はじめに
今回は、サラリーマンと縁の深い単身赴任について考えてみた。自分自身は1度目の転居を伴う人事異動では子供も小さかったので家族で沖縄と香港に赴任した。2度目は、子どもが大学受験を控えていた時期なので「行ってらっしゃい」と軽く見送られる単身赴任だった。勤務先の会社でも共稼ぎ夫婦も多く、奥さんが海外に単身赴任という例もある。ただ、最近はテレワークや働き方改革なども進んでいる。単身赴任は過去の制度となるのだろうか。
単身赴任の昔と今
江戸時代の単身赴任
日本人は単身赴任について抵抗感があまりない。欧米や家族との時間を大事にする豪州の人からみると単身赴任はありえないようだ。多分、そんな日本の特殊性は江戸時代にお殿様が1年交代で江戸と国許を往復する参勤交代という文化があるからだと思う。参勤交代では、殿様だけが移動するのではなく、数百人程度が一般的だけど、加賀百万石の前田家だと4千人の大名行列だったようだ。これを受け入れる江戸も国本も大変だっただろう。
(出典:Japaaan)
昭和から平成へのシフトチェンジ
自分が就職したのは昭和53年の4月だった。下の図は昭和55年から平成26年までだ。昭和の時代は男性雇用者と無業の妻の組み合わせが多かった(青色)けど、平成になると雇用者の共稼ぎ世帯が増えている(赤色)。保育園の不足が問題となるのは、この共稼ぎ世帯の増加が背景にある。
(出典:mercer)
夫の転勤に対する妻のマインド
東急住宅リース株式会社の調査(2018年12月25日~2019年1月7日)による転勤経験のある既婚男性ビジネスパーソン500名と、夫の転勤に伴い一緒に引越しをした経験のある既婚女性“転妻”500名の計1,000名を対象に調査を実施したところ、「夫の転勤の際に、これを言われたら絶対についていくのをやめると思うセルフ」のベスト10は下の表の通りだったという。自分なら「どうする?」という質問ぐらいだ。それ以上は怖く聞けない(笑)。
(出典:PR Times)
夫に単身赴任してもらうメリットとデメリット
単身赴任する本人もバーチャルな独身生活をエンジョイできるけど、奥様から見てもメリットがある。大体子供も大きくなる頃には、ラブラブの夫婦もそれなりの夫婦になっていて、少し距離を置いた方が夫婦喧嘩も減ってちょうど良いのではないだろうか。自分の場合も、単身赴任の1年目は生活のスタイルを整えたり、お料理にチャレンジしたり、ゴルフの練習をしたり、スタバに通ったりして楽しかった。2年目もその惰性の延長だけど、3年目ぐらいになると洗濯や掃除、炊事が面倒になってきて、奥様のありがたみをしみじみと感じるようになった。感謝の気持ちが持てるようになったのはメリットだろう(笑)。
(出典:ALSOK)
単身赴任の最近の傾向
転居を伴う人事異動や単身赴任の状況
社員数の規模が大きいほど単身赴任などの比率が高い。1000人以上の従業員がいる企業では転居を伴う人事異動ありが89.8%で、配偶者がいる単身赴任も81%だ。300人から999人は少し減り、100人から299人になると半分以下になる。30人から99人の規模だとさらに減少する。女性の単身赴任者も1000人以上の企業規模だと7.1%という。すごい。
(出典:JILPT)
年代別単身赴任者の推移
年齢別にみると男女ともに多いのは50歳から59歳だ。ついで60歳以上や40-49歳だ。つまり、それなりの年齢になり、中間管理職や地方の部長、拠点長として赴任するということだ。20-29歳や30-39歳では男性より女性の単身赴任が多いのは、男性よりも女性の婚姻年齢が低いことも関係しているのだろう。
(出典:JILPT)
企業の経営スタイルの変革
広がるリモートキャリア
MBAの修論のためにサイボウズ社にインタビューをしたことがあり、その時に「弊社では100人の社員が100通りの働き方をしている」と説明を受け、衝撃を受けた。サイボウズでは、オーダーメイド型ソフト開発からレディメード型ソフト開発(クラウド)にシフトするタイミングで、働き方も一気に加速し、離職率の低減と利益率の向上を実現した。このような働き方改革は、サイボウズだけではなく、多くの企業が実践している。特に、コロナ禍への対応としてテレワークを進める企業は多い。拠点に拘らずテレワークによる働き方を実現する人事制度改革には、次のようにアフラック生命保険や富士通などが取り組んでいる。
(出典:日経BP)
NTT
持株会社であるNTTは本年9月28日に、従来の一極集中型組織から自立分散するネットワーク型組織に変革すると発表した。同時に、サテライトオフィスを全国260カ所以上整備することで、リモートで働く環境を整える。2022年度の導入を予定しており、これが実現すると転勤や単身赴任も不要だ。2022年度以降には、本社や管理部門も地域の中核都市に分散するが、社員の居住地と離れてもリモートで勤務できるという。
(出典:IT Media)
カルビー
カルビーは、2020年7月1日から新たな働き方「Calbee New Workstyle」を導入すると発表した。在宅勤務などのテレワークを原則とするため、テレワークで支障がなければ単身赴任が解除される。カルビーは、これに先行して、2017年に始めたモバイルワーク制度を新型コロナに対応して2020年3月以降も継続していたが、社員の通勤時間の削減や新しいコミュニケーションスタイルの浸透、ITによる業務効率化などのメリットが顕在化したため、本格導入に踏み切った。7月1日以降は、通勤定期券は支給せずに、出社した時に交通費の実費を支払う。モバイルワーク手当を新設することで、自宅のWi-Fi環境などを整備する費用として圃場する。羨ましいぐらいだ。
レノボ
レノボ・ジャパンは、ライフステージに合わせた柔軟な働き方を実現すると発表した。同社では、2011年3月の東日本大震災発生時にテレワークを試行した。また、2016年に全国規模で開始し、2017年3月に2回目を実施している。2017年7月からはグループ4社の正社員と派遣社員を対象に、3回目となるテレワークを実施し、コールセンター担当者や外部委託の業務従事者などを除く約800人が参加した。当時は、まだコロナ禍ではなかったので、介護離職者ゼロ宣言とふるさと人事というコンセプトでキャンペーンが実施された。レノボでは、テレワークを先行して実施し、蓄積したノウハウを『はじめようテレワークスタートガイド』として、まとめて無償で提供している。新型コロナウイルス対策でテレワークを実施する企業が増えていて、生産性の低下やセキュリティの低下を懸念する声もあり、これに対応するソリューションを提案している。
(出典:ZD Net)
まとめ
今回は、単身赴任について考えてみた。江戸時代の参勤交代を起源としているのではないかというのは私の勝手な着想だけど、日本では当たり前のこととして受け止められてきた。しかし、近年の夫婦共稼ぎの増加や、テレワークを中心とする働き方改革が進む中で、無理に家族から離れて勤務しなくても、テレワークで十分という企業も出ている。簡単になくなることはないとは思うけど、今後は減少の傾向に向かうのではないだろうか。
以上
最後まで読んで頂きありがとうございました。
拝