世界はウシハク統治だが、日本はシラス統治。世界に誇れるシステム(国体)を理解したい。

はじめに

コロナ禍もなかった2018年末に職場で飲み会があった。自分より年長の人と隣になり、彼から唐突に「個人的な意見だが、天皇制に対して疑問を持っている。」という挑発的な発言があった。普段は大人しい感じの人なのでびっくりした。なぜですか?と聞くが彼の回答は要領を得ない。このため、逆に自分から彼に「日本の伝統的なシラス統治という考え方を知っていますか?」と聞いてみた。当然彼は知らない。「古代より、日本国では国民は国の大御宝(おおみたから)と呼ばれていた」というと、「え!私は宝なのですか?」という。「はい、そうですよ」と答えた。「海外諸国では支配者と被支配者の関係が一般的だが、日本では天皇の命を受けた統治者が大御宝を統治する。現在でも、天皇が首相や最高裁判所の長官を任命する。これは、シラス統治の考え方に基づきます。」と説明した。自分より年少の人に説明するなら分かるが、年長の人に諭すように説明するのはちょっと違和感があった。しかし、この日本でシラス統治ということについて学校では習わない。なぜなのだろう。

シラス統治とウシハク統治

日本人としては、古事記をしっかりと読むべきだ。これは自分自身の課題でもあるが、この古事記には、「汝がうしはける葦原中国は、我が御子のしらす国である」という一文があるという。つまり、我が国はシラス統治であり、ウシハク統治ではないという意味だ。ウシハク統治とは、権力者が権力関係に基づいて民衆を統治するものだ。一方、シラス統治とは、最高権威(=神)が存在し、民衆は神の大御宝(おおみたから)であり、その統治を神が権力者に親任するという構図だ。日本以外の国はウシハク統治であり、日本のみがシラス統治であるという。ウシハク統治は、いわゆる帝国主義だ。最も能力があり、最も優秀な人間が統治すると言う考え方だ。一見理に適っているのだけど問題がある。それは、権力者に寿命があることだ。素晴らしい権力者の後継者争いで揉める。そこで失敗すると他の帝国に支配されて、国すらがなくなる。それが大陸の帝国主義の歴史だ。一方、日本では建国時から天皇がいて、国民は大御宝(おおみたから)であり、天皇から権力者に統治が信任される。これの素晴らしいことは、常にベストな権力者に統治を委ねれば良い点だ。日本は、紀元前660年2月11日(皇紀元年)に成立し2681年も継続している世界最古の国だ。世界最古の会社も日本の会社だ。

出典:小名木善行のシラスとウシハク

世界最古の会社金剛組

WHOによれば2021年の男女平均の健康寿命では日本が74.1歳とトップであり、シンガポールが73.6歳と2位、韓国が73.1歳と3位だった。企業の寿命は平均30年といわれるが、日本には創業100年以上の企業が約2万8千社あり、さらに創業1000年を超える超長寿企業が7社存在する。そのトップが金剛組だ。西暦578年に当時の法隆寺を建立するために設立され、今も神社仏閣の建設業を続けている。ギネス世界記録によれば、世界最古のホテルは日本の山梨県にある「西山温泉慶雲館(けいうんかん)」だ。慶雲年間(西暦705年)に開湯して以来、多くの日本人に愛されてきた。コロナ禍で大きな経済的な打撃を受けている企業・業界が多いが、なんとかこの危機を乗り越えて生き残って欲しいと思う。

文明の生態史観

日本の生態学者梅棹忠夫(1920年6月〜2010年7月)が発表した「文明の生態史観」の文庫版をAmazonで発注して読み始めている。著者は西洋と東洋という分け方ではなく、第一地域と第二地域と区分した。第一地域は西ヨーロッパと日本であり、第二地域はその間の大陸だ。第二地域は19世紀までは巨大な帝国が成立して発展したが、覇権争いに明け暮れて結局近代化で出遅れた。逆に日本と西ヨーロッパはこれら大陸と距離があったので近代化で成功した。面白いと感じたのは、日本が鎖国をしなければ、世界の勢力分布は全く違ったものなっていたという指摘だ。つまり、地政学的に日本は東南アジアとの交流があった。インドでのプラッシーの戦い(1757年)を契機に、イギリスはインドの支配を強め、19世紀半ばにはインド全土をイギリスが支配した。日本の鎖国は寛永16年(1639年)から日米和親条約締結の嘉永7年(1854年)だ。もし、日本が鎖国せず、東南アジアでの勢力範囲を拡大していたら確かに世界情勢は全く異なるものになっていたのだろう。

昭和天皇とマッカーサーの会談

戦後、初めて昭和天皇がマッカーサーと会談した時の状況も学校ではあまり教えない。しかし、ネットで調べるとその当時の通訳の証言がYouTubeで再生できる。これは、1955年8月に渡米した当時の外務大臣重光葵がマッカーサーとの会談で、マッカーサーからの次のような説明とも合致する。次のように発言したという。

陛下はまず戦争責在の開題を自ら持ち出され、次のようにおっしゃいました。これには実にびっくりさせられました。すなわち「私は日本の戦争遂行に伴ういかなることにも、また事件にも全責任をとります。また私は日本の名においてなされたすべての軍事指揮官、軍人および政治家の行為に対しても直接に責任を負います。自分自身の運命について、貴下の判断が如何様のものであろうとも、それは自分にとって問題でない。構わずに総ての事を進めていただきたい」これが陛下のお言葉でした。私はこれを聞いて興奮の余り、陛下にキスしようとした位です。もし国の罪をあがのうことが出来れば進んで証言台に上ることを申し出るという、この日本の元首に対する占領軍の司令官としての私の尊敬の念は、その後ますます高まるばかりでした。

まとめ

自分は別に愛国主義社ではない。普通の単なる技術者だ。しかし、日本人として、大御宝とか、シラス統治といった日本古来からの考え方や、昭和天皇の態度などは知っておきたい。日本の政治にも多くの問題や課題があるが、海外諸国に比べて格段に古い歴史を持ち、優れた思想をもち、平和で豊かな国であることに誇りを持っていたい。学生時代に吾輩は猫であるの英語版のペーパーバックスを奈良公園で読んでいたら、奈良に遊びに来ていた外国人夫婦に声をかけられた。その本は有名だし、面白いよとプレゼントしたらえらく喜ばれた。そのときに、Are you Shinto?と聞かれた。自分はシントーではないと答えた。シントーの意味を理解していなかった。神道の意味だった。今ならなんて答えるのだろう。神仏習合の話でもしてあげると喜ばれるかもしれない。海外の人に日本の歴史や文化や思想を胸を張って説明できる日本人が増えることを願うし、自分自身そうありたいと思う。

以上

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