「隷属なき道」から学ぶベーシックインカムの可能性

はじめに

財布にお金が少なくなると浪費することがある。なぜだろう。たまたま読んでいた本の中に答えがあった。貧困はIQを13ポイントも低下させるという。貧困な生活をしていると、日々の生活をどうするか、毎日の食べ物をどうするかといったデータ処理に頭脳が占有されてしまい、冷静な判断ができなくなるという。これを「隷属なき道」の中でプリンストン大学の心理学者・エルダー・シャファーと、ハーバード大学の経済学者・センディール・ムライナサンは精神的バンドウィズと呼ぶという。日本語で言えば、「貧すれば鈍する」だろうか。しばらく読んでなかったので、読み返してみた。

ルトガーべレグマン

ルトガー・ブレグマン(Rutger Bregman)はオランダのジャーナリストだ。1988年4月26日生まれなので、日本的に言えば昭和生まれの31歳だ。 2009年にオランダのユトレヒト大学を卒業し、しばらくは大学で歴史を教えていたが、2012年にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校で歴史の修士号を取得している。ブレグマンは、オンラインジャーナルのDe Correspondentにベーシックインカムの記事を掲載して、そこで欧州報道賞にノミネートされた。オランダでもっとも注目に値するジャーナリストと評されているようだ。
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出典:ルトガー・ブレグマン – Wikipedia

隷属なき道

日本語のタイトルはなんだか硬い。しかし、原文の英語のタイトルは、「UTOPIA FOR REALISTS」だ。つまり、現実主義者のためのユートピアだ。この中でブレグマンは、理想的な社会を構築する方法論として、ベーシックインカムを提案している。週の労働時間も15時間を提唱している。週5日とすると、1日3時間。これは、かつて経済学者のジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes、1883年6月〜1946年4月)が2030年までに1週間の労働時間は15時間になると予測したこととも合致する。ブレグマンは、世界が直面する貧困の問題や貧富の格差も理解した上で、「あるべき社会に向けて前進するには、悪夢ではなく夢が必要だ。」と語っている。悪夢とは、日々我々がニュースで見る現実だ。そして、夢を現実にする一歩がベーシックインカムだと論じている。
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経済成長は幸せの条件か?平等こそが幸せの条件か

ブレグマンは、先の著書の中で経済成長と社会情勢の関係に相関関係がない。相関関係があるのは、不平等さの程度と社会情勢だという。この著書で示されている下のグラフでは日本は不平等さが小さく、社会状況が良い理想のポジションとある。これが本当なら嬉しいけどどうだろう。社会状況が良いことが、そのまま人々の幸せに繋がるとは言えないけど、社会状況と幸せ感も一定の相関関係はありそうな気がする。しかし、近年の日本における貧富の拡大や社会状況を考えるとこの当時とは違う状況にあるように感じる。図の左下に向かっていてほしいが、現実は逆のような気がする。
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出典:隷属なき道

生産性は過去最高でも雇用は減少

ベーシックインカム(BI)と人工知能(AI)との関係に着目して論ずる人が増えている。自分がBIを知ったのもAIの本を読み漁っていたときだ。なぜ、AIの本にBIが書かれているのかを最初は不思議に感じた。しかし、AIがどんどん進化すると、生産性は上がるし、企業の業績も向上する。でも、雇用は増えない。増えないどころか減少していく。だって、AIで処理した方が効率的だし、コスト削減になる。でも、その結果、市民や国民は社員は幸せになるのだろうか。AIの研究家が目指しているのはディストピアではない。ユートピアのはずだ。でも、このままいくとディストピアになってしまうのではないか。そんな罪悪感を多くのAI推進者が感じて、議論して、それを解決する方法を議論した時に注目されたのがBI。そんな風に理解している。
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出典:隷属なき道

まとめ

ベーシックインカムの勉強会に最近参加している。「ベーシックインカムへの道」を分担して解読し、解説してもらっている。この「隷属なき道」も読み応えのある図書だ。現在の課題を解決し、将来の世界がユートピアに向かっていくことを願う。そのための方法論は、BI以外にもあるのかもしれないが、BIも候補の一つだろう。これらの本では、BIの支給方法などには言及はない。しかし、個人的には、やはり現金で支給するのか、銀行口座に振り込むのか、商品券にするのか、それともデジタル通貨にするのか。そういった方法論に興味を持つ。自分自身はマクロ経済学よりも、技術者なので、社会の仕組みをどうするかに興味を持つ。BIの認知度や理解度はまだまだ低い。ベーシックインカムの議論では常に財源の問題となるが、これは本質なのだろうか。お金は天下の回りものともいう。4月4日の「ベーシックインカムはサーキュレータか」にも書いたけど、例えば政府や自治体が所属する市民や国民に一定の給付金を支給する。支給された給付金を使用するときに消費税等で一定金額を徴収すると、最終的には全ての給付金は消費税として支給したところに戻ってくるのではないか。そして、それまでの過程において市場経済を活性するのではないか。この点については、引き続き研究を進めたいテーマだ。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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