読書メモ:気持ちや感情や行動は全て生き残るために設計された遺伝子の結果か。

はじめに

感情や気持ちなどをキーワードにして幾つかの図書をピックアップしようとして、4つの図書に巡り合った。実際はこの倍以上の図書をざっと読んだけど、面白いと思ったのがこの4冊だった。特に最初の図書での遺伝子が生き残るために人を設計して子孫に繋いでいるという味方は興味深いと感じた。また、いじめやユーモアや騙しもそれぞれに問題はあるものの、ヒトが生きていく上での必要な現象なのかもしれないと感じた。皆様はどのように感じますか?

ヒトの脳にはクセがある/動物行動学的人間論

著者:小林朋道
出版:新潮選書
要旨:「ヒトの脳は進化の産物としての器官だ。自分は我々の身体の中の遺伝子たちによって設計・製造された遺伝子たちの乗り物だ。」とか、「死にゆく個体から新生の個体へと、不滅の寄生虫のように長い時間をかけて移動し続けてきた遺伝子たちが一時的に作った乗り物としてのヒト」という独特の捉え方をしている。「感情や心理を生み出すヒトの脳は、狩猟採集生活という環境の元での生存・繁殖に合致したかなり偏った性質を持つ器官だと思う。」と述べている。また、感情も思考も行動もその働きを設定しているのは遺伝子であるという、R・ドーキンス氏の「利己的遺伝子説」を紹介している。ミトコンドリアは、寄生した細胞にエネルギーを提供することで互恵の関係で維持されている。そして、「人間の遺伝子も本質的には人間を操る寄生虫である(p139)」と結論づけている。最後に意識についても言及している。意識とは脳内の意識相関神経(NCC)がその情報と結びついているときだけ我々に感じられるものである(p165)」とし、NCCを突き止めるのは容易だが、NCCからなぜ意識が生じるかを研究するのは難しいハードプロブレムだ(p166)」と紹介している。著書は生き残るための認知能力と理解する。つまり、危険が捕食者がそばにいて、それを認知するから生き延びることができたとする本能的な能力と言う意味だ。
感想:人類が誕生したのは500万年ほど前で、ホモ・サピエンスの誕生は20万年ほど前だ。そして、5万年ほど前に文化のビッグバンが起こった。つまり、狩猟採集用の道具や装飾品に獲物の種類や動物の習性、生体などを考慮した工夫がなされるようになったと、イギリスレディング大学の考古学者スティーヴン・ミズン(1960年10月16日生)教授は提唱する。この頃から脳のモジュール相互間での情報の交換が活発なったという認知流動説だ。また、本書はさまざまな論点を与えてくれているが、その一つが脳の機能だ。例えば、悲しみの役割として、「人間の脳には自分が置かれている状況や自分が感じている心理・感情をモニターするという特性を備えている(p108)」と言う。ヒトの気持ちの分かるヒトでありたいと思うが、これが意外と難しい。また、恋愛感情や嫉妬の感情は一夫一婦制の維持につながる本能的なものだ(p111)と言う。そうかもしれない。そして、要旨で書いたようにこれはヒトの遺伝子がヒトの子孫を増やすために意図したことだと言うのが著者の主張だ。病気になって発熱したり下痢したりするのもヒトを守るために体内生理システムを設計したからだ(p112)と言う主張は面白いと思う。

なぜ攻撃してしまうのか/人間の攻撃性(Human Aggressionの第二版)

著者:Russell G. Geen
訳者:神田信彦、酒井久美代、杉山成
出版:ブレーン出版
主旨:攻撃とは意図をもってある有機体に害を与えるという目標に向けた反応だと言うDollanrdの説を紹介している(p3)。また、有名なテストステロンとの関係も紹介(p17)している。直接的連合の経路として、フラストレーションなどの刺激がネガティブ感情を誘起させ、攻撃的な行動や怒り・恐れの感情、敵意的思考などの認知行動につながる(p47)と言う。
感想:本書ではいじめ問題にも言及している。いじめの被害者は、平均的な生徒よりも、心配性で、不安定で、慎重で敏感で、引っ込み思案な傾向を持っているとOrwellの研究を紹介している(p140)。被害者は抵抗はしないが、引き下がって、いじめっ子を避けようとする。加害者は暴力を好み、共感性に欠け、教師・親・兄弟にも攻撃する。いじめ行動への反応は4つのタイプに分かれる。いじめを囃し立てる強化者と手下になる援助者と被害者の味方になる擁護者と巻き込まれないようにする傍観者だ。いじめを解決する最良の方法は男女ともに相手にしないこと。逆にいじめを加速する行動が男子と女子で異なっている。男子は仕返しをすることで、女子は無力になることだった。しかし、個人的には、やられたらやり返すような生徒をいじめようとしないと思うけど、それができる男子はそもそも強いからいじめの対象にならないのかもしれない。やはり男子も女子も強くなることが求められているのかもしれない。

ユーモアの心理学

著者:アブナー・ジッブ
訳者:高下保幸
出版:大修館書店
主旨:笑いは一般に快い気分をもたらすが、同時に生理的、社会的、情動的、知的側面を持つ複雑な現象である。そして、例えばユーモアに関しては、ユーモアを作る能力と味わう能力があると言う。本書では、まずユーモアの機能として、攻撃的機能、性的機能、社会的機能、防御機能、そして知的機能の5つに分けて論説している。ユーモアの多くは攻撃や性に関するものだ(p6)。なぜかといえば、戦いで勝者は笑い、敗者は泣くためだ。性的なユーモアで有名なものはクーリッジ効果と呼ばれるものだ(p37)。これは雄牛が立て続けに雌牛に挑む姿にクーリッジ夫人が目を輝かせ、「その度に相手が変わるからだよ」とクーリッジ大統領が答えたと言うエピソードだ。
感想:ジョークの醍醐味はジョークを聞くひとの脳を使って隠された意味を伝得ることだ。逆説的だけど隠すことによって興味が増すこともある。渡辺淳一の著書のタイトルにもあるが、「秘すれば花」だ。また、ユーモアを創造できるかどうかという縦軸とユーモアを楽しむことができるかという横軸で見ると、多くの人は想像できないけど楽しめるゾーンにいるという。ユーモアとパーソナリティとの関係は古くて新しい問題だけど、ドイツの心理学者ハンス・ユルゲン・アイゼンク(1916年3月から1997年9月)が提唱したパーソナリティ論は興味深い。日本でもお笑い芸人は人気者だ。ヒトが笑いを求めるのは、そこに運命共同体としての絆や喜怒哀楽への共感を感じるからではないだろうかと思う。

(出典:はてなブログ

人はなぜ騙すのか/狡智の文化史

著者:山本幸司
出版:岩波書店
主旨:狡智は悪くいえば狡賢い、良くいえば機転が効くとなるが、人間知性の働きである。日本神話においても素戔嗚尊(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治するときも正々堂々と戦ったわけではなく、酒で酔っ払ったところを退治している(p34)。R・バーンとA・ホワイトは、動物の騙し行動について4つの要件を定義している。それは、通常の行動の範囲であり、たまに用いられるものであり、誤解されるものであり、何か得をするものと言う内容だった(p216)。
感想:狩猟民族の時代では、獲物を狩る時に知力を尽くす。有り体に言えば、罠を仕掛けて騙して退治する。人とひとの戦いの時にも智略という名の下に正面攻撃ではなく、背後や横からの攻撃や水攻め、火攻めなどを駆使したと言う歴史がある。

まとめ

今回ピックアップした4つの図書の主旨やそれを読んだ感想をまとめてみた。強烈な印象を持ったのは、我々が感じるさまざま感情や行動は全て遺伝子によってあらかじめ設計されたものであって、その目的は生き残ること。そのためには子孫繁栄と生命の保護だ。もちろん遺伝子には意思はないのかもしれないけど、エントロピーの法則のように、生命体は増大し続けるように設計されているような気がする。ソマチットについては、これまでの何度か投稿しているが、東大の図書館にはソマチットという単語を入れてもなかなか図書は出てこない。しかし、生命の起源や地球の歴史といった学術書は多数拝読できる。地球が46億年前に形成し、生命体が38億年前に誕生したとされるが、生命の期限についての仮説はあるが、まだ決定的なことはわかっていない。意識がなぜ生じるのか、感情がなぜ生じるのか。ロボットは将来意思や感情を持つのか。そんな疑問が解明されるようになるのだろうか。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

 

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