はじめに
ゴルフは簡単そうなスポーツに見えるけど、なかなか難しい。以前、「ゴルフスウィングは側屈が基本!これに回転を加えて完成か!」を投稿した。今回は、実際にレッスンプロにこのコンセプトを説明したところ、賛意を得るだけではなく、注意点なども指導いただいたので、そのような点を含めて投稿できればと思った。基本的には、ゴルフスウィングを因数分解し、それぞれの因数の特性を理解した上で、組み合わせて一段高いレベルのスウィングに昇華していきたいと思う人の参考になれば幸いだ。
ゴルフスウィングを因数分解する
あるレッスンプロからゴルフスウィングは「でんでん太鼓」のようなものと教わった。しかし、身体の回転を基本的な動作と考えると、どうしてもオーバースウィングになりやすいこと、身体の捻転の歪みから右膝を痛めたこと、アプローチでクラブを手で操作しようとしてざっくりをしがちだったり、いわゆるひっかけが出てしまうという欠点があった。これをなんとかしたいという気持ちからゴルフスウィングを因数分解したいと思った。大きな動作から小さな動作まで様々な動作の組み合わせで構成されているけど、主な動作は次の3つと考えている。
側屈の動作
今回の中心的なテーマだ。以前、「究極の身体、魚類の動きから人の動きを理解する。」にも投稿したが、ひとは脊椎動物であり、脊椎動物の大先輩は魚だ。魚の動きが、両生類のトカゲとかワニの動きになり、哺乳類にもつながっている。最もパワーが出る動きだ。最近はゴルフの練習を行うときに、前屈の体操に加えて側屈の体操を必ず行うようにしている。そのときに、身体はまず真っ直ぐに立ち、両腕を真下に伸ばして、ドライバーを正面にまっすぐ水平になるようにグリップする。その状態で右に左に側屈すると、クラブが半円柱の表面をなぞるような動きになる。
(出典:体幹側屈の図を筆者が加工)
前傾
まずは直立した状況で側屈したら、次は前傾だ。どの程度まで前傾するかは、クラブによる。たとえば、ドライバーなら30度程度と言われている。この前傾をした状態で回転せずに、側屈運動だけをするとどうなるか。直立の時は腕の長さが半径の半円柱をなぞるような動作だったけど、前傾して側屈運動をすると、クラブは円錐の表面をなぞるような大きなスウィングになるはずだ。
(出典:モダン打法)
体幹の回転の動作
左右の側屈だけでは当然ながらゴルフのスウィングにはならない。前の図のように前傾して側屈運動をすると、クラブは円錐の表面をなぞるような大きな動作になる。頭を左方向、両腕を右方向に動くように側屈する。多分、両腕が水平になるぐらいまでが限界だろう。この場合に右肩が上、左肩が下になっているはずだ。その状態で胸をターゲットの後方に回転させるとトップの形になる。上半身に力が入っていると捻転できない。肩の力を抜き、お腹の力も抜き、どこにも余分な力が入っていない状態がベストだ。左の側屈の後は、右に側屈だ。頭が右方向、両腕が左方向だ。ギリギリまで側屈したら、最後にターゲット方向に胸を向ける。この左への側屈と右への側屈を繰り返すとスウィングの基本運動が完成する。正常な関節の稼働範囲は、前傾が60度、側屈は左右にそれぞれ20度、回旋は左右それぞれ50度とされている。
(出典:McDavid)
両腕の上げ下げ
実際に前傾して、側屈運動をしながら回旋運動をすると、慣性の力が働き、トップの位置やフィニッシュの位置にクラブが収まる。このときに注意すべきはオーバースウィングだ。体幹の動きには限界がある。前傾角度はクラブに依存するが、限界まで側屈して、上半身を限界まで回旋させる運動を繰り返すというのはシンプルな運動のはずだが、厄介なのは両腕の動きだ。マスターズの提唱者であるボビージョーンズによると左腕はアドレスからトップからフィニッシュまで伸ばしたままを維持すると解説していた。アドレスで作った両腕と肩の三角形をトップからフィニッシュまでキープしたい。これがなかなか難しい。特に初心者はトップで我慢できずに右脇が空いて両腕が曲がって、オーバスウィングになり、インパクトからフィニッシュでは逆に左腕を維持できずに左肘が引いてドスライスになるか、それを嫌がってフェイスを無理やり返して引っ掛けになる。左右の側屈だけの運動の場合にはトップからフィニッシュまで三角形を維持することは容易のことを思い出してほしい。スウィングの基本動作を回転運動ではなく、側屈運動とすることで三角形の維持が容易になる。
(出典:ゴルフブログ)
各動作の固有周波数
前傾の姿勢を維持しながら、側屈の動作と回線の動作、そして両腕の上げ下げを同時に行うところにゴルフスウィングの難しさがある。それぞれを10往復するのに要する時間を10で割った時間を測定してみた。これは自分の場合だ。男女差や身長差、柔軟性などでも異なると思うけど、側屈>回旋>両腕の構図は同じだろうと思う。ただ、この周期は暫定値であって、もっと前提条件を明確にして精緻に測定する必要がある。
側屈の動作 2.3秒(直立時)、2.6秒(前傾時)
回旋の動作 1.1秒(直立時)、1.6秒(前傾時)
両腕の動作 0.6秒(直立時)、1.1秒(前傾時)
調整方法
側屈と回線と両腕の動作を組み合わせるが、その周期が異なる。これを同調させる方法にはタイミングで調整する方法と、周期を調整する方法がある。基本はタイミングで調整する方法が正解だけど、初心者の場合には、側屈の動作や回旋の周期を両腕の動作の周期に合わせるとタイミングが合うので、この方法に陥りやすいけど、体幹を使わずにいわゆる手打ちとなるので、パワーは出ないでの飛距離がでず、方向性が安定せず、引っ掛けやドスライスなどミスのオンパレードとなってします。それぞれの動作はしっかりと行って、タイミングで調整すべきだ。
各動作のタイミングで調整する
では、どのようにタイミングをとるか。どスライスの超初心者を卒業して、それなりにスウィングできるようになったときに出るのが引っ掛けだ。これが発生する理由は色々あるけど、3つの動作の周期の差を理解せず、トップで3つの動作を同時に始めると引っ掛けしか出ない。これを嫌がって、補正しようとすると、左肘をひいた歪なスウィングとなる。タイミングを合わすのは、スタートではなく、インパクトの瞬間だ。インパクのタイミングで3つの動作が同期することで力強くかつ正確なショットが可能となる。これを実現するのが、いわゆる「ため」だ。このタイミングを習得するには、素振りの練習が最適だし、片手でのスウィング練習や片足での練習も有効だ。個人的には、左への側屈マックスのトップから側屈のないハーフウェイダウンのところまで両腕を水平に維持するような意識でタメるのがコツだと思っている。
(出典:ゴルフサプリ)
同期させるドリル
水泳に夢中になっていた頃によくトライしたのが、下半身だけで25mを往復し、次に上半身だけで25mを往復する練習だ。これの利点は色々あるが、それぞれの動きや効果を理解できるだけではなく、下半身だけで泳いでいるときには上半身は基本的に休んでいるので、長距離を泳いでも疲れないことだ。同じように、ゴルフスウィングでも片手の練習や片足の練習を取り入れるようにしている。コーチに聞くととても良い練習だと褒められた。ただ、大ぶりは禁物だ。ハーフスウィングの練習をするぐらいのつもりでバランスを崩さないことを主眼にして練習する。練習場では平面だけど、実際のゴルフ場はさまざまなアンジュレーションがある。それに対応しやすくなるのもメリットの一つだと思う。
(出典:ゴルフダイジェスト)
注意すべき背と肩と頭の位置
ゴルフスウィングで注意すべきは猫背になることだ。普段から猫背の人でゴルフの上手な人はあまり見たことがない。しかし、猫背とはなんだろう。吉本プロによると前傾が悪いのではなく、肩甲骨が開いていることだという。背中の肩甲骨が近づいている状況だという。肩が持ち上がりがちだけど、肩を落とすことも大事だ。
(出典:吉本巧のYouTubeゴルフ大学)
まとめ
最近、地下鉄のホームや通路に星飛雄馬のポスターが貼ってあったりする。巨人の星の悲劇のヒロインだ。いつも感じるのだけど、野球を卒業して、プロゴルファーに転向していたら、すごいゴルファーになったのではないかと思う。ボールの球種が軽いのが致命的な欠点と指摘されたけど、何よりも魅力なのは精度と集中力の高さだ。アマチュアで20%、プロで10%、トッププロで5%の精度と個人的には思っているが、星飛雄馬なら限りなく0%に近い精度でショットするのではないか。それでも風とかアンジュレーションとか、芝目があるので、ゴルフは簡単ではないけど、どんなスウィングをするのかを想像するだけでも楽しい。側屈と回旋と基本とした綺麗で力強く、かつ精度の高いショットを繰り出すような気がする。
以上
最後まで読んで頂きありがとうございます。
拝