iConstructionの狙いと課題、従事者へのメリットを明確にすることが重要だ。

はじめに

日本は、古来より治山治水に尽力してきた。「須佐之男命は河川を治め、洪水や河川の氾濫を退治した神様か」でも書いたけど、日本の歴史は自然災害との戦いの歴史でもある。そんな治山治水を統括するのが国土交通省(以下、国交省)であり、国交省が推し進める取り組みがi-Constructionだ。

i-Constructionとは

いきなり横文字で失礼する。i-Constructionとは、国交省が推進するICTを全面的に活用した建設現場での取り組みだ。国交省のホームページを見るとICTの全面的な活用として、「ICT土工」と説明されている。この「土」が「±(プラスマイナス)」に見えて、ICT±工って何?と思ったのですが、ICT土工だった。土工とは、「土木工事で土を掘ったり運んだりする基礎的な作業やそれに従事する労働者。」という。土木工事と建設工事の違いってなにかと素朴な疑問がどんどん出てくる。調べてみると、建設工事は、地面の下に関する工事(土木工事)と地面の上に関する工事(建築工事)を総称する工事だ。それならICT建設工事でいいじゃんと思ってしまう。建設現場の生産性を高めて、もって魅力ある建設現場を目指す取組が「i-Construction(アイ・コンストラクション)」と説明しているが、魅力あると感じる主語が不明だ。

土木工事は市民(civil)のための工事

建設工事を英語で「construction work」と言い、土木工事を英語で「Civil engineering work」という。civilとは市民のことだが、市区町村の市民という概念ではない。日本人には理解しにくいけど、欧米では国民と市民の概念が明確に異なる。つまり国民とはある国家に国籍を有する構成員だけど、市民は理想とする社会の政治的主体としての構成員だ。日本でcivilという概念が理解しにくいののは、政治的主体としての構成員という自覚のある人が少ないためだろう。日本語では自由とは何をやっても良いことのように理解されがちだが、欧米ではFreedomとLivertyを明確に分けて考える。Freedomとは何かからの自由であり、Livertyは自律的に何かをする自由であり、勝ち取った自由だ。絶対王政国家ではFreedomはあってもLivertyはない。土木工事に戻ると、土木学会は「市民が文明的な暮らしのために、人間らしい環境を整えていく仕事」と定義する。例えば、道路や水道がないと社会は成り立たない。そういうインフラを整備する事業といえるかもしれない。従って、安全性を確保し、快適性を向上させ、利便性を高めることが重要となる。

i-Constructionとは

国交省の資料によるとやはりi-Contructionは、土木工事を対象として生産性向上を図る取り組みのようだ。違和感を感じるのは、Constructionというと建築工事を連想するが、i-Constructionの主な対象が土木工事だからかもしれない。しかし、i-Civil-Engineeringなどというとそれこそ意味不明となってしまう(涙)。土木現場の人達に理解してもらうには横文字ではなく持って直感的に理解できるように、例えば、「土木工事の高度化」とか「スマート土木工事」とかの方が分かりやすいと思うけど、ちょっとダサい。難しい。。。

図表1 i-Constructionね狙いとイメージ

出典:国交省

i-Constructionの狙い

図表1で見ると、i-Contructionの狙いは人日当たりの仕事量の向上、省人化、仕事日数の短縮の3つだ。つまり、ドローンとか、ICT建機とか、三次元データによる設計などを導入することで、少ない技能労働者でも少ない工期で多くの仕事をこなすことが目的となっている。これにより、魅力を感じるのは施主や工事会社や市民となる。しかし、これを関わる従事者には魅力があるのだろうか?アイリスオオヤマの大山会長の講演を聞いた時にロボットを大量に導入するメリットを質問したら、「給与をあげて、人件費を下げること」という明確な回答があった。従業員はロボットを活用して生産性を高めれば給与が上がるので、必死に工夫してロボットを活用しようとする。上から目線で使えといっても、結局は自分の仕事をなくすだけと誰も使わない。非常に従業員の気持ちに寄り添った素晴らしいコンセプトだと感じた。i-Constructionを成功させることができるかどうかは、このような建設工事の関係者の処遇改善がコンセプトに組み込まれているかどうかではないだろうか。

建設・土木従事者の待遇と課題

建設工事の現場に立ち会うと多層構造を実感することが多い。ある工事では一次請け会社、二次請会社と順番にたどっていくと7次請会社までカウントできることがあった。人材派遣業では多重派遣は、職業安定法第44条の3で禁止されているが、請負工事では許容されている。建設・土木ではそれぞれの専門分野が異なるので、やむをえない面もあるけど、できるだけ2層、多くても3層までと制限できれば、従事者の待遇は改善するのではないか。この辺りはもう少し研究と検証が必要なテーマだ。国交省においても、「重層下請構造の改善に向けた取組について」と調査研究結果をまとめているが、まだまだ道半ばだ。

あるべき姿

多機能ロボットや重機の自律的運用・遠隔操作などが究極的に進化した場合には、工事現場の風景はどうなるのだろう。現在のメーカーの工場のようにほとんどが無人化されて、工作機械が粛々と作業を進め、それを現場のスタッフとセンターのスタッフが連絡を取りながら監視・制御するようになるのだろうか。しかし、機械化が全ての問題を解決するわけではない。現場で発生した重大な事故や軽微な事故、ヒヤリハットなどからいち早く課題を見つけて改善する作業が重要だ。それを実践できるには、現場力のあるベテランの職人をどれだけ確保し、育成・活用するかがポイントではないだろうか。つまり最後は人だ。工事の業界はどうも上位下達の文化や、体育会系の文化が濃い部分があるが、人はミスをするし、機械も故障する、AIだって判断ミスをする。それを前提にしてどれだけ事故を少なくするかには、ミスを共有して、オープンにして、真摯に受け止めて、改善を繰り返すしかないと思う。

まとめ

今回はi-Constructionについて少し考えてみた。道路整備やダムの建設、橋梁の建設など土木工事は市民の生活に不可欠だ。10年後、20年後の土木工事はきっと今よりも自動化が進んでいるのだろう。ただ、現場では自分の仕事を奪われるのではないかという不安を抱えているように感じることがある。そうではなく、従業員の待遇も改善するというコンセプトを明確に打ち出すことが成功の鍵のような気がする。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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