はじめに
昨日も東京大学の講義のまとめの中でロボットについて投稿したが、今回は増大する協働ロボットやサービスロボットの展望やユースケースを紹介したい。アニメやSFのようにロボット自身が思考をするようなロボットはまだ考えにくいが、遠隔で操作するロボットや、ある程度決められたルールの中で自動的に物や人を搬送するロボットは今後伸びるのだろう。そして、遠隔操作の知見が蓄積されれば、人が操作するよりも正確で迅速な動作が可能な自律型ロボットが出現するだろう。しかし、まだまだ万能ではなく、特定の規定した範疇の動作にとどまる。シンギュラリティが2045年といわれるが、その頃には確かに汎用の知的AIや知的ロボットが出現する可能性はあると思う。楽しみのような怖いような複雑な期待感がある。
ロボットの市場
協働ロボットの市場予測
人と一緒に働く協働ロボットの世界市場規模は、2030年には2230億円と矢野経済研究所は予測している。2020年見込みが898億円なので、10年で2.4倍に成長すると言う予測だ。産業用ロボットは工場のラインで安全を確保するために人と分離した状況で固定的に使われてきた。しかし、近年では人との共同作業を前提とした新たな協働ロボットが注目されている。テレビなどでもお蕎麦屋さんでお蕎麦を茹でるロボットとか、回転寿司でシャリを握るロボットなどが報道されていたが、これらも協働ロボットといえる。小型化、軽量化、教育の容易さなどが進み、価格のハードルが下がれば、中小企業などでも一気に利用が広がる可能性がある。協働ロボットの関連部品のコストが削減できれば、2030年頃の協働ロボットは、2020年の価格に比べて30%前後下がる見通しだ。
(出典:ロボスタ)
業務・サービスロボットの世界市場
富士経済では、業務・サービスロボットの範囲をより広範囲にとらえ、2025年の世界市場は4.5兆円規模と予測する。2019年見込みが1.9兆円なので、6年で2.3倍に増加すると言う予測だ。下の図に示すように、2025年には、物流・搬送用ロボットが2兆円規模となり、家庭用の1.4兆円を抜くと見ている。深刻化する人手不足や人件費の高騰を受けて、ロボットの市場拡大が続き、特定の業界だけではなく、医療・介護、建設、インフラ点検、物流・搬送、オフィス・店舗、農業などのさまざまな分野でのニーズが高まっている。パワーアシスト・増幅スーツは医療・介護のみならず製造業,物流,建設など幅広い分野で採用が広がると推測する。スマートスピーカー、家庭用清掃ロボット、パーソナルモビリティはなどの市場は2018年時点ではそれぞれ1,000億円を超える市場規模である。建設・レスキュー・インフラ点検用ロボットは現場における人手不足解消や省人化、業務効率化、危険な場所の作業代替などを目的にロボットの導入が進むと見られている。物流・搬送用ロボットでは自動搬送台車(AGV:Automatic Guided Vehicle)が市場をけん引している。
(出典:OPTRONICS)
サービスロボットの市場推移
サービスロボットの国内での市場では、2019年度で60億円、2020年度で95億円、2021年度は146億円市場へと毎年約1.5倍に拡大している。特に、法人向けサービスロボット市場全体は、2019年度で59億円。2020度95億円、2021年度は146億円を見込んでいる。特に、コロナ禍の影響により消毒・殺菌ロボット需要は、病院に加えて商業施設やオフィスビルなど様々な施設で利用拡大している。2020年度以降は配膳ロボットが急速に普及し、人手不足と非接触・非対面需要増加を背景に、飲食業で導入が進んでいる。2021年度以降は移動型テレプレゼンスロボットが普及し、店舗案内や接客、院内巡視など、幅広い業種で利用が拡大すると予測されている。
(出典:MIC)
各種ロボットの開発推進
産業用ロボット
ロボットの活用に向けては全国で知恵が絞られている。例えば、広島では、2020年12月に「第4回 ひろしまAI・IoT進化型ロボット展示会」が開催され、技術研究組合 産業用ロボット次世代基礎技術研究機構(ROBOCIP)の榊原伸介理事長が講演した。ロボット分野に関わる人材の拡大や研究の裾野を広げ、5〜10年後を見据えた「種まき」の場として技術革新や普及障壁の引き下げを図っている。参加企業が抱える課題を東京大学や東京工業大学と共同研究し、研究成果をさらに各社が持ち帰り、応用研究や独自の製品開発などの実用化につなげたい考えだ。
(出典:ロボスタ)
遠隔操作ロボット
SFの世界では自律的に動作する自動ロボットが活躍するが、その前段として遠隔操作ロボットが注目されている。手術ロボットも遠隔操作ロボットのパイオニア的存在だ。最近では、センサー技術やアクチュエータ技術が進化しているため、例えばコンビニで在庫の補充を遠隔ロボットを活用して行うチャレンジもある(出典)。ベンチャー企業のTelexistenceは2020年9月に商品陳列の作業を遠隔で行うロボット(Model T)を開発して、ローソンの店舗でトライした。捜査者はVRのゴーグルとVRコントローラで遠隔で操作して、飲料やおにぎり、弁当などの陳列商品を補充する。
(出典:XTECH)
分身ロボット
渋谷ツタヤでは、分身ロボットOriHimeが接客にトライした。操作するのは、難病や重度障害をもつ人や、子育てなどで外出が困難な人だ。これまで労働が難しかった人が分身ロボットを操作して、分身ロボットカフェDAWNが飲み物等をお客様に配達する。カフェの店舗では、バックヤード業務が60%、フロア・キッチン業務が40%と言われている。高さ23cmの分身ロボットOriHime四台、高さ120cmのOriHime-D三台をシフト勤務で対応するパイロット約30名で分担しながら操作している。
(出典:シブヤ経済新聞)
自動配送ロボット
物流・搬送ロボットも有望だ。京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)は2021年8月24日まで、自動配送ロボットのシェアリング型配送サービスの実証実験を、北海道石狩市の石狩湾新港地域の車道で開始した。無人の自動配送ロボットが車道を自動走行する試験は国内初だという。ロボットは無人で自動走行するが、事務所から走行状態は常に監視し、自動回避が困難な状況では遠隔操作に切り替える。実証実験では、対象地域内で複数の事業者が自動配送ロボットをシェアリングする。このため、1台の無人自動配送ロボットが効率的なルートで商品の集荷や配送を実施する。自動配送ロボットには複数サイズのロッカーが20個搭載され、荷物の預け入れや荷物の受け取り、ロッカーの開閉などは、スマートフォンで行う。車体上部にはセンサーなどが収納されていて、配送ロボットの右側面には小型ロッカーが15個、左側面には大型ロッカーが5個搭載されている。
(出典:自動運転LAB)
遠隔育児支援ロボット(ChiCaRo)
新米ママの悩みを解決しようと遠隔育児支援ロボットChiCaRoが開発された。母親や離れて住むおばあちゃんがChiCaRoの画面を通じて子供を見守り、話しかける。食事をする時間も、子供と会話できるので安心だ。少しの時間でも、育児をバトンタッチするができれば助かる。ChiCaRoは育児奮闘中の親の願いをかなえるロボットを目指している。「離れて住むおばあちゃんに子どもと遊んでいてもらえるかもしれない!」
「一緒に住んでいなくても、みんなで育児できる、遠隔協同子育て文化を創ろう!」ChiCaRoを開発することが目的ではない。ChiCaRoを通じて、親も子供も家族も笑顔溢れる生活を実現することが目的だ。
(出典:遠隔育児支援ロボット)
まとめ
協働ロボットやサービスロボットの市場が毎年1.5倍で増大したとすると、10年でやく60倍となる。それぐらいの市場の伸びは十分にあるだろう。仮に現状で1000億円だとして、10年後には6兆円。20年後には360兆円。今後の花形市場はロボットだろう。AIの技術開発では日本は世界に遅れをとっているといわれるが、サービスロボットでは知恵と経験を生かして存在感を示すことができるのだろうか。ガソリン自動車を製造販売していた会社は、今EVに向かっているが、本当はロボットに向かうべきではないか。その意味ではホンダがアシモを開発したのは画期的であり、それから撤退したのは残念だ。ぜひアシモ2やアシモ3の開発やリリースにチャレンジしてほしいと思う。
以上
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
拝