脳型情報処理機械論#13-1:ゲスト講師の土谷教授はオープンマインドな先駆的研究者だった。

はじめに

科目履修生として初めての講義である脳型情報処理機械論のトリを飾るのは、オーストラリアのモナシュ大学の土谷尚嗣教授だ。ZOOMでの授業なので、北海道や九州、京都からのゲスト講師に続いて、今回は海外からの参加だ。オーストラリアと東京は四季は反対だけど、時差も2時間なので、オンライン授業も全く違和感がなかった。今回の講義も非常に中身が濃い。とても1回ではまとめきれないので、つぎの3回に分けて投稿したい。

その1:ゲスト講師の土谷教授はオープンマインド(⇨ 今回)
その2:講義を理解するためのキーワード(次回)
その3:序論・本論・今後の検討課題(次々回)

ゲスト講師

第13回目のゲスト講師はモナシュ大学の土谷尚嗣教授だ。土谷教授は2000年に京都大学を卒業し、2005年にカリフォルニア工科大学にて博士課程を修了。その時の指導教官は脳科学の専門家であるクリストフ・コッホ(Christof Koch:1956年11月生)教授だ。引き続き2005年から2011年までカリフォルニア工科大学でポスドクとしてラルフアドルフス(Ralph Adolphs)教授に師事された。2011年から2014年は科学技術振興機構(JST)のさきがけに特別研究員として研究に従事され、2012年からは現在のモナシュ大学に准教授として赴任され、2020年からは教授として活躍されている。モナシュ大学はオーストラリアのメルボルン近郊のクレイトンにあるビクトリア州立大学であり、世界大学ランキング100に入る名門だ。下の写真(左)はちょっと真面目な感じだ。写真(右)は最近お気に入りの似顔絵イラストだ。ネットで調べると、SNSを積極的に活用されている。講義の内容をYouTubeで発信されたり、TwitterTweet Tunnelなどを活用されている。オーストラリア人もFaceBookを利用する人が多いのだろう。土谷教授はFBも利用されていたので、先ほど友達申請をさせていただきました。

(出典(左):monoc、出典(右):buhitter

MONOC

モナシュ大学心理科学学部(MONASH NEUROSCIENCE OF CONSCIOUSNESS)の頭文字から MONOCと呼ばれている。オーストラリアの大学では優秀な学生のみが卒業研究を行い、honorの評価を得る。必須ではないので、研究に興味のない人は卒論なしで卒業するし、研究に興味のある人でも大学院に進むのは半分程度という。少数精鋭のため、学生も教授も真剣に議論し、指導できる。いいこと尽くめだとノートで呟いていた。それは合理的な考え方だと思う。MONOCでは、次のようなプロジェクトと対峙されているようだ。それにしても、なぜ日本人の研究者は海外では活き活きとした表情で活躍するのだろう。構造的な問題もあるのだろう。海外での生活は大変な面ももちろんあるけど、メルボルンなら楽しいこともいっぱいありそうだ。
1) 意識と非意識の境界の理解 処理
2) 意識とそれに付随するものとの関係の明確化 心理プロセス
3) 意識の定量的理論の検証
4) 意識消失に関するビッグデータ解析
5) 大量レポートパラダイムによる構造の特徴づけ 意識経験
6) 意識と構造的マッピングの発見 情報


(出典:MONOC

テーマ

今回のテーマは「クオリアの構造と情報の関係の理解(Understanding the Relationship Between Structures of Qualia and Information)」だ。今回の講義で驚いたのは、提示された資料の多彩さだ。110分の講義のための英語のスライド(68ページ)は標準レベルか少し少ないかもしれないが、時間配分的にはちょうどだった。質問や学生との双方向でのやりとりなども含まれていて、モナシュ大学でも生徒とのやりとりを楽しまれている様子を感じられた。それ以外に日本語の解説論文(30ページ)はありがたい。英語を和訳にした単語が正しいのかどうかの確認や、基本的な理解を深めるのに貴重だ。13回の講義で日本語の資料を展開頂いたのは初めてだ。また、多分モナシュ大学での講義に使われているのだと思われる全12回のパワーポイントの資料。これがそれぞれ非常に充実している。英文ではあるけど、非常によくまとまっている。これだけでも素晴らしい。

著書

今回のゲスト講師である土谷教授がクオリアや統合情報理論に対する想いを一冊の本にまとめられた。岩波書店が2021年12月18日に発売されたばかりだ。自分もアマゾンでポチッと購入したけど、なぜか日本のサイトではなく、英語のサイトになっていた。まあ、明日には届くだろう。なお、アマゾンのサイトには次のような説明が記載されている。興味ある方はぜひご一読を。

意識と脳の関係性の謎に立ち向かうお膳立ては整いつつある! これまでの研究における発展と限界、トノーニによって提唱されて意識の理論として有望視されている統合情報理論、そして著者が取り組んでいるクオリア(意識の中身)を特徴づける研究アプローチを解説。意識研究の面白さ、研究者が抱いている興奮を伝える。


(出典:アマゾン)

まとめ

今回は、講義の内容というよりは、その前段という感じの投稿になってしまった。残る2回でキーワードや本論についてまとめてみたい。先日は、東洋医学について投稿した。東洋医学では「人間の生理活動を支える宗気・営気・衛気・元気の4つ気」を定義している。五行では、5つの元素と臓器や星や味覚、感情、季節などを対応させている。意識を数理的に分析するという発想は東洋医学にはない。近年の脳科学やfMRIなどのセンサー技術の発展が新しい学問の可能性を切り開いているような気がする。面白いと思う。土谷教授の顔をどこかでみたと思ったら、第11回の大泉教授の講義の投稿に掲載されていたのを思い出した。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

(参考)
その2:講義を理解するためのキーワード(次回)
その3:序論・本論・今後の検討課題(次々回)

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