令和3年度の技術士二次試験(筆記)に合格した人は口頭試験にダッシュしよう。

はじめに

今年の7月に実施された技術士の二次試験(筆記試験)の合格者の受験番号が本日早朝5時50分に発表された。何度も何度も番号を確認して喜んだ受験者もいれば、次回のリベンジを誓った受験者もいるだろう。指導させてもらった方から吉報が届いた。その方へのエールの意味も込めて、一般の方にも理解できるように技術士の試験概要含めて、まとめてみた。峠は超えたと信じたいがまだ最後の関門がある。油断せず、十分な準備をした上で12月の口頭試験に臨んで欲しいと思う。

技術士の試験の概要

技術士に合格するには、いくつかのルートがある が、オーソドックスなのは、一次試験にトライして修習技術者となり、実務経験7年を積んで、第二次試験(筆記・口頭)にトライして合格・登録するルートだ。大学院を卒業している場合には実務経験は5年でOKだ。この一次試験の合格率がだいたい50%、二次試験の筆記がだいたい10%、そして、口頭試験の合格率がだいたい90%なので、ストレートで合格するのは、4.5%となる。なかなか厳しい合格率だ。


(出典:JIIE)

一次試験

毎年6月に申し込み、11月の最終週の日曜日に試験が実施される。合格率は近年ではだいたい50%程度だ。指定された教育機関の教育課程を修了していると一次試験は免除される。一次試験の受験資格には特に制限はない。このため、2014年にはお茶の水小学校3年生(当時)の9歳の男の子が化学部門の一次試験に合格した例もある。どんだけ優秀だ。自分は、電気・電子部門が専門だけど、一次試験の問題をみてこれは難しいと判断して、経営工学でチャレンジして無事通過した。電気・電子部門の試験だとヤバかったと思う。

問題の種類 解答時間 点数配分 設問と解答方法
基礎科目:科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題 1時間 15点満点 1群から5群の問題群からそれぞれ3問、計15問を選び解答する(選択問題)
適性科目:技術士法第4章の規定の遵守に関する適正を問う問題 1時間 15点満点 15問全てに解答する(選択問題)
専門科目:当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題 2時間 50点満点 35問のうち25問を選択して解答する(選択問題)

二次試験

一次試験の合格者もしくは指定された教育機関の教育課程を修了した人は二次試験を受験することができる。今年の予定で言えば、4月5日から4月19日までに受験申し込みを行い、筆記試験を7月11日(総合技術監理部門を除く技術部門および総合技術監理部門の選択科目)に行い、その結果が本日10月26日に発表された。筆記試験の合格者は12月から翌1月までに実施される口頭試験に受験する。

筆記試験

技術部門には、総合技術監理部門を含めて21の部門がある。ここでは全て総合技術監理部門を除く技術部門の受験を前提にして記述する。自分の場合には、電気・電子部門と経営工学部門と総合技術監理部門にトライして合格している。そしてそれぞれの部門に専門科目がある。例えば電気・電子部門であれば、電力・エネルギーシステム、電気応用、電子応用、情報通信、電気設備の5つの科目があり、自分の電気・電子部門での専門科目は情報通信だ。筆記試験は文字通り600字詰めの答案用紙に合計9枚を所定の時間内で書き切ることを求められる。600字の答案用紙1枚を30分で書くペースだが、構想を練る時間も必要なので簡単ではない。

問題の種類 解答時間 点数配分 設問と解答方法
必須科目:「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの 2時間 40点満点 2つの問題から1問題を選び、答案用紙3枚にまとめる。
選択科目:「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの 3時間30分 30点満点 2つの問題に回答する。問題1は4つの設問から一つを選び答案用紙1枚にまとめる。問題2は2つの設問から1つを選び、答案用紙2枚にまとめる。
選択科目:「専門科目」についての問題解決能力及課題遂行能力に関するもの 30点満点 2つの問題から1つを選び、答案用紙3枚にまとめる。

口頭試験

口頭試験は総合技術監理部門を除く技術部門の場合には20分だ。その時間で技術士としての実務能力と技術士としての適格性を試問される。総合技術監理部門の場合は、必須科目に対応した専門知識や応用能力を試問する20分と他の部門と同じように実務能力や適格性を試問する20分の合計40分の口頭試験を受けることになる。これは厳しい。

令和2年度の合格率

日本技術士会のホームページを見ると、過去の受験者数や合格者数が掲載されている。昨年の令和2年度の実績を見ると総合技術監理部門を除く技術部門の合計では17,783名が受験し、2,098名が合格しているので、合格率は11.8%だ。最も合格率が高かった技術部門は船舶・海洋の50%だが、これは受験者数が6名と少ないため飛び値と言える。その次に高いのは金属部門の35.8%と生物工学の27.3%だ。逆に合格率が最も低いのは衛生工学と情報工学の7.6%だ。自分が受験した時の経営工学は合格率が30%程度あったが、昨年は11.8%なので、もしもう一度受験したら厳しいかもしれない(笑)。

令和3年の筆記試験の合格率

令和3年の筆記試験の合格者番号のみが今朝発表された。受験者数は公開されていないので、合格率は推定できない。ただ、昨年の合格者(B)と今年の筆記試験の合格者(C )の比率(C/B)を下の表に示す。この指標が100%を下回っているものが6部門ある。経営工学(72.7%)、水産(85.7%)、航空・宇宙(85.7%)、化学(86.2%)、電気・電子(96.8%)だ。これらの部門の場合に、もし昨年と同等の合格者を輩出させようとすると口頭試験はかなり高い合格率になると期待される。ただし、所定の基準をクリアしなければ合格はもちろんできない。逆に、比率(C/B)が高い衛生工学(175%)、情報工学(139%)、船舶・海洋(133%)、資源工学(133%)、原子力・放射能(133%)は、より厳しい口頭試験になる可能性がある。


(出典:日本技術士会より筆者が計算、総合技術監理部門を除く)

まとめ

難関の二次試験(筆記試験)に合格した方は本当におめでとうございます。今日から、口頭試験に向けてダッシュをかけましょう。やるべきことは、① 再現論文の作成、② 想定問答集の作成(特にQ出し)だ。遅くとも11月中旬までには想定問題を100個とそれに対する回答100個を用意し、最低5回は模擬口頭試験にトライしてほしい。相手にしてくれる人がいなくても、20分での質疑を想定しながらスマホにその様子を録音して、隙間時間にはなんども聞き直して、気になる点を改善して、想定問答のブラッシュアップに努めてほしい。口頭試験の合格率は9割と言われているが、以前も投稿したように。下位1割に入らない戦略か、上位5割に入る戦略か、上位で合格する戦略か、自分はどの戦略で進むのかをまずきめ、スケジュールに落とし込んで欲しい。合格することが目的の人もいるかもしれないが、本来合格はゴールではなくスタートだ。技術士として活動できようにこの機会を通じてプレゼン能力やコミュニケーションを高めて欲しいと思う。また、今回は残念だった人は、この悔しい気持ちを忘れずに次回に向けてぜひ再度トライして欲しいと思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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