新型コロナの脅威により2020年の死者数は11年ぶりに減少し、自殺者は11年ぶりに増加。

はじめに

経営大学院で時系列分析について学んだ。Aという事象とBという事象の相関関係の有無を見る場合には時系列での分析が効果的だ。難しい計算は省略しても、ビジュアルで確認するだけで結構判断できる。テレビのワイドショーでは新型コロナの陽性者数が増えたとよく放送している。しかし、減少した時はあまり話題にならない。また、陽性者かどうかを判定するにはPCR検査を実施しているはずだけど、PCR検査数の増減はあまり話題にならない。これも不思議だ。PCR検査数が増えれば、必然的に陽性者が増えるはずだからだ。

日本経済新聞は愛読しています

社会人になったら日本経済新聞ぐらいは読まないと先輩から言われ、それ以来、40年以上日本経済新聞を愛読している。個人的には日経産業新聞も好きだけど、家庭内のニーズと照らし合わせて日経にしている。一時期は電子版も併用していたが、香港に赴任するときに一旦解約しようとしたら「めちゃくちゃ大変だった。電子版は絶対ダメ」と家庭内で決まり、やむなく紙面のみにしている。新型コロナが蔓延した当時は、電車が空いていたので、気兼ねなく電車内でも読めた。最近はテレワークが定着しているので、ほぼ家庭内で購読している。今日の紙面でも個人的に興味のある「地域通貨」の記事や「海上風力発電」の記事、「家庭にソーラ義務化」など注意を引く記事が多く、それらを深掘りしたいと思ったけど、NewsPicksとかネット記事などを色々調べるうちに、表題についてまとめることにした。

日本経済新聞の「チャートで見る日本の感染状況」

NHKなどのテレビ局や日経新聞などの新聞各社も新型コロナについての統計情報をまとめている。日本経済新聞の「チャートでみる日本の感染状況」では、PCR検査の実施人数(図表1の上のグラフ)や感染者、回復した人、死者の数(図表1の下のグラフ)が掲載されている。ただ、期間が1年ほどなのでそれを繋ぎ合わせて、上下で対比できるようにした。新規感染者は増えたり、減ったりしている。特に増えた時期に着目して⇨をそれぞれ5箇所に追記した。最初は2020年4月上旬から中旬だ。次は2020年の7月下旬から8月上旬、3番目は11月の上旬から12月下旬、これに続いて2021年1月上旬から中旬に急激に増加、最後はこの3月中旬から4月下旬(現在)だ。
図表1 PCR検査数と感染者数の推移

出典:日本経済新聞の「チャートでみる日本の感染状況

感染者の急増に伴う緊急事態宣言の発令

新型コロナの感染者が急増しているとマスコミが報道する。国民もこれは大変だと自粛する。政府ななぜすぐに緊急事態宣言を発令しないのかとテレビのバラエティ番組で問題的する。政府は専門家の意見を聞きながら慎重に検討して、適切な対応をとる。結果として、これまで3度の緊急事態宣言が発令された。

1回目:2020年4月7日から5月25日
2回目:2021年1月8日から3月21日
3回目:2021年4月25日から5月11日

緊急事態宣言をしたから新型コロナ感染者が減少したのか

新型コロナの感染者の急増に伴い医療が逼迫し、重篤な患者の命を救えないのは問題だ。緊急事態宣言を発出し、国民の流れをとめ、活動をとめ、感染を防ぐ。その結果、新型コロナの感染者が減少したのであれば問題ない。ただ、図表1を見ると、感染者数の増加と同期して、もしくは少し早めにPCR検査数が増加している。感染者がピークを迎え減少するタイミングと同期して、PCR検査数が減少しているように見える。時系列分析では、相関関係の分析は可能だ。しかし、因果関係の特定は非常に難しい。ただ、PCR検査をするのは、発症した患者やその患者の濃厚接触者を対象にするため、感染者数の増減が先行して、それに追随する形でPCR検査数が増減すると考えるべきなのかもしれない。

2020年の国内死亡者数の減少

新型コロナの影響で2020年の死亡者数は急増しているのではないかと心配したが、それは杞憂だった。厚生労働省が2月22日に発表した人口動態統計(速報)によれば、2020年の死亡者数は138万人4544人だ。これは2019年の139万3,917人よりも、9,373人減少した。死亡者が減少したのは11年ぶりの快挙だ。新型コロナの影響で消毒やマスクで肺炎やインフルエンザで亡くなる人が減少したためという。2020年1月から9月の死因別の増減でみると、肺炎の死亡者は71,356人で前年比18.0%(約1.2万人)の減少となっている。逆に多いのは老衰で前年度比約7千人の増加という。2020年の自殺者数は2万919人(速報値)と前年度比750人の増なので、図表2には含まれない。この記事によると『9月までに新型コロナと診断された人は約1500人。同月までに自治体が発表した新型コロナの死亡数と比べ100人ほど少ない。同省は「末期がんで感染が確認されて死亡したケースは、がんが死因となる。こうしたケースが差になっている」としている。』と報道している。
図表2 2020年1月から9月の死因別増減

出典:日本経済新聞(更新)

コロナの国内死者数

新型コロナによる死者数は2021年1月23日時点で5077人と初めて累計5千人を超えた。記事では、『「第3波」が深刻化した2020年12月以降の死者は計2912人で、全体の6割近くを占めている。重症者の増加傾向は続いており、死者のペースは今後さらに加速する可能性がある。』と危機感を示している。2021年4月23日現在で死者累計は9,872人だ。
図表3 死者数の推移

出典:

新型コロナの死者の定義の違い

新型コロナで亡くなる人を最小限に留めるべきだ。ただ、気になるのが死者の定義が都道府県によって異なることだ(4月7日の投稿参照)。図表4に示すような定義の違いは今もそのままなのだろうか。東京都の新型コロナによる死亡かどうか判断するのは難しいとはどういうことなのか。難しくてもしっかりと分析するべきだろう。横浜市や埼玉県のように「医師らが死因は別にあると判断したケースは除外する」があるべき姿ではないのか。東京都の定義だと、交通事故や別の病気や老衰でも陽性者と判定されたら新型コロナによる死亡者とカウントされるのだろうか。2020年12月から1月にかけてPCR検査が急増したことと2020年12月から1月にかけて死亡者が急増したことには関係がないと信じたいが疑念は拭えない。
図表4 死者の定義の違い

出典:読売新聞(2020/06/14 10:25)

2020年の自殺者は11年ぶりに増加

新型コロナに対応して緊急事態宣言を行うことの意義は理解できる。しかし、これは劇薬だ。経済活動を大幅に制限したり、活動を停止することによる社会のハレーションをしっかりと精査すべきだ。ハレーションは弱者に集まりがちだ。そして、何もできない弱者はどうすれば良いのだろうか。最後の選択が自殺だとしたらこれは悲しすぎる。国内の自殺者はリーマンショックの後に3万4,427人を記録したが、その後10年連続で減少してきた。しかし、2020年には2万1,081人と前年度に比べて4.5%増加している。その性別でみると、男性は1万4,055人と全体の66.7%を占めているものの2019年から23人減少した。一方、女性は7,026人と全体の33.3%だが、2019年から15.4%増加(935人の増加)増加している。また、小中高生の自殺者も499人と増加している。
図表5 自殺者数の推移

出典:nippon.com(2021.01.22速報→ 2021.03.24 確報)

小中高生の自殺者の増加が示すもの

小中高生の自殺が499人増加したと書いたが、特に増えているのが高校生だ。2019年の279人から2020年の339人へと21%も増加している。ついで、中学生は112人から146人と30%も増加している。小学生の自殺は信じられないけど、8人から11人へと38%も増加している。東海大学客員教授の岸田雪子さんは、『日本は、若い世代の死因の1位が“自殺”と非常に悲しい現状がある、それがコロナ禍でさらに深刻になっている』と危機感を募らせている(TOKYO MX)。
図表6 小中高生の自殺者の推移

出典:教育新聞(2021年3月16日)

まとめ

新型コロナによる死者数は一体何人なのか。NHKまとめによると、4月23日23:59時点で9,872人だ。月内には1万人を突破し、その時点でマスコミは大きく報道するのだろう。しかし、明らかにコロナとは異なる死因を除くとどうなるのだろう。一方、国内の死者数が減少する中で2020年だけで2万1,081人が自殺している。社会的に弱い女性や子供の自殺が増加している点にも注意が必要だ。緊急事態宣言をして、それに応じた店などに給付金を支給しても、本当の弱者には回らない。そんな構図であることを理解して、どう対応すべきかを客観的に分析し、対応策を検討して欲しいと思う。どうも新型コロナの報道には、客観性より意図的なものを感じるのは穿った見方であろうか。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

 

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