メディアの栄枯衰退その2:デジタルメディアの利用は若者も中高年も加速中。

はじめに

前回は新聞業界の状況を概観した。今回は、新聞だけではなく旧メディアやデジタルメディアを含めてメディア前半を概観したいと思った。メディアの利用状況は、年代によっても大きく異なっているし、ここ1年でも利用状況が大きく変わっていることに改めて驚いた。

その1:危機的に減少する新聞の存在意義(前回)
その2:メディアの状況(⇨ 今回)
その3:新聞業界の課題(次回
その4:新聞業界の生き残り戦略(次々回

メディアの状況

メディアの接触時間

下の図は、博報堂DYメディアパートナーズがメディア定点調査2016でメディアの接触時間について2006年と2016年で比較したものだ。もっとも多いテレビは171分から153分と10.5%減少している。新聞は32.2分から20.4分(構成比5.2%)へと36.6%減少している。逆に、ネット利用(パソコン+タブレット+携帯・スマートフォン)は87.2分から176.6分(構成比45%)へと約2倍に増加している。f:id:hiroshi-kizaki:20171204210921p:plain
(出典:博報堂DYメディアパートナーズ

諸外国でのメディア別の広告費

下の図は、Warc dataに掲載されているメディアの広告費(2010年)の18ケ国の比較を筆者が少し編集したものだ。新聞広告がもっとも多かったのがアイルランドでなんと47%で日本は16%だった。テレビ広告がもっとも多いのはブラジルでなんと68%で日本は43%だった。ネット利用がもっとも多かったは英国の29%で、日本は16%だった。日本の構成比は、米国の構成比に近いが、Outdoorの比率が高いのと、広告のネットへのシフトが米国に比べると遅れているようだ。

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(出典:Warc data

日本でのメディアの接触時間の推移

下の図は、2020年7月に発表されたメディア環境研究所によるメディア定点調査だ。同社は毎年1月から2月にかけて調査を実施している。2006年から2018年にかけては、一貫してテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの旧メディアの接触時間が減少し、スマホを中心としたデジタルメディアの接触時間が増大していることがわかる。ただし、2019年にはテレビが153.9分と前年から6.8%増加したり、2020年にラジオが28.9分と前年から15.6%増加するなどの若干の変動が見て取れるが、これは誤差の範囲だろう。2020年のパソコン、タブレット端末、携帯電話/スマートフォンの合計を見ると212.5分であり、全体の51.6%を占めている。接触時間で見ると2020年の新聞は14.9分であり、これは2006年の約64%だ。メディアの接触時間は年代によっても大きく異なることを考えると、デジタルメディアへのシフトは今後もさらに進むだろう。

(出典:Screens-lab

年代別のメディア別の平均利用時間

下の図は、GarbageNewsが2019年に調査した結果(右)と2020年に調査した結果(左)を対比したものだ。わずか1年の間に、インターネット利用が急激に増大している。20代が1.4倍、10代が1.3倍、30代が1.2倍と若者を中心にデジタル化が加速しているのは理解できるが、それにも増して60代が1.5倍と急激に増大しているのが特徴だと思う。テレビは10代や60代が増加し、20代、30代、50代が減少している。また、60代では22.5分から23.2分に微増しているが、これを除くと存在感が低いのが新聞だろう。

(出典:yahoo news)

ジャーナリスト人数と新聞購読部数

新聞の発行部数はこれまでも見たように減少の一途を辿っているが、諸外国に比べると日本は新聞が大好きだ。下の図の右(青)部分は2008年時点の日刊新聞の購読部数の国際比較だ。これではなんと日本が5100万部で一位であり、2位が米国の4900万部、ドイツ、英国、韓国と続く。一方、下の図の左(オレンジ)の部分はジャーナリストの人数で米国が5.5万人とダントツに多く、ついで日本が2.1万人で、ドイツ、英国、スイスがなんとか1万人を超えている。これらはOECDが各国の資料や世界新聞協会(WAN)からまとめたものだ。日本でも新聞離れが加速しているが、海外諸国は既にレアなメディアなのかもしれない。昭和の時代の話だけど、西新宿の地下通路に浮浪者が集まっていたが、日本経済新聞などを読んでいることに日本人は驚かないけど、海外の人はびっくりするようだ。海外で新聞を読む人はかなりのインテリ層に限るのかもしれない。
(出典:社会実状データ図録

ニーズの変革

増大する定額制サービス

メディア環境研究所の調査レポートには、下の図のように2016年から2020年にかけてのサービスの利用率の変遷が示されていた。着実に増加しているのは、定額制の動画配信サービスや定額制の音楽配信サービス、定額制の電子雑誌サービスなどだ。定額制なので割安感を感じるのかもしれない。また、利用率がダントツに高いのは、YouTubeを中心とする動画共有・配信サイトである。昨今ではTickTockなども増えているだろう。

(出典:Screens-lab)

Z世代のソーシャルメディア利用率

朝日新聞社が100%出資する新しいコンテンツマーケティング会社であるサムライトが2021年8月から9月にかけて、10代及び20代を対象にショート動画の利用状況を調査した結果を下の図に示す。利用率のトップはYouTubeの828.%であり、2位はLINEの81.4%、3位はTwitterの68%だった。個人的には、TikTokにはまってしまうことが多いが、この調査でもTikTokを週5日以上視聴している人が64.7%まで達した。TikTokはショート動画なので隙間時間で楽しめるはずだが、中毒性が高いので、油断していると30分、1時間と見てしまうことがある。TikTokの爆発力は恐るべしだ。

(出典:Yahoo News)

マルチスクリーンのユースケースの変遷

メディア環境研究所開催のセミナーでは、マルチスクリーンの利用方法が、2016年当時と2019年では進化していることに言及していた。2016年当時は大型画面でテレビ、YouTubeなどの動画配信はタブレット、スマホではゲームと役割分担していて、見るというよりは流していた。しかし、2019年には、はずすリスクを避けるためにメインの画面とサブの画面を使い分けていると指摘する。例えば、タブレットで新しい番組を見るけど、面白い場面になるまではサブ画面で以前見たコンテンツを楽しむという。ラジオも効果的に活用している。確かに、自分も朝起きたらECHOに天気予報や時刻、運勢占いなどを聞き、暖房をつけたらスマホでLINEやメールの未読をチェックしながら、タブレットでYouTubeをかけると同時並行的に活用している気がする。

(出典:メディア環境研究所

まとめ

今回はデジタルメディアを含めてメディア全般について概観した。年代による利用の違いは以前から指摘されていたが、デジタルメディアの利用の増加率では60代が最も多いことにびっくりした。デジタルメディアの普及はさらに今後も加速するだろう。そのような状況のもとで新聞各社はどのようにして生き残り戦略を描くのだろうか。次回はそのような観点で投稿したい。

以上最後まで読んでいただきありがとうございました。拝
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