メディアの栄枯衰退その3:新聞業界の凋落がテレビ業界の外資系資本増大の深因か。公平な報道を。

はじめに

新聞の発行部数の減少が止まらない観点からその1を投稿した。また、SNSを中心とするデジタルメディアの利用拡大は年代を問わず加速していることをその2で投稿した。今回は、新聞業界とテレビ業界における課題についてまとめる。解決策は個人的な思いつきレベルだけどトライしたい。

その1:危機的に減少する新聞の存在意義(前々回)
その2:メディアの状況(前回
その3:新聞業界の課題(⇨ 今回)
その4:新聞業界の生き残り戦略(次回

新聞業界の課題

新聞業界各社の経営状況

新聞業界の売上規模は1.4兆円だ。これは170業界のうちの99位だ。売上は残念ながら3.1%の減少傾向だ。2019年から2020年における個々の新聞社で見ると、売上が最も高いのは読売グループ社の5,818億円だが、同社の利益や利益率は上位には入ってこない。後で述べる押し紙などの影響があるのだと想定している。日本経済新聞社は売上は2位の3,568億円だが、経常利益ではトップだ。これは日経電子版などデジタルメディアへの対応が比較的進んでいるためだと言われている。朝日新聞社は売上では3位だけど、経常利益では130億円とトップの日本経済新聞社に肉薄している。利益面では神戸新聞社や西日本新聞社も頑張っている。

(出典:就職agent)

押し紙

新聞業界では、新聞を発行する新聞会社と、それを販売する販売店は別経営だ。新聞会社が販売店に販売する部数が発行部数だ。そして、販売店が利用者に販売するのが購読部数だ。日本では、発行部数は購買部数よりも多い。その差異を業界では「押し紙」と呼んでいる。問題はこの押し紙の比率だ。数%であれば大きな問題ではないが、仮に数割だと大問題だろう。押し紙をすると、新聞会社はハッピーだし、販売会社も販売奨励金を貰うので損はしない。被害者は広告元だ。1万人が購読するという前提で広告費を払っているのに、実際には例えば下の図(例)のように7千部しか購読されていないとしたら広告元が不利益を被っていることになる。

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(出典:Bargage

新聞用紙の年間一人当たりの使用量

下の図は、新聞用紙の需要について欧米中日を比較したものだ。特に、右の図を見ると米国の消費量が急激に減少している一方で、日本の消費量の減少傾向が緩やかだ。左の図は、年間一人当たりの使用量について2000年と2012年で比較したものだ。2000年時点では日本の使用量は米国よりも少なかったが、2012年では日本は米国やEUの倍近い量を使用している。日本においても電子版は提供されているが、環境保護の観点からもっと加速すべきではないのだろうか。

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(出典:スマートエネルギー情報局

テレビ業界の課題

若者のテレビ離れが指摘されて久しい。テレビ放送も素晴らしい番組もあるけど、電波の無駄使いと感じる番組もある。番組のコンテンツの質をさらに高めてほしいが、ネットの利用が増えると、広告もネットにシフトし、結果的にテレビ会社の収入が減ってしまうという悪循環をいかに打破するかが課題だ。それ以外に、テレビ業界は、クロスオーナーシップの問題と、外資規制の問題がある。いずれも公平・公正な報道を担保するための規制だ。

テレビ各社と新聞各社の関係

新聞各社は困難な局面にはあるがいずれも名門企業だ。また、テレビ各社の親会社でもある。日本の報道を担う重要が業界だ。欧米諸国ではナチスによるプロパガンダが戦争につながったという反省からクロスオーナーシップが禁止されている。メディアにおけるクロスオーナーシップとは、新聞社が放送業に資本参加するなど多数のメディアを傘下にすることだ。しかし、日本では、所有比率は低下しつつあるが、大手新聞各社が大手テレビ会社の親会社であるため、クロスオーナシッップの弊害が出ないような対応が求められる。
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(出典:報道ニュース

外国人が保有する議決権割合

もう一つの問題は、外資規制だ。日本では、国家の安全や主権維持に関わる産業分野等に対する外国人による投資が制限されている。例えば、金融なら日本取引所は20%、航空業界ならANA、JAL、スターフライヤーは33%規制、貨物利用運搬事業では日本通運、近鉄エクスプレス、西日本鉄道などが33規制、通信事業ならNTTが33%規制だ。そして、電波法、放送法に基づいて、テレビ各社には20%の外資規制が適用されている。東北新社が20%規制を遵守できていないとマスマディアはかなり報道したが、下の図に見るように、フジテレビや日本テレビは20%を超えている。なぜこれが問題にならないのだろう。また、外資の場合には、米国なのか、欧州各国なのか、中国・韓国なのかも明確にすべきという主張がある。NHKにしても、日本の歴史を正しく中立に報道してほしいが、どうも違和感を感じることが少なからずある。

(出典:diamond online)

環境問題

環境問題に直接関わるのは新聞業界だろう。特に紙面に印刷して、配達して、回収することを考えると、電子版の普及はもっと加速(料金的にも優遇)させるべきではないだろうか。パルプの原料となる木材の2020年の集荷量は、国産材が前年比9.7%減の406万トン、輸入材が同22.6%減の898万トン、合計で同19.0%減の1,304万トンだ。国産材Lとは、紅葉樹を原料とする国産材でLはラオプホルツ(Laubholz)の略だ。あm他、国産材Nとは、針葉樹を原料とする国産材で、Nはナーデルホルツ(Nadelholz)の略だ。輸入材の割合は2000年から2019までは70%を超えていたが、2020年には68.9%に低下した。新聞用紙は再利用が進んでいて、古紙利用率は60%を超え、目標の65%に近づいている。しかし、それでも35%は無駄になるということだ。再利用の為のエネルギーや水も必要だ。電子新聞をネットで展開しても、エネルギーは消費するが、木材を加工して、製紙して、印刷し、配布して、回収して、再利用することに比べるとやはり合理的だし、電子版の普及は環境に優しいと言えるのではないだろうか。

(出典:日本製紙連合会

まとめ

日本では言論の自由は守られていると信じたい。言論の自由は国際人権法で保護され世界人権宣言第19条にも規定されているし、日本国憲法21条第1項にも表現の自由を保障すると明記されている。言論の自由とは、対立する意見の両方を報道することではないだろうか。例えば、コロナ禍においてワクチン接種は感染者の重篤化を防ぐ有効な手段であるが、その一方で副反応も一定は生じる。その両方をきちんと報道することではないだろうか。YouTubeでは、ワクチンの効用を否定するような報道は禁止されていることは有名だ。YouTubeを視聴するかどうかは個人の自由だけど、同様の報道規制を新聞やテレビはしていないだろうか。メディアの最大のミッションは公平・公正な報道だと思う。しかし、新聞業界は苦しい経営に直面しており、放出した株を外資が購入し、バイアスが掛かるような事態にならないように、法律に基づいて毅然とした対応をしてほしいと思う。非常に厳しい環境にはあるが、新年に相応しいように、新聞業界の生き残り戦略について次回は考えたい。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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