科学技術の功罪:ロボトミー手術、マーガリン、化学肥料、優生学を考える。

はじめに

科学技術の発展は、人々の苦難や問題や課題を解決し、少しでも人や社会の役に立てたいと頑張って研究して実践しているものだ。しかし、何事にもメリットとデメリットがある。そして、多くの場合はメリットがデメリットよりも大きいので活用される。しかし、最初は分からなかった問題や課題がどんどん大きくなるような悲劇も過去に人類は数多く経験している。今日はそんな悲劇に繋がった失敗について、4つの事例をレビューしてみたい。

ロボトミー手術

これは今日初めて聞いた言葉だ。ロボトミー(lobotomy)とは、精神障害を外科的手術で治療する手法だ。前頭葉の白色物質を切断する手術によって精神障害が改善する患者もいたが、視床との接続が損なわれ、精神機能が狂ってしまい、合併症や重篤な症状が頻繁に発生したため、使用当初から論争の的となった。現在では患者の権利を守るため、非人道的な治療法として否定されている。しかし、この手術の発案者であるポルトガルの神経学者アントニオ・エガス・モニーツは、「特定の精神病におけるロイコトミーの治療価値の発見」により1949年のノーベル生理学・医学賞を受賞している。ロボトニー手術では、脳の前頭葉の前部である前頭前野との結合がほとんど切断される。1940年代初頭から1950年代にかけてロボトミー手術は劇的に増加した。1951年には米国で2万件近く行われたが、1951年の研究では、アメリカのロボトミー患者の60%近くが女性であった。

(出典:ブラックアジア

マーガリン

子供の頃は、食パンをトースターで焼いて、マーガリンやジャムをつけてよく食べていた。給食でもマーガリンがついていた。バターは動物性脂肪から作られるが、マーガリン(Margarine)は植物性油脂から作られる。ただ、植物性油脂は常温では固体にならないので、固めるためトランス脂肪酸が添加されていて、このトランス脂肪酸が健康に良くないと批判されている。しかし、最近のバターはパーム油などを使っているので大丈夫とメーカーは解説するが、本当に大丈夫なのだろうか。そもそもマーガリンは、オリーブオイルを意味するOleumと、光沢のある真珠を意味するMargariteの造語oleomargarineと命名されたが、略してマーガリンと呼ばれるようになった。

(出典:明治

化学肥料

肥料は米語ではfertilizer、イギリス英語ではfertiliserと言う。肥料は、植物の栄養分を供給するための土壌や材料であり、天然の肥料と合成由来の化学肥料がある。自分が子供の頃の昭和30年代には日本の田圃にも肥溜めがあり、人間が排出した屎尿を貯蔵し、下肥(しもごえ)してためていた。間違ってその中に落っこちて大変な目にあったような記憶がある。しかし、最近は肥溜めは目にしない。ある地域で、肥溜めを復活させようと挑戦したが、植物が枯れてしまった。その原因は薬漬けになっている人間の糞便は肥料に使えないと言うことだった。最近では、低農薬や無農薬の野菜が注目されているが、肥料にはあまり注意が払われないのだろうか。化学肥料は主に窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の3つの栄養素を中心に、微量栄養素として岩塩などの補助食品を加えている。化学肥料は、大規模な工業的農業と大量の作物収量を可能にしたが、土壌そのものが疲弊する課題に直面する。植物が育つ土壌には生物性、物理性、化学性の3大要素が重要だ。しかし、菌や虫を徹底的に殺す農薬は生物性に壊滅的なダメージを与える。化学肥料では微生物の餌となる有機物が存在しないので、土壌の保水性や物理性が損なわれる。現在の土は全てミミズの糞でできていると言われている。ミミズなどが生きていけない土は土壌の力を失い、大雨による土砂崩れや、砂漠化に進み、最終的には何も育てることのできない死んだ土地となる。
(出典:日本肥料アンモニア協会

優生学

優生学(Eugenics)とは、歴史的に劣ると判断された人々や集団を排除したり、優秀だと判断された人々を促進したりして、人間集団の遺伝的質を改善しようとする一連の信念や実践である。紀元前400年頃にプラトンが選択的交配の原理を人間に適用することを提案しており、この言葉よりも概念は古い。優生学の原理は古代ギリシャ時代から実践されていたが、現代の優生学の歴史は19世紀後半にイギリスで生まれた大衆的な優生学運動から始まっている。日本では、戦後1948年に優生保護法が成立した。この用語に違和感を感じたのは、多分日本人には母親と赤ちゃんのどちらが優生と言う概念がないためだと思う。以前、「少子化対策の提案」を投稿したときに、日本では優生保護法の成立とともに中絶を遂行する産婦人科が増え、まだ日本に復帰していなかった沖縄では保育所が設置された。日本は少子化に進んだが、沖縄では子沢山の道に進んだ。現在は、少子化が問題とされているが、その原因を作ったのは少子化を望んだ(もしくは仕掛けられた)日本のかつての政策を反省すべきだろう。そして、実現すべきは安心して子供を産める環境と社会の整備だろうと思う。

(出典:Yahooニュース

まとめ

科学技術が社会に与えるメリットよりもデメリットが大きくなった事例はこれだけではない。大事なことは、メリットをさらに大きくする努力とデメリットを小さくする努力だ。そして、デメリットを解消しようとすると別の問題が生じることが多い。解消できないリスクを残留リスク、解決策のための新たに生じたリスクを二次リスクと呼ぶが、これへの対応が重要だ。現代でも、賛否の分かれる新技術は多い。このブログでもリニア新幹線の功罪について投稿したが、デメリットを超えるメリットを本当に出せるのだろうか。また、新型コロナに対応してmRNAの技術を活用したワクチン接種が進んでいるが、これの弊害をどこまで抑え込めるかは今後の課題だろう。植物生産では、遺伝子組み換え技術に対しても功罪の論議がある。

まとめ

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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