TED視聴:超音速旅客機の課題は騒音と燃費と軽量化。100年後には夢の飛行移動が可能だろうか。

はじめに

飛行機のコンセプトは、レオナルド・ダ・ビンチ(1452年4月15日から1519年5月2日)が設計図を残している。実際に有人での飛行は、1903年12月17日のライト兄弟によるライトフライヤー号となる。初めて音速を超える最高速度を記録したのは、1947年のベルX-1というロケットエンジン推進の実験機だ。超音速の旅客機は、1969年のコンコルドの初飛行となる。しかし、旅客機の速度競争は進まなかった。それは音速を超える時の過激な衝撃波による環境問題だ。同時に持続可能な社会を形成するには、速度よりもエコが重要となる。これからの旅客機はどうなるのか。そんなことを考えさせる動画だった。関心のある人はぜひ視聴して欲しい。

(出典:TED動画

超音速旅客機の開発計画

前述したようにコンコルドの初飛行は1969年だ。超音速旅客機の開発計画を諦めずに続けている企業がある。それが米ブームテクノロジーだ。2014年にコロラド州 デンバーで設立され、技術実証機XB-1を発表した。2017年には日本航空が20機の優先発注権を確保する予定があると発表した。2021年6月3日には、米ユナイテッド航空がブーム・オーバーチュア(Boom Overture)を15機発注し、2029年の商業運航開始を目指す予定だ。頑張ってほしい。

(出典:日本経済新聞社

静かで速い超音速旅客機

飛行機に求められている要素は多い。経済的に、環境に優しく、静かに、安全に、そして高速に移動したいという要望のうち、特に難しいのが静かにと速くのトレードオフの解消だ。1950年代から60年代にかけて、アメリカ人は、超音速ジェット機が陸上で騒音を起こす空軍に対して約4万件のクレームを出し、1973年にFAAは陸上での超音速商業飛行を禁止した。NASAとロッキード・マーチン社率いるチームは、陸上での静かな超音速商業飛行の実現に向けて開発を進めている。NASAはロッキード社のチームに2,000万ドルの契約を結び、低ソニックブームのXプレーンの設計を依頼した。QueSSTジェット機はマッハ1.4、時速約1,100マイルで飛行し、現在の民間旅客機の2倍、コンコルドとほぼ同じ速度で飛行する計画だ。問題は耐久性なので、F-16向けの施設を使って耐久検証が継続されている。油圧ジャッキにで主翼上曲げ試験などの実際の飛行で予想されるより25%多い負荷試験を行い、2022年1月下旬時点で耐久性試験の約80%が完了しているとされる(参考)。果たして実用化につながるか。

(出典:Lockheed Martin

超音速飛行機の環境問題や燃費問題を解決することは可能か

下の動画は将来の飛行機についてまとめたものだ。速度の向上も課題だけど、エコの追求も重要だ。グライダーのように少ないエネルギーで空を滑走するのであれば、エコな移動も可能だ。空飛ぶクルマについては以前投稿したが、空を飛び、道路を走行し、海上も疾走できたら万能だ。

(出典:YouTube)

ダブルウィングで解決可能か

超音速旅客機の騒音問題を解決すると期待されているのがダブルウィングだ。ライト兄弟が初めて飛行したのがダブルウィング(複葉機)だったけど、翼をダブルにすると超音速巡航時に従来の単翼機よりも大幅に抵抗を減らせることをコンピュータシミュレーションで明らかにした。これは片方の翼をもう片方の翼の上に配置し、どちらかの翼から発生する衝撃波をもう片方の翼からの衝撃波で打ち消すもので、ドイツ人エンジニアのアドルフ・ブッセマンが考案した。複葉機の主翼は、横から見ると三角形を平らにしたような形をしていて、上下の主翼が互いに向かい合っている。この形状により、各翼から発生する衝撃波を打ち消すことができると計算した。ただし、この構造には欠点がある。それは揚力が不足することだ。12種類の速度と700種類の翼型による性能を評価した結果、翼の内側をわずかに平らにして、高い方の翼の上端と低い方の翼の下端を滑らかにすると、従来の超音速ジェット機の半分の抵抗で超音速飛行が可能になることを突き止めた。抵抗が半分になれば、燃料は半分ですみ、さらに軽量化できるという好循環も期待できるが、まだまだ先は長そうだ。

(出典:SCI TECH Daily)

モーフィング翼

MITとNASAは、曲がる「モーフィング(morphing)」翼を研究している。翼を機械的に曲げるのではなく、各翼端にねじり圧力を加える2つの小型モーターを作動させることで、翼全体の形状を変え、その長さに沿って均一にねじれるようにする。この新しいコンセプトの基本原理はデジタルマテリアルと呼ぶ極小で軽量な構造部品の配列で無限の形状に組み立てられる構造による。個々の部品は丈夫で硬いが、部品の寸法や材料、組み立て方の形状を正確に選択することで、最終的な形状の柔軟性を正確に調整する。強度、軽量性、柔軟性に優れた小さな同じブロックの配列から大きく複雑な構造を作り上げることで、製造工程が大幅に簡素化される。これは、超音速旅客機に適用される技術というよりは、軽量でエコなライトプレーンに活用される技術のように見える。

(出典:柔らかい翼

中国が企画する超音速旅客機

中国科学院は、マッハ7(時速約8,900km)まで加速する実験に成功したと発表した(参考)。Iプレーンと呼ばれる飛行機は、胴体の中心線上に1対の前方掃射翼と後部胴体の上部に1対の結合掃射デルタ翼を持つ。スパルタンな単翼の極超音速機と比較して、揚力が増大するという。Iプレーンは重い極超音速爆撃機のため、エコではない。

(出典:Popular Science)

まとめ

飛行機は約100年前に誕生したが、100年後の飛行機がどのように進化しているのか、それとも進化がストップするのか未来を予測することは難しい。リチウム空気電池は、現在のリチウム電池に比べて格段に軽量できるので、飛行機には打ってつけだ。重力を制御する装置でもできないものか。より速く、より遠くまで、より快適に移動する手段としては超音速飛行機は有力候補だけど、騒音の問題や燃費の問題を解消できるかどうかがポイントだ。個人的には、時速100kmぐらいで安全に、快適に、省エネで移動できるような小型飛行機が欲しい。

(出典:EE Times)

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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