ヘッブの法則から考えるAIの可能性とSASのオンラインセミナー

はじめに

脳のメカニズムの研究が進んでいる。そのうちの成果の一つがヘッブの法則だろう。人工知能(AI)がバズワードとなっているけど、現在のAIはいわゆる機械学習のアルゴリズムを応用したものを指す。しかし、それは人間の脳の動きとは本質的に異なる。量子コンピュータについては、「はてなブログ」で3回にわたり投稿しているが、複数の種類がありそのうちの量子ニューラルネットワーク(QNN)は人間の脳の仕組みに近い方法での動作を目指しているもので開発の困難性も高いが将来性も高いものだ。
第1回の投稿:量子コンピュータ(1):量子の基本概念
第2回の投稿:量子コンピュータ(2):概要と課題
第3回の投稿:量子コンピュータ(3)社会的課題の解決に向けて

ヘッブの理論

脳細胞の動きについての法則だ。脳のシナプスの可塑性についての法則だと言われても何のことだかわからない。このヘッブの理論を提唱するのは、カナダの心理学者であるドナルドヘッブ(1904年7月22日〜1985年8月20日)だ。両親は医師だが、作家を目指し、心理学を学び、ハーバード大学で博士号を取得。その後、知覚や学習についての神経学的研究を行ない、それをヘッブの理論としてまとめた。

スケーリング理論と相関長

量子ニューラルネットワークの相関長と人間の脳の総艦長を比較したものを図表1に示す。一見して非常に類似していることがわかる。ここで相関長とは、スケーリング理論における尺度だ。具体的には切片と傾きの比率の平方根で求まる(出典:correlation length ξの8.2.3)とある。スケーリング理論とは、コトバンクによると「二つの量の間の比例関係を主張する法則」とされている。有限系のサイズを大きくして、無限系を目指した時にどの程度大きくすれば無限系と思えるかの目安が相関長という記述もある(出典:スケーリング理論とは何か?)。なんだか禅問答のように分からない言葉が次から次と出てくる(笑)。
図表1 QNNの相関長(左)と人間の脳の相関長(右)

出典:量子ニューラルネットワーク

心や精神はどこにあるのか

ヘッブの理論に戻ると、人間の行動や感覚を司る心や精神は、脳神経に存在するのではなく、神経細胞同士の相互作用の中に存在するという考え方だ。つまり、ある神経細胞Aが別の神経細胞Bを継続的に刺激するときに神経細胞Bも活性化するとAとBの間の神経回路が活性化される。継続的に刺激するとAとBの神経回路は強化され、短期的な記憶となる。点の記憶だけだと短期的な記憶だが、その点と点が繋がり、面的なつながりが強化されるとそれは長期的な記憶となるという。技術士試験でも、知らない言葉が出て面食らうことが多いが、そのような未知の言葉(キーワード)についての理解が深まり、さらにキーワードとキーワードの関係を理解すると、なんとなくその分野のことを理解したような気持ちになる。そのように理解することが長期的な記憶に繋がるということだ。

ヒトゲノムとヒトコネクトーム

ヒトゲノムとは、人間のゲノムのことである。ゲノムとは遺伝情報のセットであり、ヒトゲノムは核ゲノムとミトコンドリアゲノムからなる。この核ゲノムには約31億のDNA塩基がある。ヒトゲノムの解読は非常にチャレンジングだったが、2003年に解読の終了が宣言された。一方、ヒトコネクトームとは、人間のコネクトームのことだ。コネクトームとは生物の神経系内の各要素がどのように接続しているのかという全体的な地図を意味する。人間の脳には約一千億ほどの神経細胞があり、その神経細胞間の接続数は1兆ほど存在する。ヒトゲノムの解明は終了したが、ヒトコネクトームの研究はまだ始まったばかりだ。線虫の研究は以前からあったが、哺乳類動物のコネクトームを明らかにした点で画期的だ。すでにこの発表から7年が経っている。人間の脳についての研究も進んでいる。科目履修生で東大の脳科学の講義を受けようと申請したら秋の授業だった。ぜひ履修したいと思う。
図表2 頭頂部から見たマウス脳の3D神経接続パターン

出典:Nature()

遺伝と環境

人間の性格は遺伝で決まるのか、環境で決まるのか。遺伝が8割とか、5割とか諸説あるようだ。しかし、昔からのことわざで言われるように、三つ子の魂百までというのは結構当たっているのではないだろうか。幼少時の性格と大人の性格は変わるものだが、その基本的なセットは幼少期に形成されるというのはあるかもしれない。先の人コネクトームに基づけば、1千億個ほどの神経細胞の形成はDNA、つまり遺伝に依存するだろう。その後の1兆ほどの組み合わせのどこが強化されるかは環境による。その意味では、環境の影響も非常に大きいと言えるのはではないか。
fukusuke.tokyo

SASのセミナー

AIエンジンのパッケージソフトで先行するSAS社のセミナーに参加したことがある。2019年12月に開催された「間違いだらけのAIプラットフォーム選びに終止符」だったけど、すごい集客力だった。300人ほどが収容できる会議ホールが6 ほどあり、いずれも立ち見が出るほどの満席だ。しかも、それらの会議室では6回ほどのセッションをしている。ざっと考えても延1万人ほどの参加はすごい。先行してSASのAIエンジンを利用した成果が発表されていたが、医療あり、電力あり、金融ありだった。ポイントは大量の業務に適用すると省力化の効果が高いということだ。コロナ禍ではこのような人が集まるセミナーは厳しいけど、さすがSAS!2021年5月にもオンラインフォーラムを実施予定だ。登録は簡単だった。下のようなエントリー画面で必要な入力をすればOK。5月19日のフォーラムが今から楽しみだ。

AIソフトによる仕分け

例えば、マネーロンダリーに口座が使われていないかどうかを銀行は調べる義務があるが、この処理は大変だという。しかし、AIソフトを活用し、明らかに問題がない案件と、明らかな問題を仕分け、人間はどちらとも言えない微妙な案件に集中することで精査業務の効率化が飛躍的な向上したという。しかし、精査業務に長く従事した人はAIソフトの導入に反対だったという。その理由を問うと、「だって我々が実質している内容しかAIソフトはしていない。」、意味がないという。しかし、AIソフトは精査のベテラン社員が行うことを機械学習して、その通りに仕分けし、その理由を明記するような仕組みなので、それは当然だ。そして、精査のベテラン社員もそのことを理解すると、「繰り返しの作業から解放されて、より困難な案件や微妙な案件に注力できるのは歓迎すべきことかもしれない」と考えるのようになったという。最終的にはAIソフトが対応できる業務がどんどん増えるのだろうが、人間とAIソフトのあるべき役割分担の一つのパターンのように感じた。

まとめ

AIは結論を出せても、その判断ロジックを示せないと聞いていたが、SASの講演では判断ロジックまでを出力する事例が発表されていた。AIを中心とする業務改善はこれからの産業構造を改革する中心的なエンジンになるだろう。人工知能の研究の分野では日本は米国や中国に遅れをとっているという指摘もあるが、社会の課題解決に活用する余地は大きいだろう。人工知能の安心・安全な活用に向けての研究については、今後も継続したいと思っている。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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