チーズの起源は偶然?必然?チーズは認知症や高血圧の抑制に効果ある。楽しく美味しく健康に。

はじめに

冷蔵庫を開けるとチーズと焼豚が残っていたので、それらを軽く摘んで、赤ワインを少し頂いた。飲酒は毎日するわけではないけど、時々思った以上に仕事や投稿が進んだ時には軽く頂く。以前、ワインの起源については投稿したので、今後はチーズの起源やチーズの効用などについて調べてみたいと思った。ここでも謎のシュメール文明が出てきて関心を持った。また、血液をサラサラにする効用もあるようだ。そんなことを考えながらまたワインとチーズを楽しみたい。

チーズの起源

チーズがどこでできたかは定かではない。約6,000年前には地中海全域でミルクが生産されていたようだが、それ以前の約8,500年前には古代人が現在のトルコ北西部で家畜の乳を搾っていた。しかし、この地域に住んでいた古代の人々は子供の頃から牛乳を消化できなかった。ペンシルバニア州立大学の環境考古学者であるサラ・マクルーア氏によると、「チーズを作るために搾乳したのではないか。発酵させることで乳糖を減らし、おいしくて栄養価の高い食料源としたのではないか」と結論つけている。アラブの旅人が羊の胃袋の水筒にミルクを入れて砂漠を旅して目的地に着くと、ミルクが奇妙な白い豆腐のようなものになっていて、これが美味しいと発見したという偶然説もあるが、ミルクに耐性のない大人がミルクを水筒に入れるとは思えない。いずれにせよ、チーズはメソポタミア地域(チグリス川、ユーフラテス川流域)で生まれ、そこを起源として東西に広がっていったようだ。それぞれの気候や風土に合わせて地域色の強い独特のチーズへの進化したようだ。

(出典:雪印

新石器時代の環境変化

おおよそ3万5,000年前に始まり、紀元前1万8,000年ごろにピークを迎えた最後の氷河期の間、北半球は氷河に覆われていた。今から1万7,000年前には氷河期の温暖化が始まった。紀元前1万2,000年ごろには野生穀物が生育するようになり、狩猟採集集団ナトゥフ人が登場する。ナトゥフ人は、紀元前1万2,500年から9,500年にかけてレバントに存在した亜旧石器時代の人類だ。定住あるいは定住に近い生活が行われていたという。世界最古の都市とされるイェリコはヨルダン王国の北西部にある古都遺跡である。ヨルダン川渓谷にあり、農耕遺跡が発掘されて、穀物、特にライ麦の計画的な栽培が、ナトゥーフ文化期後半にテル・アブ・フレイラにおいて行われていた。紀元前1万1,000年から9,500年の最後の寒冷化サイクルでナトゥフ人は姿を消した。紀元前9,500年前後には100年で7度も年間平均気温が上昇した。氷河が溶けて海進も進んだはずが、その後気候が安定化した。この急激な温暖化が実は農耕文明が開花するための条件だったのではないかと個人的には考えている。実際、紀元前9,500年から8,500年の間に肥沃な三日月地帯が始まった。山には山羊や羊が住み着き、牧畜化が進んだと想定される。チーズの起源を紐解くには、その材料となるミルク、さらにはそのミルクを供給する山羊や羊の起源が鍵だった。

アナトリア(紀元前7,000年から6,500年)

チーズを作るには、ミルクの製造に加えて、ミルクを集めて保存し、凝固させて、できた凝乳(ぎょうにゅう:カード)と乳漿(にゅうしょう:ホェイ)を分ける容器が必要だ。羊や山羊からミルクを大量に出すように品種改良がなされた痕跡が紀元前6,500年ごろの西部アナトリアに残っている。この時代の成人はミルクを飲むと激しい下痢を起こすが、乳幼児はミルクのラクトース(乳糖)を消化するラクターゼがあるので、ミルクを消化できるためだ。紀元前7,000年から6,500年には高温加工の技術が発見された。また、陶器も作られ、余剰ミルクを集めて、陶器で保存し、発酵させ、凝固すると、成人でも消化できるもの(=チーズ)が出来上がったようだ。この辺りは、ポール・キンステッド著の「チーズと文明」に詳しく書かれている。

ダルマチア海岸(紀元前5700年ごろ)

クロアチアのダルマチア海岸から出土した土器の残渣に含まれる脂肪酸を安定炭素同位体で分析したところ、紀元前5,700年には地中海でチーズが作られていたことが分かった。紀元前5200年頃にはFigulinaの土器にミルクが多く含まれ、Daniloの土器には肉が多く含まれ、Rhytaにはチーズが含まれていた。前述したように初期の農耕民族には乳糖不耐症が多かったが、幼い子供たちは離乳後まで栄養豊富なミルクを摂取することで乳幼児の死亡率が低下し、人口を増やしていったと想定される。ダルマチア地方からは、新石器時代の大きな鍋「ライタ」から古代のチーズの痕跡が残っていることが分かっている。フィグリナと呼ばれるオレンジ色の陶器は、粒子の細かい粘土で作られている。穴の開いた3つの土器から、ミルクや発酵した乳製品と思われる痕跡が発見された。

(出典:NCBI)

ポーランド・スウィデリアン文化時代(紀元前5500年ごろ)

チーズは古くからある食べ物である。牛などの反芻動物の胃でつくった水筒には、ミルクを固める作用のある酵素レンネットが含まれる。このため、羊や山羊のミルクを運搬するところでは自然発生的にチーズが出来上がるので、どこがチーズづくりの発祥の地を決めることができていない。中欧のポーランドでは紀元前5500年ごろのスウィデリアン文化時代におけるチーズづくりの道具が発見されており、チーズ製造の証拠となっている。

シュメール文明(紀元前3100年ごろ)

紀元前3100年ごろになるとサハラやメソポタミアの牧草地帯でエジプト人とシュメール人によって酪農が営まれていたという有力な証拠が存在する。チーズづくりがヨーロッパで古くから定着していたことはヘレニズム初期の神話からも読み取ることができる。シュメール人たちの間ではチーズはよく知られた食べ物だった。紀元前21世紀頃のシュメール王朝、ウル第三王朝のシュルギ王の時代に記された粘土板文書には、年間63リットルのチーズが生産されていたことが記録されている。紀元前18世紀のハンムラビ王の時代には、市場で売買されているチーズに高い税が課されていたことがハンムラビ法典の碑文に記されていた。

(出典:チーズの歴史

古代エジプト(3200年前ごろ)

カイロ近郊のサッカラのネクロポリスにある墓が1885年に考古学者によって発掘された。古代エジプトの古代都市メンフィスの市長を務めていた役人プタメスの墓から壊れた壺が発見された。そのうちの1つの瓶の中に「固まった白っぽい塊」があり、これがこれが3,200年前のチーズと判明している。今回の発見は学術誌「Analytical Chemistry」に掲載されている。カターニア大学のエンリコ・グレコ博士は、エジプトのカイロ大学の研究者と協力して、チーズの正体を明らかにした。研究者によると、低温殺菌されていない乳製品を摂取することで発症する「ブルセラ症」という感染症の原因となる細菌の痕跡も見つかった。その症状としては、発熱、発汗、筋肉痛などがある。

(出典:BBC)

ローマ時代には十三種のチーズ

メソポタミアで生まれたチーズは、ギリシャを経由して、ローマへと伝わる。ローマ時代になるとチーズの種類も増えて、裕福な階層の家庭では、少なくとも13種類のチーズが食卓に並んだという。当時は裕福な階層ばかりでなく、平民や兵士達もチーズを毎日食べるなどかなり普及していた。古代ローマ・帝政ローマ期に贅沢を好んだ料理人マルクス・ガビウス・アピシウス(1世紀頃)は、古代ローマ随一の料理本『アピシウス』にも幾つかのチーズ料理を書き残しています。そして、かの有名なジュリアス・シーザーのガリア(今のフランス)征服をきっかけとした、ローマのヨーロッパ制覇と共にチーズはヨーロッパ全土に広がり、様々な風土の中で、それぞれ独特のチーズが発達していくのです。そし

チーズ製造の土器

クロアチアのダルマチア海岸(7200年前)

クロアチアのダルマチア海岸で7,200年前のチーズ製造の証拠が発見された。国際研究チームを代表する人類学のサラ・B・マクルーア准教授は「これにより、チーズの製造が4,000年前に遡ることになる」と述べている。この地域の土器にミルクの存在が見られるのは、発酵製品よりも500年早い7,700年前とのことです。この地域の大人は乳糖不耐症だったが、子供は10歳まで牛乳を摂取できた。比較的病原菌が少ないため、子供向けだったとマクルーア准教授は説明する。約500年後の新石器時代中期には、異なる技術を用いた別の陶器スタイルであるダニーロ陶器が存在する。ダニーロの土器には3つのタイプがある。5%を占めるフィグリナにはすべてミルクの残滓が含まれていた。他のダニロ族の土器には、動物性脂肪や淡水魚の残滓が含まれていた。

(出典:PHYS.ORG)

チーズの種類

多彩なナチュラルチーズ

チーズはナチュラルチーズとプロセスチーズに分類できる。ナチュラルチーズは乳を乳酸菌やレンネットの働きで豆腐のように固めるもので、多くの場合には発酵熟成させて作る。一方、プロセスチーズは、1種ないし数種類のナチュラルチーズを砕き、加熱して溶かし乳化剤を加えたものだ。加熱により発酵熟成が止まるので、風味や品質が安定しています。ナチュラルチーズにくらべると、長期保存が可能だ。日本でプロセスチーズが本格的に普及しはじめたのは1964年の頃であり、学校給食でも使われるなど日本人の食生活に一気に普及した。また、ワインブームや海外旅行者の増加とともに、ナチュラルチーズの存在がだんだんと知られるようになり、ナチュラルチーズの消費量が増加した。最近ではナチュラルチーズの消費量の方が多い。

(出典:Jミルク

ナチュラルチーズとプロセスチーズ

かつての日本では日本人が食べやすいチーズとして、プロセスチーズが消費の主流だった。プロセスチーズは、ナチュラルチーズにはないおいしさで広く浸透した。特に、混ぜ合わせるチーズの種類や配合を変えることによって、生食に向くタイプや、加熱に向くタイプなど、用途に合わせた商品がさまざまに販売されている。

(出典:OISHIKERYA)

チーズの消費量の推移と国際比較

国内におけるチーズの消費量の推移

下の図は、1950年から2015年までのチーズの消費量の推移だ。食の洋風化の中でプロセスチーズが牽引してチーズ消費量を拡大した。ナチュラルチーズは1980年代後半からのピザブーム、ワインブームなどによりチーズ消費量を伸ばし、1993年度にはナチュラルチーズの消費量がプロセスチーズを上回った。ナチュラルチーズとプロセスチーズの両方がそれぞれの特徴を生かしながら消費を喚起し、2016年度の国内チーズ消費量は年間32万トンに達している。

(出典:メガミルク

世界のチーズ消費量と日本との比較

一人当たりのチーズ消費量で見ると、トップはフランスで年間26.2kgも消費している。さらにドイツ・アイスランド・ルクサンブルグが同率2位の24.2kgだ。5位がギリシャの23.4kgと欧米が続く。日本の消費量は一人当たりだと2.2kgであり、トップのフランスの10分の1以下なので、伸び代は大きいと言える。日本ではまだスライスチーズや6Pチーズなどの「プロセスチーズ」が馴染みが深いが、チーズの本場ヨーロッパでは乳を固めて発酵熟成させた「ナチュラルチーズ」が人気だ。現地のマーケットでお気に入りのチーズを購入するのも旅の楽しみの一つだ。

(出典:trip advisor)

チーズの栄養素と効用

チーズの成分

チーズは栄養素が多い。特に、下のグラフに示すように、タンパク質やカルシウム、脂質の含有量が高い。ビタミンB2やビタミンA、亜鉛、ナトリウムも多く含まれている。チーズは食物繊維を含まず、糖質も少ないが、脂質が多い高カロリーで低糖質の食品と言える。チーズの特徴としては、次のようなことが挙げられる。
・少量でたくさんのカルシウムがとれるので、骨粗しょう症の予防効果がある。
・チーズは良質タンパク質 – 健康な身体作り、がんや高血圧の予防に効果がある。
・豊富なビタミンB2があり、ダイエットや疲労回復に効果がある。
・脂質も大切な栄養であり、かつチーズの脂肪は太りにくい。
・意外な栄養はビタミンA! 美肌づくりに最適という嬉しい効果もある。
なお、チーズはビタミンCやβ-カロテン、食物繊維といった栄養を含まないので、フルーツや野菜と一緒に摂流ようにすると、栄養素を補完しあえるので、さらに効果や作用も向上する。

(出典:チーズの歴史

パルメザンチーズの高いカルシウム含有量

パスタやリゾット、ピザなど、イタリア料理に欠かせないのがパルメザンチーズだ。パルミジャーノ・レッジャーノは、イタリア北部の限られた地方で作られているチーズ。製造の手間がかかり、希少価値が高いことから、「チーズの王様」とも言われている最高品質のハードタイプチーズです。乳製品の中でも、特にカルシウム含有量が多い。カルシウムは骨や歯の主要な構成成分となるだけでなく、脂肪の合成が抑えられ、分解を促進する働きもある。なお、日本語のパルメザンチーズは粉チーズだ。パルミジャーノ・レッジャーノ風のチーズの意味で用いられるが、別物だ。

(出典:KASHI KARI)

血液サラサラ効果

北欧で行われたチーズ摂取量と血中脂質の関係を調べる調査では、チーズ摂取量が多くなるほど血中HDL-コレステロール濃度は高くなっていた。一方、中性脂肪については、下の図に示すように、チーズ摂取量が多いほど低くなっていた。チーズには抗酸化活性があり、LDL-コレステロールの酸化を減らすことが期待できる。このため、血液がサラサラになり、高血圧になりにくく、動脈硬化などのリスクを下げるという嬉しい効用がある。また、チーズの熟成中に乳酸菌やかびが出すたんぱく質分解酵素の働きによって、たんぱく質が徐々に分解され、様々なペプチドやアミノ酸が生成される。この熟成と呼ばれる発酵を経ることにおり、美味しさを増すとともに、血圧の上昇を緩和するペプチドも生成する。ペプチドには様々な血圧上昇緩和効果があるが、特に、ラクトトリペプチドと呼ばれるアミノ酸が3個つながったペプチドは血圧上昇抑制効果を持つことが知られている。チーズは塩分含量が高いので高血圧になりそうですが、塩分含量の多いブルーチーズでも1回に食べる量は30gほどなので、実際の食塩摂取量は1.27g程度(食塩の1日あたりの目標量は男性で8g、女性で7g未満)なので、全体のバランスを考えて食事を楽しみましょう。塩分含量が高めのチーズに、高血圧になるリスクを下げ、血液サラサラ効果があるのは不思議だけど嬉しい効用だ。

(出典:メガスノー

認知機能の低下防止

嬉しい紅葉は血圧低下だけではない。年齢を重ねると認知機能の低下が気になりますが、チーズとワインを摂取すると認知機能が強化されるという。特に、特にチーズは、晩年になってからの摂取でも認知機能を強化することが示されている。まだ、手遅れではない。今晩からワインとチーズを楽しみましょう。また、ラム肉は他の種類の肉よりも認知機能の改善に役立っている。塩分の取り過ぎは認知症の主要な原因とされてきたが、アルツハイマー型の家族歴のある人のみのリスクという。健康に関する知見もますます明らかになり、健康で楽しい人生を送っていきたいですね。

まとめ

チーズはワインというイメージが強いですが、実は多くのお酒との相性も抜群です。ビールでも発泡酒でも酎ハイでもチーズはベスト5に入っています。特に、ウイスキーは2位、ワインとハイボールではなんと1位の人気のつまみです。チーズにも色々な種類があるし、タラチーズとか、サーモン、明太子、生ハム、キノコなど多彩な食材と組み合わせても美味しい。そんな料理にトライするのも良いかもですね。


(出典:ienomistyle)

以上

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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