はじめに
テレビ番組でニラの効用などを特集していた。ニラは、餃子やレバニラやもつ鍋など身近な存在だ。ニラの起源を紐解けば縄文人にたどり着くかと思ったけど、その道はまだ不明だった。ただ、ニラは古代から庶民の健康に貢献してきたとは言えそうだ。健康を維持するには食へのこだわりも重要だ。
栄養価の高いニラ
ニラの効果は多様だが、特に言えば、図1に示すような殺菌作用や抗酸化作用だ(参考1)。特に殺菌効果の高いアリシンは、玉ねぎやニンニク、ネギ、ニラ、らっきょなど百合科の植物に多く含まれている。アリシンは、糖質の代謝に必要なビタミンB1の吸収を促す効果を期待できるので、B1が豊富な豚肉との相性は抜群で疲労回復効果もある。さらに血行促進効果に優れているので、体を温める効果もある。冷え性の女性には朗報だ。高血圧に悩む方にも朗報だ。アリシンを加熱するとアホエンという物質が生成され、このアホエンは血液をサラサラにし、動脈硬化を予防し、コレストロールを抑制する効果もある。素晴らしい。ニラの根元には葉先の4倍のアリシンが含まれているので、根元を落とすときは、2-3mm程度に留めたい。
図1 ニラの栄養と効能
もつ鍋ブームでニラの需要が急増
もつ鍋の魅力は、栄養素が高い一方でローカロリーなことだ(参考2)。もつは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンB1・B2など多くのビタミンをバランスよく含んでいる。もつ鍋で、ニラやキャベツなどの野菜と一緒に食べれば理想的な料理だ。特に、妊娠中の女性にはお薦めだろう。
図2 もつ鍋は健康食
ニラの季節変動
ニラの旬は春だ(参考3)。特に3月から4月にかけて最初に収穫されるニラは1番ニラと呼ばれ、みずみずしくて甘さがたっぷりという。これもテレビの特集で解説していたが、そんな1番ニラを選ぶコツは茎が太いもの。直径1cm程度ならほぼ1番ニラと思って良いようだ。1番ニラを刈り取った後に生えてくるのを2番ニラ、その後を3番ニラと呼び、7回ぐらいまで収穫できるという。しかし、卸売価格はそんな収穫時期は安く、逆にもつ鍋など冬の時期に高くなる。3番ニラ以降は甘さよりパンチが効くようになるので、もつ鍋には最適かもしれない。
図3 ニラの月間卸売価格の変動
日本が世界に発信する食品機能論
我が国には古来から医食同源の考えがあった。医者をしていた義理の祖父の持論は、「病気になっても薬を飲むな、病院にも行くな、気合いで直せ!」だった。これは考えてみれば至極真理をついている。病気を治すのは薬でも病院でもない。身体に備わった自然治癒力だ。この自然治癒力を最大限に発揮するのは精神力、つまり気合いだ。しかし、気合いだけでも健康は維持できない。やはり適切な食事が大事だ。1984年には、図4に示すような食品機能論を日本が世界に発信したという。これは、からだに対する機能を一次機能(健康の維持・増進に必要な栄養素の機能)、二次機能(食品のおいしさを生み出す嗜好成分、たとえば味や香りの成分の感性)、そして三次機能(病気にならないようにする非栄養性成分機能)の3つだ(参考4)。
図4 食品機能論(1984年)
抗生物質耐性株の除菌にも有効
ニラにはアリシンが豊富にあり、疲労回復に効果があるが、それと同様に重要な機能が殺菌機能だ。しかも、抗生物質が効かない細菌の除菌にも有効だ。除菌薬と併用しても薬の効果を阻害しないので安心だ。これが専門用語で少し難解だけど、ニラに含まれるメチインから生じるS-メチルメタンチオスルフィネートだ(参考5)。
図5 S-メチルメタンチオスルフィネートの化学式
ニラの古語は美良(ミラ)か
長野県諏訪市の荒神山(こうじんやま)遺跡には、縄文時代中期の竪穴住居からエゴマやシソが発見されている。種子をこねてクッキーのようなものを作っていたようだ。ニラに関する記述は、古事記では加美良(かみら)と呼び、万葉集では久々美良(くくみら)と呼んだようだ。このみらが変化して「にら」になったと言われれている。古代から根付いているので、方言もさまざまだ。静岡ではニラネギ、新潟(中越)ではジャマ、奈良(山辺)ではトチ、沖縄(那覇)ではチリビラなどと呼ぶようだ(参考6)。
まとめ
稲作は弥生時代に始まり、縄文時代は狩猟の時代というの定説だ。日本の主要な栽培植物はアジアからの伝来とされる。ニラはそんな古代の時代から世界で愛されてきた。特に寒冷地を生き抜くには体を芯から温める食料として重宝されてきたようだ。しかし、縄文時代の遺跡から出土したマメ科植物の種子のDNAを解析することで、どの時期から栽培が行われていたのか圧痕(あっこん)研究が解明しつつある。日本における栽培植物起源だけではなく、日本の起源や縄文時代の生活や歴史観も明確になるかもしれない。「縄文時代にもワインを作られていたこと」は以前にも投稿したけど、そんな古代のロマンを感じながらニラ料理を楽しんでみるのも一興ではないでしょうか。
以上
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拝