情けは人のためならず:利他の心は生後7ヶ月から育まれる。

はじめに

月例でいつもの仲間とゴルフをプレイする習慣がここ20年ほど続いている。最高齢の人は最近調子が悪く、ゴルフへのインセンティブが落ちているのが明白だったけど、先月はどうも元気だった。ゴルフもボールにしっかりと当たるようになった。昼休みに雑談していると、最近考古学の発掘調査のボランティア活動に参加されていると知った。同じ目的を持つ仲間と頭を使い、体を使って発掘活動をすることで彼のバイタルが再び高まった。まさに、「情けは人のためならず」だと感じた。

情けは人のためならず

下の図の太線は、「(ア)その人のためにならない」という意味と答えた人の年代別の比率だ。一方、細い線は「(イ)結局は自分のためになる」という本来の意味だ。10代から50代までは(ア)の意味と誤解している人が多いことに驚く。さすがに60歳以上は正しい(イ)の回答比率が55.4%と過半数を超えるが、なぜにこれほど間違った解釈をする人が多いのだろう。文化庁の解釈では、次のような解説が加えられているが、これは利他的な考えを持つ人が減って、利己的な考えの人が増えているからだと思う。

「人のためならず」の「ならず」は,〔断定の「なり」〕+〔打ち消しの「ず」〕ですから,「である+ない=~でない」という意味になり,「人のためでない(=自分のためである)」と読み取る必要があります。ここのところがはっきりしないことが「人のためにならない」と解釈する人を増やしている理由だと考えられます。


(出典:文化庁

利他の心(Altruism)はまやかしか

利他の心というと、誰の言葉を思い浮かべられるでしょうか?自分は、稲盛和夫さんだ。京セラを立ち上げ、DDI(現在のKDDI)を立ち上げ、JALを再生した実業家であり、DDIを立ち上げるときには、「動機善なりや、私心なかりしか」と何度も何度も自己に問いかけたという。個人的な欲望を満足するために事業を立ち上げても成功しないことを熟知されていたのだろう。自己の欲望は横に置いて、あくまで世のため、人のためになるのかどうかを反芻し、やはり必要だという結論にたどり着いた後の行動が早いし、迷いはなかった。その理念に共感する人が集い、大きな力となった。しかし、これを悪用する人もいる。部下に利他を押し付け、自分は私利私欲を貪る。そんな人は遠からず人から見放されると信じたいが、ブラック企業がなくならないように、世の中を回す人は善人ばかりでもないだろう。

(出典:Ameblo)

利他の心は生後7ヶ月から

人は、そもそも利己的なのか、利他的なのかという疑問を持ったのがドイツのマックス・プランク研究所のとピアス・グロスマンだ。米国のバージニア大学と共同で生後7ヶ月の経験と生後14ヶ月の行動の相関関係を調べ、2018年9月に発表された。この中で、生後7ヶ月で他者が怯えているという反応を体験した赤ちゃんは、生後14ヶ月で利他的な行動をすることが有為に高いことが証明された。


(出典:Plos Biology)

赤ちゃんは利他的(Altruism)

ワシントン大学の研究によると、利他的な行動は乳児期に始まるという。生後19ヶ月の赤ちゃんに甘い果実をみせ、研究者が果実を取ろうとして失敗し、果実を欲しがっていることを示すとなんと58%の赤ちゃんが果実を拾って研究者に渡したという。さらに、同様の試験を食事前に実施したところ、お腹を空かせた赤ちゃんの37%が果実をとって研究者に差し出した(出典:Vox)。多くの人は生まれながらにして利他の心を持っていると言えるのではないか。

騙される人が悪いのか

人を騙すぐらいなら、騙される方がマシだと考える人もいれば、そうでない人もいる。しらべぇ編集部が全国の10代から60代の男女1732名を対象に2019年3月に調査を実施したところ、下の図のように詐欺は騙される方も悪いと思う人が40.5%だった。年齢別に見ると50代や60代ではその比率がさらに高い。人生経験を重ねるほどに純粋な利他の心だけでは生きていけないことを学ぶのだろうか。

(出典:excite)

まとめ

本日、受講した脳型情報処理機械論については別に投稿するが、その中で赤ちゃんの思考をロボットに応用する研究成果が説明された。子供と大人でどのような点で行動パターンが変わるものかと質問した。英語での回答だったので、よく分からない点も多いけど、要は社会的な行動に素直に反応するのが赤ちゃんということと理解した。確かに赤ちゃんの行動は危なっかしいし、突然泣き出すけど、笑うと可愛いし、スキンシップしていると本当に愛らしい。利己的なロボットなど欲しくはない。利他的なロボットこそ人々が求めているものだと思う。論理が飛躍したけど、レポートの題材になりそうな気がする。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

追伸:利他主義(Altruism)の語源
利他主義は、日本人的だと感じるけど、英語では「Altruism」という。ラテン語で他の人や他の誰かを意味する「alteri」が語源だ。利他主義は、他の人間や動物の幸福に関心を持ち、その結果として物質的にも精神的にも質の高い生活を送ることができるという原理と道徳的実践とする。利他主義は、多くの文化において伝統的な美徳であり、様々な宗教的および世俗的な世界観の中心的な側面である。利他主義は、利己主義(selfishness)の反対語である無欲主義(selflessness)と同義語だ。フランスの哲学者オーギュスト・コントはエゴイズムの反意語として「altruisme(利他主義)」という言葉を広めた。

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