GCL情報理工学特別講義Iの第6回:メルペイの山本真人CEOが語るメルペイの可能性とその先

はじめに

今回はGCLメディア論の第6回講義を受講した。前回のマイクロソフトの畠山さんの講義と同等かそれ以上に、今回のメルペイCEOの山本真人による講義も素晴らしかった。東京大学大学院のOBでもある山本CEOは、研究肌や学者肌の多い東大OBとは少し異なるオーラを感じた。つまり、学問よりビジネス、保守より挑戦、国内より国際を好む一方で、地に足をつけたビジネスを通じて社会に貢献したいという高い倫理観を持って仕事に取り組む姿勢が感じられ、講義は非常に面白かった。いつも記載するが、これは講義メモではない。講義を通じて感じたことをネットや文献で確認し、理解した範疇でまとめたものだ。従って、もし内容に問題があるとすれば文責は自分にあり、逆に内容が面白いとすれば講師の山本氏のおかげだ。

講師の山本真人メルペイCEO

国際基督教大学(ICU)の付属校からICUに進み、2004年には東京大学大学院国際情報学府修士過程を終了される。学生時代はオラクルなどのインターンなどを経験した上で、NTTドコモではSEを担当する。2008年からはGoogle JapanのEnterprise部門のHead of Parner Salesを務める。2014年には、Square JapanにてHead of Business Development and Sales、2016年からはApple JapanにてApple Pay 加盟店事業統括責任者を歴任する。2018年4月よりメルペイに参画し、2022年1月にメルペイのCEOに就任する。新しいことや将来伸びそうな事業へのチャレンジを楽しむという才覚を持っている。世の中の多くの人が感じない変化の兆候を敏感に感じとる能力だけではなく、それを実社会の中で実現するというプロセスに喜びを感じるタイプの経営者なのだと思った。

(出典:クライス

メルカリの世界

メルペイの前にメルカリとは何かから始めよう。メルカリとはいわゆるフリマアプリだ。不要となったものをスマホ等で写真に撮って、掲載し、買い手がつけば買い手に郵送する。新品を買わなくても、まだまだ使えるものは使おうというシェアリングビジネスの一つとも言える。

Mercari創業者山田進太郎の想い

メルカリの創業者であり、現在のメルカリ社長(CEO)が山田進太郎(1977年9月21日生)だ。学生時代に楽天へのインターンの時期に楽天オークションの立ち上げを経験する。2019年3月時点の総資産は1440億円で、日本長者番付33位で、2022年版の長者番付では8位にランクアップしている。メルカリを創業するきっかけは世界中を旅した中で日本ではものに溢れているけど、物がなくて困っている国や世界がある。これをなんとかできないかと思ったのがきっかけという。ビジネスの力で社会の課題を解決する社会起業家のスタンスに近いように思う。なお、メルカリの語源はラテン語の商いをする(mercari)だという。
(出典:Wezzy

国内No.1のフリマアプリ

メルカリの設立が2013年2月1日だ。2015年10月には2000万のアプリがダウンロードされた。累計出品数も右肩上がりに増加している。2021年12月にはなんと25億品を記録した。この数字は、サービスを開始した2013年7月2日から2021年12月4日までの約8年半で達成したものだ。


(出典:mercariプレスリリース

月間利用者数、四半期流通額の推移

月間の利用者数は2021年12月の2045万人から2022年3月には2069万人へと増加している。さらに、四半期流通額も2022年6月期の第2Qの2,268億円から3Qの2,326億円への増加している。月間利用者数はほぼ単調増加であるのに対して、四半期流通がくは凸凹がある。これは冬の商品の方が夏の商品よりも単価が高いためだという。確かに夏場だとTシャツとかが売れるけど、冬場ならコートとかになる。毛皮のコートならさらに高額だ。EC事業者として年間1兆円を超えるのも時間の問題だ。楽天、アマゾン、ヤフーと並び、日本国民にとってかけがえのない重要なインフラに成長している。しかも、それが国産企業だというのも嬉しい。

(出典:ITmedia

メルカリの取り扱い品目

メルカリで、医薬品やチケット類を売買しようとしてニュースでバッシングされたことがある。特に下のような商品は法的にも問題があったりするので、出品禁止だ。そもそも公序良俗に反するものはダメだし、利用者の健康を害する可能性のあるものも禁止だ。昨年秋にはキノコの出品に対して注意喚起することもあった。


(出典:KAMIYA Magazine

新たな売上が生む新たな消費

メルカリとメルペイの関係を考える上で重要なことは、メルカリの利用者はメルカリで不要なものを販売することで売上を得ることだ。これが日本では約1兆円ある。国民総所得(GNI)に対しては、現状では500分の1かもしれないが、メルカリの売り上げが今後二倍、十倍、百倍と増えれば、大きな存在感を示すことになるだろう。講師の山本CEOはZOOM越しにも性能の良さそうなヘッドフォンとマイクロフォンを使われていた。受講生がその点を突っ込むと、古いマイクなどを処分したお金でメルカリから新しいマイクを購入したという。こういう経済の循環が活性化されるのは日本経済や日本国民にとっても素晴らしいことだと思う。

(出典:mercan

メルカリが考える循環型金融

世の中には、さまざまなスマホ決済サービスがあるが、その多くは赤字だけど、メルカリと連動したメルペイは黒字だ。なぜかといえば、PayPayの100億円キャンペーンを筆頭に、多くの決済サービスでは利用者獲得のために無料のポイントなどを提供し、その後の利用で収入を得るようなビジネスモデルなので、収支は苦しい。しかし、メルペイの原資は、メルカリで商品を売った代金だ。メルカリを使ってものを提供するほどにメルペイの残高が増える。メルペイはそもそもその残高を利用者が希望するように使えるようにする仕組みだったが、メルペイに溜まった残高で新たなものをメルカリから購入するという再生産のサイクルが生じている。

(出典:Diamond Signal

RecycleとUpcycle

環境問題に対応して3Rとか4Rとかの必要性が指摘されていて、それに異論はないけどど地味だ。その一方でUpCycleという概念も現れている。アップサイクル(Upcycle)とは、クリエイティブリユースとも呼ばれ、副産物や廃棄物、無駄なもの、不要なものを、芸術的価値や環境的価値など、より質の高いと思われる新しい素材や製品に変換するプロセスだ。例えば、メルカリの本社がある六本木ヒルズのフロアには中古の椅子などを利活用した創造的なベンチがある。単に修理して使うのではなく、新しいものに生まれ変わって世の中に送り出されるものだ。アップサイクルの目的は、既存の材料を利用することによって、潜在的に有用な材料の浪費を防ぎ、新しい製品を作る際の新しい原材料の消費を減らすことだ。メルカリのビジネスはこのUpcyclingの概念に沿ったものと言えるのかもしれない。
(出典:First Penguin

メルカリの従業員の増加ぶり

講義では言及はなかったけど、メルカリの従業員も2018年の7-9月期には400人に満たないレベルだったものが一年でほぼ倍増している。下のグラフは連結従業員数だが、メルカリ単独では2021年9月末で1060人。平均年齢33.5歳、平均年収920万円となっている(出典:日本経済新聞)。メルカリはアメリカにも法人を設立しているが、特別損失を計上するなど事業拡大には苦戦している側面もあるようだ。


(出典:PR Times

これからのmercariのチャレンジ

信用創造ビジネス

メルカリはいわゆるC2Cビジネスだ。つまり、売りたい利用者と買いたい利用者をダイレクトにマッチングし、シェアリングを促進する。講義中にはチャットで質問できる。自分は、「メルカリのビジネスモデルが可能となる前提には、倫理観の高い国民性=信用性を重んじて、誠意ある取引を行う利用者がありそうですね。」とチャットしたら、この点は特に大事なポイントだと褒めていただいた。つまり、売買の履歴や売買に伴う評価やコメントはオープンなので、ある売り手を信用できるのかどうかを買い手は見極めることができるし、必要だ。このようなプロセスはAirbnbでも家の借り手と貸し手で評価をし合うという仕組みがあり、同じようなプロセスだと思った。メルカリはモノの売買を担当するが、メルペイは信用を扱う。さらにメルコインになれば、それをベースに各種サービスに発展することが検討されている。

(出典:Impress Watch

EC市場の後払いサービス

例えば、キャッシュがなくても、それまでの売買の取引の評価が高ければ、後払いのクレジットを与えることも可能だろう。矢野経済研究所のオンライン決済サービスプロバイダーの現状と将来予測(2021年版)では、下のグラフに示すように2024年には後払い決済サービスの利用ニーズが2020年の8,820億円から1兆8,800億円に拡大すると予想している。これはまさに、メルカリやメルペイの売り上げの拡大予想を裏付ける予測ではないだろうか。

(出典:MarkeZine

メルコイン

先に言及したメルコインにはリスクも感じるが、一方で社内外の期待感も大きい。ビットコインの取引口座を持ってまで暗号資産を購入しようと思う人はマイナーかもしれないけど、メルカリ=メルペイの延長で、ビットコインを購入したり、販売したりできるのであれば、使ってみようと思う利用者も多いだろう。

メルコインのミッションは、「多様な価値がめぐる新しい経済をつくる 〜Circulate your value, anywhere and everywhere〜」です。暗号資産事業に関しては「メルカリ」における売上金のビットコインでの受取り機能の提供等、より簡単に金融サービスを利用できる環境を目指し、また、価値交換を実現するブロックチェーンの技術に取り組むことで、これまでのモノ・お金に限らず、暗号資産・デジタル資産などのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形を創出し、さらなる顧客体験の向上や顧客基盤の拡大に繋げていきたいと考えています。新たなコーポレートサイトにおいては、惑星がめぐるアニメーションを採用しており、ミッションである多様な価値がめぐる世界を実現していきたいという想いを込めています(出典:mercoin)。


(出典:Impress Watch

shops

メルカリは、基本的にはC2Cサービスだ。しかし、中小の事業者がECビジネスに参入するのは大変だ。日本の電子商取引(EC)の比率は低い。一般利用者が出店するような簡単さで中小の事業者も出店できるなら日本のEC化率の改善に寄与するかもしれない。日本のECが活性化するキーはメルカリのshopsが握っているのもしれない。

(出典:流通ニュース

メルカリステーション

これも講義では触れられていなかったけど、メルカリへの出品に躊躇する人をサポートするために、リアル店舗型のメルカリステーションがマルイやミスターミニット、白洋舎などと提携して都内近郊に8店舗ほど開設している。例えば、白洋舎だと外苑前店、用賀店、月島店が対象だ。クリーニングに出して、そのまま出典できれば便利だと思う。全く初めての人でも大丈夫なようにメルカリ教室を開催している店舗もある。至れり尽くせりだ。

(出典:メルカリびより

ゆうゆうメルカリ便

メルカリは、日本郵便とも連携して便利な「ゆうゆうメリカり便」サービスを提供している。次のようなメリットがあるので、利用者には便利かもしれない。
★ 購入者がご自宅だけではなく、コンビニ・郵便局・宅配ロッカー「はこぽす」でも受け取れる!
★ 匿名配送なので、互いに名前・住所を伝えなくても取引ができてあんしん!
★ 配送時にトラブルが発生した際には、メルカリが適切にサポート!
★ 宛名書き不要!
★ 全国どこでも一律の送料!
★ 配達状況がいつでも確認できてあんしん!

(出典:mercari

メルロジ

メルカリは、物流会社に依頼するだけではなく、独自の流通にも挑戦している。出品者はすぐにで購入者に届けたいと思うけど、購入者は時間がかかっても良いのでもっと安く提供して欲しいと考えるかもしれない。売り手と買い手のニーズを吸い上げてベストな流通網を構築することができれば、大きな強みになる。株式会社メルロジは「多様な価値をつなぎ、やさしい生活を創る」というミッションのもと、2021年10月28日に設立した。メルカリポストなどのタッチポイントの拡大や集荷物流網の構築を推進している。月間2,000万人を超えるメルカリの利用者を応援する強い味方だ。
(出典:merlogi

貧困層対策としてのメルカリ活用

チャットで「貧困層への支援策としてメルカリを活用した方法は模索されていますか。もしくは、そのような副次的効果がありますか?」と質問した。山本さんは、クロスボーダーでの対応について説明頂いた。質問の意図が説明不足だったけど、豊に見える日本でも七人の子供のうち一人は相対的な貧困だ。日本には120万世帯を超える母子家庭があるが、特にシングルマザーの貧困率が高い。そのような日本国内の貧困層への支援策としてメルカリが活用されることはあるかという意図だった。調べると、経済的困難を抱える高校生にメルカリからPC100台を譲受という記事があった。メリカりに出品した売上の一部を寄付に回すような取り組みもされている。メルカリならでは支援策なども今後は検討されると期待したい。

(出典:PR Times

まとめ

今回の講義も非常に興味深い内容だった。メルカリには登録して、体験的には取引したことがあるけど、今後はもっと本格的に活用したいと思った。また、これまでの利用者層は10代とか20代だったけど、中高年齢の利用も増えていて売上単価も高くという。高い倫理観を持ち信用を重んじる日本人にとっては非常に重要かつ必要なプラットフォームだし、これからますます重要になると確信する講義でした。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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