ICB講演会:キャシー松井さんが語る日本を元気にするウーマノミクス。

はじめに

今日は、ICB主催の講演会を拝聴した。講演者はゴールドマンサックス証券で副会長まで勤め上げたキャシー松井さんだ。語り口は穏やかで笑顔を交えながらの講演だった。生い立ちから始まり、これからの日本がもっと元気になるには何がポイントかといった話まで質疑応答を交えながら進んだ。全てを紹介することはできないが、印象に残った点のみまとめておきたいと思う。

ICB

今回の講演会は、ICBの主催だ。ICBとは、特定非営利活動法人国際人材創出支援センター(Centre for International Capacity Building)の略だ。国際的に活躍する人材、目指す人材を育成・支援することを目的としたNPO法人だ。ICB理事長の松平恒和さんはKDDIの元常務国際本部長だ。ICBの監事を務めている津川さんからの紹介でこの講演会を知り、ぜひ聞きたいと思った。

(出典:ICB)

キャシー松井

本日の登壇者は、ウーマノミクスの提唱者のキャシー松井さん(1965年生まれ)だ。ウーマノミクスは安倍総理大臣(当時)の頃に女性活躍の提言を後押ししたコンセプトだ。前述の通りゴールドマン・サックス(GS)証券株式会社の副会長まで勤め上げた。2011年5月21日には、下の動画のように、TEDで講演をしている。まずこれを見れば松井さんの熱い思いを理解できるのではないか。

(出典:YouTube

アンディ松井のアントレナーシップ

キャシー松井の父、アンディ松井さんは奈良県五條市の農家の長男だった。1961年に農業実習生として渡米する機会を得る。一度戻って同じ五條市の女性と結婚し、長女を授かるが、手持ちの現金1万円で再渡米する。1週間で日本の平均給与1ヶ月分を稼ぎ、1年後には家族を呼び寄せて永住を決意する。最初は菊の栽培で事業を始める。1970年台の石油ショックを乗り切るためにバラの栽培に挑戦して大きく成長する。さらに、アンディ松井さんが63歳の時には蘭の栽培のチャレンジして、全米の2割を占めるまで成功する。しかし、アンディ松井さんの凄いところは、苦しかった時に支えてくれたアメリカに恩返しをしたいと、1億ドルを越す財産を子供には相続せず、地域の貧しい子供たちが大学に進学するための奨学金の基金としたことだ。これまでに、240万ドルを拠出し、60人を大学に入れた。その多くは農園のあるサリーナスに住むメキシコ移民の家庭で育った貧しい若者たちだ。アンディ松井夫婦は共に敬虔なクリスチャンだ。事業が軌道に乗らず苦しい時代に、子供を保育園で無償で面倒見てくれたり、子供た生まれると教会から衣類がプレゼントされた。それが本当にうれししく、ありがたいと深く感謝したのだろう。素晴らしいと思う(出典)。

転機1:ハーバード大学から日本に交換留学

キャシー松井さんは、幼少期から週末には農園を手伝った。手袋を5重にして、薔薇の調える作業を手伝ったという。それでも何時間も何時間も作業しているとバラが手に刺さる。今でもバラは好きではないという。姉がハーバード大学に入学する。親からはハーバード大学に合格できなければ農園を継がせると言われ、猛勉強して合格した。ハーバード大学を卒業して、大学院に進むつもりだったけど、日本の大学に留学する奨学金をもらうことができて、ICUで日本語を勉強し、2年目には神戸大学の大学院の2年目に編入する。神戸から奈良は近いので何度も通い、自分のルーツを見つけた。その頃ドイツ人の学生と恋に落ちて結婚する。一度アメリカに戻るが、日本に戻り、1男1女を授かる。

(出典:日経ウーマン

転機2:癌治療からの職場復帰

日本に戻ってバークレー証券を経てGS証券で得意の英語を駆使して、アナリストの道を駆け登り、2000年にはアナリストランキングで1番になる。二人目の娘も生まれる。しかし、好事魔多しだ。母も祖母も乳がんなので心配していたが、乳がんが見つかる。日本語での医療用語は難しくてチンプンカンプンだったので、4歳の息子と0歳の娘を連れてアメリカの実家に戻り、8ヶ月会社を休んで養生する。幸い、完治したが、その時に、職場復帰するかどうかに悩んだ。専業主婦に傾きかけた時にドイツ人の義理の母から「専業主婦の道も良い。でも、もし仕事に復帰して幸せを感じるなら、子供はそれを感じる」という言葉で背中を押してもらって復帰を決意したという。復帰した職場の同僚は皆優しく、心のケアもしてくれた。そのおかげで20年もGSで働けたと感謝の気持ちを述べられていた。本当にそうだったのだと思う。

ウーマノミクス

キャシー松井さんは2019年にGS証券を退職する。しかし、その前にキャシーさんの父アンディさんがアルツハイマーに侵されていることを知る。結局、退職の3週間前にアンディさんは他界されるが、これがターニングポイントだった。日本人は勤勉で、優秀で、頑張る。それなのに失われた20年で経済は低迷している。人口の半分を占める女性がもっと社会で活躍できれば日本はもっと元気になるというのがキャシー松井さんの信念だ。

(出典:アマゾン

MPower Partners

GS証券での経験をもとに志を同じくする同志とESGを実践する人たちを応援するファンドを立ち上げた。MパワーのMは、松井さんのMであり、村上さんのMだ。村上さんのお母さんはなんと47歳の時に島根で起業されていて、起業家のDNAを受け継いでいるのが、このMパワーだ。

(出典:MPower Partners

質疑応答

理事の柏木茂雄さんが参加者からの質問を受け取り、松井さんに投げかけ、松井さんが丁寧に説明いただくという感じで進行した。記憶に残る主要な質問とそれに対する説明は次のような感じだった。

パワーの源泉は両親の背中

キャシー松井さんの溢れるパワーの源泉は何かという質問。やはり両親が奈良を離れてカリフォルニアの異国の地で、農業を始め、多くの困難に対峙して、頑張る姿を見てきたのが、源泉となっているという回答だった。親の背中を見て子供は育つものというが本当にそうなのだと思った。

宗教は心の穴を埋める

両親は奈良にいることからクリスチャンだった。家族で日曜日には教会に行くのが日常だった。でも、乳がんの治療で病院では治療してくれても心に穴が空いたような状態は治らなかった。アメリカに戻って教会でお祈りすることで精神的に回復した。信仰からエネルギーが沸き起こったという。

人生100年時代を乗り切るには多様性を理解する

若い人に起業を勧めるとしたらどのようなメッセージを伝えたいかという質問だった。日本は治安が良いし、食事も美味しいし、空気も綺麗だ。日本で生活することは楽しいし、楽だけど、成長するには苦労に直面することも必要。子供たちには、世界には色々な人がいることを教え、見せてきた。ハーバード大学での収穫も学問よりも、多様性を学んだことが大きい。インドやアフリカからの留学生など多様な人との交流の中で成長できた。大企業を勤め上げるのも一つの選択肢だ。しかし、平均寿命が伸びて、人生100年時代には、簡単ではないけど自分の専門性を磨き、世界で勝負することもぜひ考えてほしい。

オープンマインドでアウトプット

Mパワーパートナーズでは資金を提供することが主な事業と思われがちだけど、実は、それよりもさまざまサポートをすることの方が重要だと感じる。例えば、お客さまを紹介してほしいとか、人事部長を任せる人を紹介してほしいという要望も多い。ウーマノミクスでも提案したけど、日本には優秀な女性の人材が活用されていない。女性の社会進出が増えることで社会はもっと活性化する。女性進出を後押しするための課題は、女性自身の自信が足りない。また、仲間の作り方は男性の方がうまい。優秀な女性がもっと自信を持てるように、励ます。励ます。そして、励ます。これが大事。また、社会での男女平等には、その前に家庭内での男女平等も進める必要がある。時間軸での評価から成果ベースでの評価に移らざるを得ないだろう。限られた時間内で成果を発揮することが求められているし、女性がもっと活躍できる可能性がそこにあるという。

疑問点

質問する勇気を持てなかったけど、日本の女性の社会進出が欧米に比べて少ない理由は、日本では家計を握っているのが女性=母親である点だと個人的には考えている。欧米では家計のやりくりを母親がすることはあっても、給料袋をそのまま預かることはしないのではないだろうか。日本では、未婚の20代から30代に聞くと妻が管理は26.5%だけど、実際に結婚すると、51.6%は妻が管理し、さらに子供ができるとなんと65%は妻が管理している。妻が管理するのは、日本の伝統でもあるし、良い点も多いけど、ここは欧米と異なる点だと思う。欧米で同様の調査がないか調べてみたい。日本では、働く女性より、働かない専業主婦の方が時間的にも金銭的にもリッチだったりする。最近は夫の給料だけでは生活できないので共稼ぎが増えているが、女性の本音は高給を稼ぐ人と結婚して専業主婦として子供に湯水のように教育費をかけてセレブをエンジョイしたい人が多いのではないだろうか。この辺りは、もう少しサーベイなり分析が必要だ。

(出典:オリックス銀行

まとめ

キャシー松井さんの講演を拝聴して印象に残った点を中心に、ネットで裏付けを取りながら自分なりにまとめてみた。溢れ出るエネルギーの秘密は、父親のアンディ松井さんや母親からの熱いDNAだと思う。日本をもっと元気にするには女性が活躍できるようにするべきという主張はその通りだと思う。でも、なぜ日本のみがM字カーブを示すのか。なぜ職場復帰を躊躇ってしまうのか。働く女性が妊娠した時に、職場への報告を躊躇したかどうかを300人に調査したところ、46%が躊躇し、54%が躊躇しなかったという。これはどう考えれば良いのだろう。54%の女性は育児休暇などの体制が整備されている環境にあり、46%はそうでないということか。この辺りはさらなる調査が必要だ。女性が喜んで社会で活躍できるようにするには、環境整備を含めて課題はまだまだ多い。


(出典:CREA

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

追伸:次回のICB講演は4月7日で、登壇者は元駐米大使の藤崎一郎氏だ。
興味ある方は、ここからも申し込みが可能です。無料で聴けるのはすごい。

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