さらなる進化が期待されるBGANインマルサットサービス

はじめに

インマルサットが提供するBGANサービスに関わる機会があり、気になったので少し調べてみた。自分自身は衛星通信を専門とする技術者ではないけど、衛星通信による移動通信について少し俯瞰してみたいと思った。

インマルサットネットのBGANサービス

衛星といえば、一般にはBSやCSなどの衛星放送を思い浮かぶ人が多いかもしれない。インマルサットとは、1979年に設立された国際機関である国際海事衛星機構(INMARSAT:International Maritime Satellite Organization)の事業を引き継いだ英国の有限責任会社である。このインマルサットが運用する衛星を使った衛星ブロードバンド・サービスの一つがBGANと呼ばれるサービスだ。

(出典:XTECH)

移動衛星通信システムの概要

移動衛星通信システムは、前述のインマルサットに加えて、高度780kmに66個の衛星を活用したイリジウム衛星通信では1.5GHz/1.6GHzという所謂Lバンドの周波数を用いてサービスを提供している。下の表に示すように、さらに2.5GHz/2.6GHzのSバンドを利用するNTTドコモのN-Starや、4GHz/6GHz帯のESV、12GHz/14GHz帯のVSATなどがある。

(出典:総務省

移動衛星通信システムの需要予測

移動衛星通信システムを利用している端末は、2007年で5万台を超え、2013年に10万台を超え、2020年には20万台を超えると予想されていた。最近では、船舶や飛行機でもインターネットを利用できるようにインマルサットの衛星サービスを利用できるようになっているので、今後もさらに利用者は増えると期待されている。

(出典:総務省

BGAN

BGANとは、「Broadband Global Area Network」の略であり、ビーギャンと呼ぶ。インマルサットが運用している第4世代のInmarsat-4衛星(I-4)を用いて、最大492kbpsのデータ通信や音声サービスを利用可能だ。インド洋衛星(IOR)と大西洋衛星(AOR)は運用していたが、2008年8月に太平洋衛星(POR)の打ち上げに成功し、4衛星の再配置により2009年2月25日より日本を含めた全世界でのBGANサービスが開始された。日本では株式会社日本デジコムとKDDIとJSAT MOBILE Communicationsによりサービスの提供や端末の販売、レンタルが行われている。

Explorer727

代表的なBGANの端末設備の一つがExplorer727と呼ばれるものだ。アンテナ部分の重量が6kgで、本体やトランシーバ部分は2.4kgだ。基本的に車載型であり、時速200kmまでなら走行しながら通信が可能だ。

(出典:JDC)

Explorer325

先のExplorer727を少し小型化したものがExplorer325だ。アンテナの重量が3.6kgと小型・軽量化している。本体トランシーバ部分は2.2kgと若干軽量化された。

(出典:JDC)

インマルサット衛星

インマルサットでは前述のように4つの衛星を活用している。下の図のように大西洋衛星として、AOR-EとAOR-Wの2基、インド洋衛星のIOR、そして太平洋衛星のPORだ。ちなみに、日本から直接アクセスできるのは、PORとIORのみである。KDD(当時)に勤務してまだ20代の時に初めて海外出張をする機会を頂いた。当時はPORとIORとAORの衛星を利用する各国の通信事業者の責任者が集まって、運用に関する重大事項を討議していた。IORとPORは、KDDの代表責任者である役員や部長が出席していたが、直接のアクセスのないAORには部長や課長が参加していた。たまたま部長の都合が悪く、課長の都合も悪く、担当者の都合も悪いということで、なぜか自分に回ってきた。何もないからと送り出されたが、現地にいくと、いつから日本はAORにもアクセスできるようになったのか?など多くの代表者から声をかけられた。一同が集まった会合でも、イスラエルの代表が「今回は日本からの代表者がいないようだが、なんちゃらかんちゃら」と発言するので、勇気を出して、「日本からの代表者はここにいる。二カ国間の話なので、別途討議したい。」とだけ話をした。イスラエルの代表者からは「ああだこうだ」と捲し立てられたが、珍紛漢紛なので、紙とペンを出して、ここに用件を書けと示し、描いてもらった内容を本国にFAXして、解答を求め、翌日、日本からの解答を説明した。なんだか訳のわからないうちに無事出張は終了したが、今となっては楽しい思い出だ。この辺りは別途投稿したい。

(出典:BGAN)

まとめ

今回は、インマルサットの衛星サービスBGANについて簡単にまとめてみた。まだまだ個人が利用するベースではないけど、船舶や飛行機の利用時には間接的に利用することがあるかもしれない。ちなみに、KDD(当時)とDDI(当時)とIDO(当時)が合併してKDDIという新会社になる。3社の事業領域は基本的にはあまりバッティングはなかったが唯一懸念されたのがインマルサットのサービスとイリジウムのサービスだった。しかし、結果的には共にKDDIが提供するということで、相乗効果が出たのではないだろうか。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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