脳型情報処理機械論9-3:知覚や認知は科学だけど感情はホルモンに基づくバイタルだ。

はじめに

脳型情報機械論の第9回目の様子は前回投稿した通りだけど非常に盛り沢山な内容を一気に英語で説明いただいた。ボリュームが多いので3回に分けて投稿していて、今回はその3だ。

脳型情報処理機械論9-2:自由エネルギー原理の提唱者フリストンはまだ62歳だ。

脳型情報処理機械論#9
その1:講義前の予習(前々回の投稿
その2:自由エネルギー原理(前回の投稿
その3:知覚と行動選択(⇨ 今回の投稿)

階層型予測符号化フレーム

英国の神経科学者であるカール・ジョン・フリストン(Karl John Friston FRS,1959年7月12日から)は、脳イメージングの権威であり、自由エネルギー原理と予測符号化理論の主唱者として名声を得た。下の図は、階層型予測符号化フレームワークの簡略化されたスキームであり、エラーユニット(E)と表現ユニット(R)という2つの想定されるニューロン集団間のメッセージの受け渡しを示す。この枠組みでは、ボトムアップの前方接続は予測エラーを伝え、トップダウンの後方接続は予測を伝え、予測エラーを説明する反復抑制を行う。大脳皮質の深層部に存在する表現ユニットは、感覚入力の原因をコード化する。表現ユニットは、同じレベル(点線)や下位の階層にある表層のエラーコーディングユニット(E)から入力を受け、同じレベルの側方結合からも入力を受ける。RユニットとEユニットの間の横方向の相互作用により、Rユニットが選択され、研ぎ澄まされ、その結果、Rユニットは与えられた感覚入力の原因をエンコードする。大脳皮質の表層に存在するエラーユニットは、同じレベルや上のレベルの表現ユニットから入力を受ける。抑制性の内在的結合は、EユニットとRユニットの上と下にそれぞれ黒い矢印で描かれている。知覚は、それ以前の感覚的事象から抽出された規則性と言い、一連の事前期待に依存する。環境の統計的な規則性は、E集団とR集団の相互作用を通じて、現在の感覚信号に関する予測に変換される。最近の機能的磁気共鳴画像(fMRI)の研究では、階層的な予測符号化の枠組みは、視覚と聴覚のミスマッチ陰性度の「疲労モデル」と「記憶のミスマッチ」の説明をエレガントに受け入れた。

(出典:research gate)

計算モデルに基づく視覚的特徴抽出

下の図(左)のaは、計算モデルを用いた自然画像からの視覚的特徴を抽出したものだ。自然画像から視覚的特徴を算出している。一方、下の図のbは、汎用オブジェクトデコーディングの概要だ。被験者が自然画像を見ている間のfMRI活動を測定したものだ。デコーダは、多ボクセルのfMRI信号から、提示された画像や物体の視覚的特徴の値を予測するように学習されている。測定されたfMRI活動から特徴ベクトルが予測され、デコーダの学習に使用されなかったものも含めて、アノテーションされた画像データベースに含まれる多数のオブジェクトの特徴ベクトルと比較することで、見たり想像したりしたオブジェクトを識別することができるという。凄い。

(出典:nature

KL距離(Divergence)

確率論と情報理論における2つの確率分布の差異を測る尺度の一つにKL距離がある。これは米国の数学者ソロモン・カルバック(Solomon Kullback, 1907年4月から1994年8月)と、同じく米国の数学者リチャード・A・ライブラー(Richard A. Leibler, 1914年3月から2003年10月)が共にアメリカ国家安全保障局(NSA)に勤務していた時に確率分布の類似性を表す尺度として定式化した。情報ダイバージェンスや、情報利得、相対エントロピーとも呼ばれる。真の確率分布Pとそれ以外の任意の確率分布Qに対するKLダイバージェンスを計算することが多い。なお、この概念は1951年、ソロモン・カルバックとリチャード・ライブラーが2つの分布の間の直接的な乖離(directed divergence)として用いたものであり、ベクトル解析におけるダイバージェンスとは異なる概念である。

(出典:講義のテキスト)

能動知覚(Active vision)

下の図(左)は3名の視聴者の視線の軌跡をトレースしたものです。人によって、異なるけども絵画に描かれた人物の顔に視線を送ることが多いことが確認される。下の図(右)は3つの初期状態からの遷移確率に基づく遷移分布を示す。プロセスは初期確率と遷移確率に従って状態を選択肢、出力はその時点での状態に従った観測地となる。

(出典:research gate

自由エネルギー(F)を最小化する3つの方法

自由エネルギー(F)を下の式で定義した場合に、このFを最小化する方法は3つある。つまり、Fはpとqとsを変数とする関数なので、それぞれで微分したものがゼロとなり、かつさらに微分したものが正であれば、その時の値が最小値となると言える。それぞれの式についてはここでは省略する。


(出典:講義テキストより)

期待自由エネルギー

期待自由エネルギー(Expected Free Energy)とは、リスクから曖昧さ(Ambiguity)を引いたものというのが推論としての計画だ。一方、変分自由エネルギーとは複雑性(Complexity)から正確性(Accuracy)を弾いたものが知覚的推論だ。期待自由エネルギーには、心理学、機械学習、経済学の文献で主流となっているいくつかの特殊なケースが含まれているため、暗黙の最適化問題から特定の不確実性の原因を取り除ぞく。事前の選好を無視した場合には、期待自由エネルギーは、情報利得または内発的動機に還元される。不確実性の下で期待効用を最大化するベイズ定式化は、ベイズ意思決定理論の基礎となっていると言える。また、観測された環境を情報のないプライオでのみ考えると、期待自由エネルギーの最小化は、将来の状態に対する最大エントロピー原理に相当するという主張(Jaynes, 1957)もある。

(出典:research gate)

変分自由エネルギーからアクティブ推論へ

エージェントは、自由エネルギーを最小化することで知覚を実現する。この自由エネルギーの枠組みを行動にまで拡張することで能動推論を実現する。エージェントが環境の中で行動する場合には、通常は強化学習の枠組みを使う。アクティブ推論では、報酬によって行動を促すのではなく、好ましい観測によって行動を促すと考える。行動は自由エネルギーの最小化のもう一つの結果であると言える。最適な行動は、ベルマンの最適性原理から導き出され、最適な政策は価値関数を最大化する行動をとる。

(出典:Louis Kirsch)

運動制御と感覚

日常生活で、例えば歩くとか、階段を登るといった行動は、まず最初は慎重に学習されるが、その後はほとんど自動的に行われる。大脳皮質がこの動作を開始するが、大脳基底核と小脳が継続する。これは、錐体外路系(extrapyramidal system)と呼ばれる。つまり、大脳基底核は、筋緊張の調整、四肢運動開始前の体幹と近位部の適切な後方配置、運動開始後に運動量を確保するための継続的な制御、学習した運動動作の自動適用、連続または同時の運動の実行などの機能を担うと言える。
(出典:Science Direct)

意識(consciousness)

意識とはなんだろう。意識とは、内的および外的存在の感覚だろうか。意識は心と同義であったり、類似の定義であったりする。自分の内なる生命、個人的な考え、想像力、意志などでもある。意識には、何らかの経験、認識、感情、または知覚を含む。気づきや、気づきの気づきまたは自己認識かもしれません。意識の異なるレベルや秩序、または異なる種類の意識、または異なる特徴を持つものかもしれない。意識があるのは人間だけなのか、すべての動物なのか。考えれば考えるほど分からなくなるのが意識かもしれいない。

(出典:consciousness)

感情(emotion)

南アフリカの精神分析家・神経心理学者であるマーク・ソルムス(Mark Solms, 1961年7月17日生まれ)は、夢を見ることの脳内メカニズムの発見や、現代の神経科学における精神分析的手法の活用などで知られている。マーク・ソルムスは、下の図に示すように喜びか喜びでないかで感情が振れると、「身体化された心」で感情について論じている。これに対して、ロンドン大学のアカテリニ・フォトポウル(Aikaterini Fotopoulou)教授は、ソルムスの提案に複雑さを加えて次のような提案をしている。男性が論じる感情論よりも、女性が論じる感情論の方が迫力があるように感じるのは自分だけだろうか。理性を理性的に論じるのに対して、感情を理性的に論じるのは難しい。

自我と認知の自動化の関係はソルムスが言うほど単純ではない。認知は変化する世界と柔軟性のない原動力との関係において、推論と柔軟性の両方を求めている。情動意識は、喜びではなく、主に身体内部の信号の不確実性の度合いをマッピングしている可能性がある。皮質下領域は、このような意識の側面の神経生物学的な源であり、それ自体、多くの分散した脳領域に局在している可能性が高い。生得的な動機付けシステムであるIDは、最終的にはエゴ(ego)と同じ最適化原理に基づいている。本能的な感情は、その他の反射によって満たされる生得的な無意識のプライオリティに基づいて、自動的に発動される。これは進化的に定義された能動的かつ知覚的な推論の原初的な形態として理解される。


(出典:research map

まとめ

調べれば調べるほど本来の講義の内容からどんどん乖離してしまう。前半の認知や意識はよく理解できるが、心と意識と気持ちと感情の違いなどを考えると迷路に入ってしまう。特に意識は理性で分析できるような気がするけど、感情はもっとバイタルなものだ。男性よりも女性の方が感情の起伏が一般には大きい。なぜあれほどの感情が湧き上がるのが男性である自分には理解できないことが多いが、女性の方がやはりバイタルなのだと思う。分泌されるホルモンと感情との関係も色々と研究が進んでいるようだ。体内で分泌されるホルモンは100種類以上ある。60兆個の細胞を制御するのはホルモンと自律神経。若さと健康を保つホルモンも年齢と共に低下する。40代では20代の半分、60代では4分の1にまで減ると言う。体内のホルモンを活性化させることが元気を保つキーかもしれない。

(出典:Our Age)

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

ITプロ人材のマッチングプラットフォームなら Bizlink をクリックしてみてください。
最新情報をチェックしよう!