はじめに
2017年12月に自分のはてなブログで「メディアの栄枯衰退:新聞の存在意義」を投稿した。あれから4年も経過するので、その後の変化などを見てみたいと思った。メディアには新聞もテレビもラジオもネットもある。スマホなどによる情報収集や動画鑑賞などは増加傾向にある一方で、新聞の発行部数の凋落は著しい。この辺りを次の3回に分けて整理してみたいと思う。
その1:危機的に減少する新聞の存在意義(⇨ 今回)
その2:メディアの状況(次回)
その3:新聞業界の課題(次々回)
その4:新聞業界の生き残り戦略(次々々回)
新聞の凋落
消滅の危機に直面する新聞発行部数
戦中に発行部数を伸ばした新聞各社は、戦後には夕刊のみを中心に発行部数を減少した。また、1957年にはカウント方式の変更でまた夕刊のみを中心に減少し、同時に朝夕刊セットが始まる。その後、1997年には5,377万部を記録した。これは国内での発行部数のピークとなる。これが2020年10月には3,509万部まで、減少した。1997年の指数を100とすると、2020年の指数は65.2だ。そして、問題はこの減少傾向が止まる気配がないことだ。最近では、新聞を購読しない世帯も増えているため、学校が教材として古新聞を持ってくるように言うとわざわざコンビニ等で新聞を買って持参するという話もある。
(出典:Garbage News)
減少する夕刊部数と増大する余剰記者
下の図は2009年当時の報道資料だが、当時は夕刊を廃刊する新聞社が、毎日新聞北海道版、秋田魁新報、名古屋タイムズと続いた。夕方以降の情報源は、ネットで十分と判断する読者が若者を中心に増加したことが背景にある。これと同時に、社内失業する記者が増大しているという。朝日新聞では、2009年当時で2割ほどの記者が社内失業状態に陥っているという。
(出典:facta)
主要全国紙の発行部数
発行部数が最も多いのは読売新聞だが、2017年前期には883万部を保っていたが、2020年8月には742万部までやく16%減少している。朝日新聞も同様に624万部から499万部まで約20%減少した。自宅では購読している日本経済新聞は、271万部から207万部に約24%減少している。ただ、これは押し紙を含んでいる。例えば、朝日新聞は500万部を切ったと報道されているが、読者に配達されないまま廃棄される押し紙の部数を差し引いた実売部数は300万~350万部程度との見方が強いという。押し紙の実態はなかなか正式な数字には現れないのが悩ましい部分だ。
(出典(左):manken、出典(右):Garbage)
不動産事業で支えられるか
新聞各社は発行部数を減らす中で経営は大丈夫かと心配になる。例えば、朝日新聞の2020年9月中間連結決算によると、下の図(左)に見るように売上高は403億2100万円と前年同期比22.5%の減となり、朝日本体では419億800万円の赤字となった。新聞の発行部数の減少は、新聞広告売上の減少の原因となるため、新聞事業の売上はさらに減少する傾向にある。新聞事業の損失を補填するのは、不動産事業だ。新聞各社は都心の不動産などで収益を上げている。朝日新聞の平成20年4月から9月の中間連結会計報告によれば、メディアコンテンツ事業の6.1億円の赤字を不動産事業の12.2億円が補填して6億円の利益を計上している。ただ、朝日新聞の場合には、2021年3月期に419億円もの純損失を計上し、渡辺雅隆社長が引責辞任を表明している。不動産事業で収益を保つという構造は読売新聞や日本経済新聞でも起きている。しかし、新聞事業の更なる減益を補う力はない。このため、2019年に産経新聞と毎日新聞が希望退職者を募集し、2021年1月には朝日新聞が希望退職者の募集を開始した。2023年までには300人規模で募るようだ。10年前に実施した早期退職では募集年齢が40歳、退職金の上限が7000万円だったが、今回は45歳以上で上限が6,000万円という。満額もらえる人は幹部の少数というが、それにしてもまだまだ恵まれていると言える。抜本的な収益事業を育てることができなければ、メディアの人員整理は加速するしかない。
(出典(左):yahoo news、出典(右):日本再興)
正念場を迎える電子版
スマホ等で簡単に情報を検索できる時代に新聞各社は電子版の投入で対応しようとしている。しかし、正直言って、新聞やテレビの情報よりも、ネットの情報の方が早いし、読ませ方が上手だ。日経新聞の電子版も頑張っている方だけどここにきて伸び悩んでいる。自分も電子版が始まったときには紙と両方を購読していたが、現在は紙面のみだ。なぜかといえば、解約するときに大変だったためだ。操作性もかなり改善しているようだけど、新聞の常識から逸脱できずに停滞しているような感じを受ける。
(出典:media innovation)
新聞各社の電子版 vs NewsPicks
下の表は、日本経済新聞と読売新聞と朝日新聞の電子版の比較だ。日経新聞の宅配版4,900円に対して、電子版4,200円だと15%の割引だ。さらに、日経電子版は、紙媒体の約3倍の記事が読めるなど、コンテンツの充実にも力を入れている。必要な記事だけを自動収集するMyニュースなども便利だ。国内ニュースでは取材する記者の名前を明記することは少ないが、海外からのニュースでは貴社の名前が明記されることが多い。記者も一人一人が個性を出して、付加価値を高める必要があり、その意味では記者の名前が明記することがデファクトになっても良いのではないかと思う。ただ、それでも個人的にはNewsPicksなどのコンテンツの方が付加価値が高いし、オリジナリティの高い記事が魅力だし、月額料金も合理的だ。学生割引ならなんと月額500円だ。NewsPicksに負けないように、新聞各社は新聞記者が個の実力をもっと発揮できるような仕組みに変革してほしいと思う。
(出典:impress watch)
まとめ
日本経済新聞の「私の履歴書」を愛読して何年経つのだろう。毎朝、次の展開はどうなるのかといつも楽しみにしている。私の履歴書以外の記事も日経の記者が頑張って取材しているけど、NewsPicks等に比べると記者の裁量が少ないように感じる。もっともっと個性溢れる記者が名前を出して堂々と論説を張ってほしいと思う。なお、新聞各社はテレビ各社の親会社でもある。次回は、テレビやラジオやネットなどを含めたメディアの観点で最近の状況を振り返ってみたいと思う。
以上
最後まで読んでいただきありがとうございました。
拝