技術士の筆記試験でも口頭試験でも、抽象化と具体化を繰り返すと理解が深まる。

はじめに

技術士の二次試験は、総合技術監理部門を除く技術部門において、令和元年より選択式問題がなくなり、全て記述試験となった。記述問題で合格点を取得しようとするには、そもそも担当する技術部門の技術的な知識が必要だが、それだけでは十分ではない。やはり、合格する論文には論理性があること、必要なキーワードが盛り込まれていること、課題解決能力があると判断できること等だ。もっとはっきり言えば、採点者が合格レベルと判断できることだ。

採点者の判断ポイント

では、どのような回答であれば、採点者は合格レベルにあると判断するのだろう。そのポイントは次のような点だろう。

1) 題意を理解していること
2) 出題者が求める課題を理解していること
3) 課題解決のための専門知識(=キーワード)を有すること
4) 課題解決の方法が論理的に提案されていること
5) 課題解決のメリットだけでなく留意点も理解していること
6) 留意事項に対する対応方法を理解していること

読みたくなる答案と読みたくない答案

個人的には、採点者が読みたいと思う答案と読みたくないと思う答案があると思う。その違いは何かというと、これはパラドクス的だが、読まなくても、何を書いているのかが大体理解できて、その内容に興味を感じるような答案が前者だ。後者は、読んでも読んでも何を訴求したいのかよくわからない答案だ。

読みたくなる答案の条件

個人的には、答案の構成が明確であり、答案の骨子がサブタイトルや図表で理解できること。つまり、パッと見ただけで、その答案の骨子を理解できること。そして、興味深いキーワードを散りばめることで、もっと詳細を読みたいと思わせることが重要だ。

マジックナンバーの3

技術士試験の問題では、課題を示し、その課題に対する対応策を述べよというものが多い。その場合には、課題は3つある。それに対する提案は3つある。そして、それぞれの提案にはメリットとデメリットがある。特に留意すべき事項は3つある。そんな風に論理展開をすると理解しやすいし、論理的と理解されやすい。

起承転結は古い。結論・理由・結論が良い。

しかし、課題は3つあると言っても、その課題を起承転結で記述する字数はない。5W1Hを書く余裕もない。大事なことはまずサブタイトルで結論を示すことだ。そして、そのサブタイトルを補足する意味で記述する。この場合に注意すべきは具体性と抽象性だ。

具体的な回答と抽象的な回答

最初から最後まで具体的に書かれると疲れる。くどくなり、わかりにくい。どうも専門的になりすぎる。採点者が門外漢の場合には最悪だ。逆に抽象的なことばかりを書いていても理解できない。結局上滑りして、高得点は期待できない。特に採点者がその分野の専門家の場合には、この回答者は専門知識が不足していると判断されやすい。

ベストミックスを目指す

では、どうするか。それは結論を一言でズバッと示す。そして、その理由を示す。その具体例を示す。だからこうだと結論づける。抽象度を高めることで構造を明確にする。そして、抽象度を高めた内容を具体的に解説していく。具体的に描いた上で、その課題を示し、さらにその課題の抽象度を上げる。ジェットコースターの場合には、上昇したり、下降したりすることでドキドキ感やワクワク感を高める。論文の場合にも、抽象度を上げたり、具体性を上げることで理解度を高める。結果として高得点を得る。そんな戦術が有効だと思う。

モデル化と具体化

コンセプチャル思考の教室では、複雑な事象をモデル化することで抽象度を高める。単純化することで物事の本質を理解する。そして、そのモデル化した内容を現実の世界に投射し、差分を理解して、それを考察する。そして、必要があればモデルを改善していく。そんな繰り返しで現実と本質を理解していく。そんなアプローチが有効だ。
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(出典:コンセプチュアル思考の教室

πモデルと守破離

抽象度を高める作業とそれを具体化する作業のみを行うのではなく、その途中で概念化することを「コンセプチャル思考の教室」ではπの字思考モデルと呼んでいる。また、守破離とは、昨日の投稿でもリファーしたけど、師匠と弟子の関係の中であれば、師匠の教えを「守り」、師匠の教えを「破」って自分の型を創造し、さらには師匠の教えから「離」れて型から自由になる境地にたつまでの3ステップだ。下の図は、この守破離とπの字思考モデルを組み合わせたものだ。すごい。よくこのような思考モデルを思いついたものだと感心する。
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(出典:コンセプチュアル思考

まとめ

ある課題の本質を深掘りするには、具体化する方法と抽象度を高める方法がある。どちらか一方ではダメで、その両方を交互に行うことが効果的だし、そうすることで相手も理解しやすくなる。例えば「なぜ空は青いのか?」という問いに対して、そのメカニズムを説明するだけではピンとこない。夕日は赤いね。雲は白いね。夜は暗いね。なぜだろう。その理由はこうだよねとか説明すると、理解度が一段深まるのではないだろうか。しかし、技術士の回答であれば、「レイリー散乱波の原理」や「光のフィルター機能」、「光の波長と粒子の大きさ」のようなキーワードを交えて説明すると、専門知識を有するとアピールすることができる。易しいことことを難しく語る人がいるが、そうではなく、難しいこと分かりやすく説明する能力を問われていると思う。

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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