防災(その2):熊本地震からの復興、住民が撮影したありがとうの動画が感激的すぎる。

はじめに

日本技術士会の防災支援委員会の主催で熊本大学の田中尚人准教授のお話を聞く講演会に参加した。非常に興味深い内容が多かったので、次の2回に分けて投稿しており、今回はその2回目だ。なお、これは受講メモではなく、講演を拝聴して感じたことや、ネットで裏取できたことを記載しているものなのでご承知おき頂きたい。

防災(その1):まちづくりと復興を支えるのは住民の郷土愛か(前回)
防災(その2):熊本地震からの復興活動の事例(⇨ 今回)

益城町立木山中学校での活動

まず紹介されたのが熊本県益城郡益城(ましき)町の町立木山中学校での「復興は木山中からのプロジェクト」の活動だった。

益城町立木山中学校

木山中学校は、熊本県の熊本市の東に隣接する人口約3万人、面積65.68km2の町だ。熊本空港は益城町の北西にある。益城町には益城町総合運動公園を挟んで、益城中学校と木山中学校がある。益城町には高校はないけど隣接する熊本市には県立高校も県立大学もあるので、進路に困ることはなさそうだ。

(出典:Google Map)

学生による動画作成

復興を目指した田中教授をはじめとする関係者が取り組んだのは中学生による映像作品の制作だ。2016年4月14日の熊本地震の翌年の2017年8月27日に「みんなの熊本城プロジェクト」のワークショップが開催された。そこでの話し合いを受けて、映像制作に取り組むことになる。通常ならプロが集まって作成する。予算をとるようなアプローチになりがちだけど、主役を生徒としたのが素晴らしい。生徒を1班6人の15のチームに分けて、それぞれが30秒の動画を作成し、それを編集して作品とするアプローチだ。今時の生徒は、スマホやタブレットで映像を作成することはお手のものだ。普段なら勉強のためしか使えないタブレットも積極的に活用して、映像撮影する。作品を作るには、コンセプトをまとめたり、シナリオを作ったり、被写体になったり、撮影したり、映像をまとめたり、音楽を重ねたり、プロットを書いたり、いろいろな役割がある。作品を作るたびに役割分担が進み、チームとして進化するのを実感されたという。これこそが生徒たちの成長だと思う。ワークショップでの写真を公開したいと学校に相談すると個人情報やプライバシーの問題もあるので難しいというのが最初の見解だった。しかし、担当の若い先生方が頑張って、保護者に趣旨を説明し、個人情報は掲載しないことを約束して、保護者のOKをもらい、公開することができた。「やはり諦めないで粘ることが大事だ」と説明されていた。今では、YouTubeやTicTocに木山中学や益城町の映像が溢れている。下の動画益城町が編集して感謝の気持ちを表した動画だ。YouTubeを見ていて涙腺が緩みそうになった。

(出典:YouTube

TicTocへの動画投稿

先のYouTubeの震災復興動画「熊本地震から5年 益城町からありがとう」は生徒が考えて、撮影して、編集した動画をボランティアの人の協力を得ながらまとめたものだ。熊本地震からの復興を全国に発信する。テーマは「ありがとう」だ。 震災直後から、全国あるいは世界から益城町に駆けつけて支援してくれた多くの人への感謝の気持ちに溢れている。炎天下のなか重いがれきを運び片付けてくれた人、避難者でいっぱいの避難所をきれいに掃除してくれた人、おいしいご飯を炊き出しに来てくれた人、震災で壊れた道路を右往左往しながら物資を送り届けてくれた人、心配してくれた人、支援してくれた人、そんな全ての人への感謝の気持ちをまとめたものだ。あの頃中学生だった子供たちが作っているのだろうかYouTubeだけではなく、TicTocなどで益城と検索するといっぱい楽しい映像が元気な映像に溢れている。SNSはマイナスの面ももちろんあるけど、有効に活用すればこんなふうにみんなを元気にすることもできる。
(出典:ameblo

益城町新ふるさと総合研究所

復興まちづくり支援施設(仮称)

これは当日、質問しようと思って質問し忘れたものだけど、熊本県益城町の地震復興支援施設が2022年1月完成を目指して昨年3月から整備が始まっていた。熊本地震で被災した庁舎を新たに建て替えた新町庁舎の南側に「復興まちづくり支援施設」(仮称)を整備する計画だ。施設は下の写真のように、木造平屋、延べ床面積398平方mで、備蓄倉庫や会議室、多目的室を備えている。事業費の半分を国が補助する形で、さらに交付税措置もあり、実質的な地元の負担は建設費3億1,741万円の15%程度という。

(出典:熊本日日新聞

研究員募集

復旧は行政中心になるけど、復興は住民中心であるべきだ。何をすれば良いのか分からないことも多いけど、田中教授は、「やりたいことをやれば良い」という。自分の子供の成長は嬉しいが、自分の子供だけではなく、「近所の子供の成長が嬉しい町」を目指すのもありだ。「地域のおばちゃんが社長になる町」などもワクワクする。高齢の人も子供も働き盛りの人も、それぞれがやれることをやれる範囲で貢献することで町の復興に繋がるとすれば、現実には色々問題も生じるかもしれないけど、とても素敵だと思う。
(出典:益城町

我が村・我が町

講演終了後に質問を求められたので、挙手をして質問をした。講演の中でも徳島県の「神山町」の話が出てびっくりした。神山町では、国立でも都立でもなく、日本初の私立の高専を神山町に創出するという「神山まるごと高専プロジェクト」が進んでいて、このブログでも何度か投稿した。このプロジェクトには個人的にも応援していて、来年4月の開講に向けて準備がカウントダウンだ。質問したのは、「益城町や神山町のように地域で街づくりを積極的に取り組んでいる事例があるけど、これを全国に横展開するためのポイントはなんでしょうか?」という内容だ。田中教授からの解答は、「都道府県や市は規模も大きく体力もある。しかし、町や村の中には近隣の行政区画に吸収されず独自の展開を進めているところがある。単独で展開できない場合には、近隣と連携すること方法もあるけど、近隣は仲が良いとは限らないので一つ飛ばした近隣と連携するなども面白いかもしれない。」といった内容だった。以前、茨城県の美浦村でのお仕事を担当したことがあるけど、ここはJRAの施設もあり、村としての収支は健全で元気で、若い夫婦に優しく、村には子供たちが溢れていた。地域それぞれに特色があり、その特色を活かしながら、独自のポリシーで何かを始めるには、町とか村の単位で生き残って頑張っているところは有望かもしれないと再認識した。

自然災害対策技術展

残念ながら今日と明日は都合がつかないけど、パシフィコ横浜では高齢の震災対策技術展を開催している。田中教授は本日も講演されている。時間を確保できる人はぜひ足を伸ばしてほしいと思う。個人的にも2022年度で再雇用も終了するので、その後は、大学院の学生になるか、開業している技術士事務所の仕事を広げるか、世界放浪の旅に出るか、それとも会社を卒業した一技術士として、防災活動に参加させてもらうか。これから活動しながら考えていきたいと思う。

(出典:震災エキスポ

まとめ

昨日の日本技術士会の講演会を拝聴して感じたことを2回にわたって投稿した。今回は益城町木山中学校での活動や、田中教授が所長をされている益城町新ふるさと総合研究所を中心に投稿した。2015年から2018年までの約3年間は名古屋に単身赴任して、関東・中部・北陸を中心に全国の小中高校を訪問して、ケータイやSNSの使い方、メリットもあるけど注意すべき点もあるよね、という話をしていた。その中で、校長先生と話をする機会も多く、スマホの利用を規制するのではなく、学生にテーマを与えて動画のコンテストなどをしたらびっくりするほど素晴らしい作品が出てくるし、子供たちも成長を実感すると思うという話をしたが、「そうだねえ」という回答止まりが多かった。田中教授はピンチをチャンスに変えることが大事だと提唱されている。熊本地震というピンチを乗り越え、ひと回り逞しくなった益城町の子どもたちや大人がさらに益城町の発展を支えていく姿が目に浮かぶようだ。SNSも包丁や自転車と同じだ。使い方を間違えたら大怪我をするかもしれないけど、ルールを守ってちゃんと使えば美味しいお料理を作ったり、遠くまで出かけたり、世界の多くの人に情報発信ができるものだ。そんな活動を地道に続けている益城町の関係者に敬意を表します。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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