技術士二次試験必修科目への回答の肝はストーリー展開

はじめに

令和3年度(2021年度)の技術士二次試験は7月に予定されている。総合技術監理部門の受験生が10日で、それ以外は11日だ。受験者の指導をしていて気づくことも多い。令和2年の合格発表は4月30日にあった(参考)が、今日は今年度の受験生へのエールの意味を込めて観点にレビューしたい。

技術士試験

一次試験

昨年度(令和2年度)は、19,008人が申込み、14,594人が受験し、6,380人が合格した。申し込んだうち実際に受験したのは約77%だ。23%強の人は、都合で受験できなかったり、受験を諦めた人だ。受験者のうち約44%が合格した。JABIの認定資格を保有する人は、一次試験を免除される。

二次試験

昨年度(令和2年度)は、25,603人が申込み、20,365人が受験し、2,415人が合格した。申し込んだうち実際に受験したのはやく80%だ。20%弱の人は、都合で受験できなかったり、受験を諦めた人だ。受験者のうち約12%弱が合格した。一次と二次の合格率を単純に掛け算すると、5.2%となる。やはり難関試験だ。

必修科目

平成の時代は、必修科目は選択肢の問題だった。令和元年からはこの必修が筆記式に変更した。今年は3回目なので、ある程度傾向と対策を取れる。しかし、だからこそ、しっかりと基本を抑えておかないと合格は難しい。技術士試験は毎年変動はあるけどほぼ同様の合格率なので、どうしても採点も相対評価になってしまう。ストレート合格を目指すのであれば、基本を抑えながらも、他の受験生に比べて輝く要素が欲しい。

各々の対策ではなくエンジニアリング問題

令和2年の必須科目は2つの問題からの選択だ。例えば、I-1-2を見ると、「地球温暖化のテーマだけど、3Rや再エネ、省エネ、創エネ、畜エネなどの各々の対策にとらわれることなく、エンジニアリング問題としての観点からも、総合的な『幅広い予防的アプローチ』を取ることが求められている。」と明記されている。温暖化をテーマにすると、上っ面の評論家的な論文が多いのだろう。

大事なことは想い

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)は2014年3月に制定されている(詳細は資料を参照)。つまり、技術士試験は受験生が次に示す7つのコンピテンシーを満足しているかを審査する試験だ。説明文は若干要約している。しかし、最も大事なことは熱い想いではないだろうか。
1) 専門的学識:専門知識及び我が国固有の法令、制度、社会・事前条件に関する専門知識と応用能力。
2) 問題解決:複合的な問題に関して相反する要求事項を顧慮した解決策を合理的に提案し、改善する能力。
3) マネジメント:品質、コスト、納期、リスクを理解し、人員、設備、金銭、情報等の情報を配分する能力。
4) 評価:業務の成果、波及効果を評価し、さらに改善する能力。
5) コミュニケーション:口頭や文書を通じて明確かつ効果的な意思疎通を行う能力。異文化を理解して協調する能力。
6) リーダシップ:デザインと現場感覚を持ち利害関係者と調整する能力やプロジェクトを遂行する能力。
7) 技術者倫理:公益の増進を図り、技術士の使命を理解し、倫理的に行動する能力。

問われるストーリ展開

個人的な理解だけど、回答を読んでもよく分からないものや読む価値がないと判断されるものは評価Cだ。それなりに書けていて、読んだけど、主旨がよく理解できないものは評価Bだ。一見して主旨を理解でき、読みたくなり、実際に読んでみると「なるほど!」と納得できるものは評価Aだ。ストレート合格を目指すなら評価Aが必要だ。そのためには、ストーリー展開が重要だ。

得意な土俵に持ち込む

令和2年の必修科目(1-1-2)では地球温暖化をテーマに設定しているので、CO2の排出抑制やCO2の吸収(CCS)やCO2を活用したメタンガスの創出技術などを書く受験生が多い。しかし、これらのテーマが受験生の専門ではないためにどうしても上っ面の評論家的な記述になる。そうではなくて、受験生の専門分野得意分野に持ち込むことが評価Aを獲得するためのコツだと思う。

守るべきポイントと高得点のコツ

評価Aを獲得するには守りと攻めの両方が重要だ。守りでは、設問の主旨にそって回答することや、適切な論理構成、適切なキーワードの活用などだ。当たり前のことに聞こえるがこれがなかなかできていないことが多い。攻めでは、設問3あたりで「なるほど」と思わせる演出や、タイトル・サブタイトル・図表などを見るだけで概略を理解できる工夫、そして、その図表の効果的な活用だ。ロジック=文章のみで訴求してもなかなか伝わらない。やはりイメージ=図表を合わせることが重要だ。ある受験生は、長さ10mぐらいの橋梁をイメージし、口頭試験の面接官は100m規模の橋梁をイメージしていて、質疑応答が全然噛み合わずに不合格になった悲劇がある。やはりイメージは大事だ。
図表1 守るべきポイントと高得点のコツ

ストーリー展開のヒント

どのようなストーリを期待しているかは前文にヒントがある。今回も、電気自動車(EV)や東日本愛震災、ライフサイクル評価などのキーワードがあり、このようなキーワードからストーリー展開するのは無難な方法だ。もしくは、過疎地の農村で少子高齢化で後継者の問題や超獣被害の問題に悩んでいる人々に対して、センサーやドローンや小規模水力発電などのICT技術を活用して解決することで森林や農地を守りながら公益に資するようなストーリーなら興味深いキーワードを使いながら600字x3枚にまとめることも可能だろう。東京電力とゼンリンは送電線のルートをドローンの飛行ルートとして活用するドローンハイウェイ構想を提案している。図表2に示すようなドローンの充電のためのデポ基地まで提案している。このようなアイデアを加工・発展する方法もあるかもしれない。創意工夫して、複雑な問題や相反する課題を整理し、利害関係者と調整しながらプロジェクトを完遂する能力(=コンピテンシー)を有する受験者であることを示すことが大事だと思う。
図表2 ドローンハイウェイ構想のデポ基地

参考:ドローンのハイウェイ構想

まとめ

受験生を指導していてやりがいを感じるのは、路頭に迷った状況から、希望が見えた状態に持ち上げた瞬間だ。受験生は何をどのように書けば良いかが分からず五里霧中の状態だったりする。この方向で書けば良いと進べき道を示し、それを理解したときに受験生の表情や声の張りが一変することがある。そんな受験生にはぜひ合格して欲しいと思う。頑張れ!

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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