空飛ぶクルマが現実になるか。課題は多いがワクワク感も大きい。個人的には固定翼型に期待している。

はじめに

空飛ぶクルマが全世界的に開発競争に突入している。多くはドローン型だけど、固定翼をつけたタイプも出ている。図1に示すように、空飛ぶクルマが注目される原動力は電動化によるコストの低減とバッテリー性能の向上だ。ここでは、空飛ぶ車の可能性と課題とそれへの対応策について記述してみたい。10日と11日には技術士の二次試験(筆記)があった。受験生もきっと想像もしない難問に苦労しながら奮闘したのだろう。受験生のつもりで、トライしたい。
図1 空と陸を結ぶ

(出典:ビジネス+IT)

コストの低減

現状の飛行機は、1マイル・一席あたりの運用コストは6ドルから8ドルだ。これがUAM(都市航空交通:Urban Air Mobility)になると0.5ドルから2.5ドルまでコスト削減できる可能性があるという。図2に示すように特に大きいのがパイロットのコストとインフラコストだ。パイロットのコストは初期費用としての削減が0.5ドルで、長期的な追加削減が1.0ドルという。どこまでのコスト削減が可能かは今後の課題だ。
図2 UAMのシート・マイルあたりの運用コスト($)

(出典:McKinsey&Company)

空飛ぶクルマ

空飛ぶクルマのフィージビリティスタディが盛んだ。垂直離着陸機(VTOL)の電気版でeVTOLとも呼ぶ。新しいコンセプトが社会に認められ活用されるようになるのだろうか。図3に示すように、まずは需要作りが重要だ。特に、国土が狭く、完璧主義な日本人の要求事項を満足できるレベルのサービスを実現できるかが鍵だ。そのためには、どのような飛行シーンをイメージするか。技術的な課題の解決、規制・制度の緩和、インフラの整備、社会受容性の獲得、そして安全・安心は運行の実現だろう。特に、自動運航まで視野に入れた青写真作りが重要だ。
図3 eVTOL実現に必要な要件

(出典:ITmedia)

UAMの業界で一歩世界をリードしているスタートアップ企業は、独Volocopter、中国eHang、米Kitty Hawk、独Lilium、米Opener、米Hoversurf、 米Joby Aviation、日本CARTIVATORなどがある。この中では、ドイツの航空機メーカーであるVolocopter GmbHが先行しているイメージだ。日本語的には、ボロというと「使い古して役に立たなくなった布」の意味となるが、同社は頑張っている。Volocopterは2011年に設立され、ドローンからヘリポート、eVtolのVotocityや長距離運航が可能なVoloConnectなどをラインナップして、エコシステムとしての提供を目指している。
図4 Volocopterのエコシステム

(出典:Volocopter)

新たな市場

米MarketsandMarketsの予測によればUAMの市場規模は2030年には152億ドル(約1.67兆円)と見込まれれている。これは機体に加えて、離着陸場等のインフラ、運航システムなどを含む資産だ。ただし、どこまで普及するかは、UAMの1台あたりの単価の低減が必須条件であり、航空機メーカーよりも、自動車メーカーへの期待が高い。

UAMのメリット:自由度の高い移動と時間短縮

これまで垂直離陸が可能な乗り物はヘリコプターだったが、ヘレコプターの利用料金は、例えば新木場の東京ヘリポートから成田空港までの3人乗りで21分、14.3万円と非常に高額だ。図5にヘリコプターとeVTOLの比較を示すが、eVTOLは少人数でかつ比較的近距離をターゲットにしている。需要が喚起されれば、コストも削減可能か。比較的自由度の高い利用と他の交通手段に比べた移動時間の短縮がメリットだろうか。
図5 ヘリコプターとeVTOLの比較

(出典:三井物産

UAMの課題と対応策

エネルギー消費

ドローンのような垂直離陸型で問題なのはエネルギー消費と騒音だ。しかし、米ベンチャーのKitty Hawkが開発した固定翼型の「Heaviside」では、米空軍が評価したところ、従来の電気自動車の1マイルあたりのエネルギーの半分未満しか消費しないと言う。固定翼があるので、特に水平飛行時のエネルギー消費が少ないのだろうか。電気自動車で移動するよりも、UAMで移動する方が経済的だと言えれば需要喚起に弾みがつくだろう。
図6 Kitty Hawk社のHeaviside

(出典:航空万能論

騒音

もう一つの問題は騒音だ。基本的にドローンはプロペラでの浮上なので非常にうるさい。ヘリコプターの騒音は80dB程度で、UAMだと63〜65dBだが、Heavisideは離陸時はUAMと同様だが、1000フィートまで上昇すると38dB程度という(出典)。これも固定翼の効果だ。

発射台

ロケットでも飛行機でも離陸時のエネルギー消費が大きい。これを抑制できないものか。色々調べても研究している状況を見つけられなかったけど、イメージとしては図7のような感じ。UAMを台車に乗せて、それをリニアモーターか何かで牽引する。そもそも失速速度(VS)、V設計巡航速度(VC)、設計急降下速度(VD)などのV速度が低いため、求められる性能は高くない。着陸はeVTOLらしく垂直着陸にして、ヘリポートではこんな発射台を用意すれば必要なエネルギーも大幅に削減できる気がするがどうなのだろう。
図7 発射台のイメージ

(出典:Twitter)

回生システム

Heavisideの飛行ビデオを見て感じたのは、着陸に向けては減速するが、その時にプロペラを風力で回転させて発電する回生システムを活用できないものだろうか。この辺りのノウハウも自動車メーカーの方が蓄積しているだろうし、これらが活用されるのも時間の問題だろう。アシスト自転車にも回生システムを導入したものが出ている。ブリヂストンでは前輪をモータ駆動、後輪を人力にする両輪駆動により電力の回生を実現している。ブリヂストンのUAMも期待できるかも。
図8 回生システム

(出典:ブリヂストン)

まとめ

100年前に予測した2000年の世界がある。自動掃除機や農業の自動化、建設の自動化などが予測されている。また、空を自由に飛べるようになっているだろうという予測もある。どの程度まで実現したと言えるのだろう。100年前にこれだけの予測をした人は素晴らしい慧眼の持ち主だったのだろう。今から100年後といえば、2121年か。どんな未来が実現しているのだろう。「ドローンによる空の産業革命」という記事を以前投稿したけど、UAMやeVTOLを活用する時代に向けては5Gの上空のエリア化が重要になるだろう。なお、アイキャッチ画像は法政大学が研究するUAMだ。
図9 未来予測

(出典:YouTube)

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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法政大学が研究するUAM
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