分かる魅力がたくさんある。一方で、環状線が未完成であることや、国際空港へ乗り入れていないことなど、改善の余地も残されている。しかし、政府は2035年を見据えた大規模な拡張計画を進めている。環状線の完成や空港アクセスの改善、新型車両やホームドアの導入など、タシュケントの地下鉄は、さらに便利で安全な交通機関へ進化しようとしている。

タシュケントを訪れるなら、ぜひ地下鉄にも乗ってみてほしい。「世界でも屈指の美しい地下鉄」と呼ばれる理由を、きっと実感できるだろう。次に訪問するとき、地下鉄がどこまで進化しているのか、今から楽しみでならない。そして可能であれば、タシュケントの都市交通の発展に、日本企業も貢献してほしいと思う。

以上

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