MBAでの名授業シリーズ:アイリスオーヤマ会長への提言「次の一手」

はじめに

2019年4月から2021年3月まで経営大学院(MBAコース)に通った。MBAと技術士の相乗効果は以前にも投稿した。今回は、その中でも特に印象に残った名授業10選を選んで順次投稿してみたい。皆様の参考になる点があれば幸いだ。まずは、自分が敬愛する米倉誠一郎教授の授業だ。どの授業もエキサイティングだったけど、今回は、昨年12月14日に、アイリスオーヤマの大山健太郎会長がZOOM越しではあるが、ご参加いただき、無謀にも学生たちがアイリスオーヤマの経営戦略として「次の一手」を提案するというもの。百戦錬磨の大山会長がなるほどというアイデアななかなかないけど、学生はない知恵を振り絞って提案した。自分は長寿命化戦略として、液体ガラスでコーティングした木材の活用や、自然治癒力のあるコンクリートの活用といった素材で攻めた。後半は、大山会長による講義だけど、どこにも話していないというマル秘戦略も聞き出せた。乞うご期待!
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出典:米倉教授のFBより

アイリスオーヤマの凄いところ

なぜ商品が凄いかと言えば会社の仕組みが凄いからだ。商品群は2万3千とあるが大山会長によると切り捨ての数字なので、実際にはもっとあるようだ。あげ出すとキリがないが個人的に特に凄いと思うのは次の3つ(参考1)。
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1) 連結1兆円を目指す中小企業

2019年度の売り上げは連結で5,000億円だった。2020年度はコロナ禍において落ち込むかといえば、ピンチをチャンスにする経営を実践して7,000億円の見込みだ。連結で1兆円も視野に入る。一方で資本金は1億円のままだ。1971年の創業時には資本金300万円で設立した。通常なら業容の拡大に伴い、資本金も増やして、株式公開してという会社が多い中で資本金を1億円にあえて抑えている。アイリスオーヤマは非上場企業なので、敵対的買収を受けることがない、株式から短期的な利益確保の要請を受けることがない、お客様や社員を重視した長期的経営ができる。そんな想いがこの1億円という資本金から感じることができる。会社は非上場でも、情報は上場企業並みに開示すると宣言しているところも凄いと思う。
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2) 毎週月曜日のプレゼン会議

カンブリア宮殿でも何度か紹介されている。毎週月曜日の朝から夕方まで毎週実施する。1案件5分から10分だ。ユーザ目線が重視される。なるほど!と納得できる点がないとやり直し。事前の根回しが一切ないのが大山流だ。全ての情報は全ての社員が共有するからこそ力が出る。通常だと商品化の企画から発売までは1年から2年かかるのが通常だろう。アイリスオーヤマでは関連部署が同時平行的に検討する伴走方式なのでどんどん新商品が開発される。2019年の総売り上げに占める新商品の売り上げが64%というのは凄い。
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出典:企業理念|企業情報|アイリスオーヤマ

3) なるほど家電の秘密「作りたいもののない技術者は採用しない」

大山会長は社員のやる気を引き出すのが上手だ。また、家電会社をリストラされた技術者を採用するときの判断は、その技術者が作りたいものがあるのかどうか。アイリスオーヤマに就職した技術者は、自分はこういうものを作りたかったという熱い想いとともに頑張る。そしてそれを役員が鼓舞する。1度や2度の失敗はそれにGOを出した役員の責任と社員を責めることはしない。しかし、同じ商品群で同じ社員が同じようなミスを3度すると人を入れ替える。この辺りの飴と鞭のバランスも抜群だ。

3つのチームが提案

今回は、受講生を3つのチームに分けた。自分はチームBだった。チームAは6つの矢ということで色々なアイデアを矢継ぎ早に提案した。的をえた矢もあれば、そうでもない矢もあったけど、大山会長はそれぞれの提案に対して丁寧にコメントをしていただけた。それだけでも感激だ。チームCは詳しくは省略するけどソーラパネルを活用したビジネスモデルだった。残念ながら的には当たらなかったようだ。

チームB:長寿化、IoT家電、スマート老人ホーム

我がチームは、中堅から50代、60代の男性と、若い中国からの留学生の女性二人という構成だ。木曜日と日曜日の夜にZOOMで作戦会議を繰り返した。IoT家電を骨子としながら、長寿化戦略と中国展開という3本柱で提案することになった。自分のパートの長寿化戦略に絞っていかに記載する。個人的には少子高齢化社会という言葉は嫌いだ。高齢化ではなく、長寿化だと思う。長生きしたいというのは皆の夢であり、良いことのはずだ。日本人が長生きするなら、その日本人が使う製品も長寿化するべきという提案だ。義母は、一人で洗濯もできるし、炊事もできるし、掃除もできるけど、操作方法が変わるのは嫌だという。それは良く分かる。家電製品が長寿化すれば高齢者には喜ばれると思う。

超長寿命素材

1) 液体ガラス&間伐

大山会長も液体ガラスは初耳だったようだ(笑)。最近メディアでも取り上げられる機会が増えているが、木材を温水で加熱して、その後液体ガラスに浸すと木材の隙間にガラスが浸透して、燃えない木材が出来上がる。燃えないだけではなく、剛性も高まるし、抗菌効果も高まる。間伐材などを活用することで国内の森林の環境整備にも貢献できる。特に神社とか公園とかの整備にも効果を発揮している。
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出典:液体ガラス処理技術 | 遊び場施設専門

2)自然治癒コンクリート

ローマ・ギリシャ時代のコンクリートは2000年経過しても残っているが、現代のコンクリートは50年から100年の寿命しかない。これはなぜかというと古代コンクリートの技術が一度途絶えていて、レシピを完全に復元できないからだという。99%は判明しているけど最後の1%が謎だった。古代コンクリートが何千年も使えるのは自然治癒能力かもしれない。そんな能力を再現しようと多くの研究が進んでいる。バクテリアを活用する方法も有力だ。これはコンクリート内のバクテリアは通常眠っているけど、コンクリートに亀裂が生じて水分が入るとバクテリアが目覚めて炭酸カルシウムを生成し、亀裂を埋め尽くすと水が入らないためまたバクテリアは休眠する。そんな仕組みだ。こんな自然治癒の能力を有するブロックなどを発売するアイデアだ。
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出典:https://www.sugitec.net/8501/

3) 鎌先温泉

仙台にあるアイリスオーヤマの角田工場から車で40分弱ほど西方向にドライブすると温泉旅館が立ち並ぶ。その一つが、元禄元年に創業したという老舗の木村屋旅館だ。しかし、コロナ禍が広がりつつある3月に残念ながら閉館した。しかし、そのあと沖縄の観光会社が再生に乗り出した。我々の提案はそんな旅館にアイリスオーヤマの製品群をサブスクリプションモデルで提供する方法だ。大山会長からは、アイリスオーヤマは家電の会社だけど大手有名ホテルの内装工場も手がけている。なぜかと言うと、そういうホテルは有名設計者が設計するので、こだわりの設計であり、部材も特注となる。そこにアイリスオーヤマの商機があり、強みが発揮される。なるほど。
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出典:https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202007/20200707_12018.html

大山会長の名言シリーズ

それぞれのチームの発表を聞いた上で大山会長からの発表をしていただいた。その中で感銘を受ける話がいくつもあったが、いくつかを紹介する。これ以外にも名言は多数あった。さすがです。

NDD

「なぜ」「どうして」「どうする」の略だ。この中でも特に大事なのがなぜだ。なぜだろう?と言う疑問を感じることができれば、その答えはネットですぐに見つかる。でも、なぜだろうという疑問はネットでは見つけられない。その上で、どうするかを考えることが重要だ。

給与はあげるが人件費はあげない

アイリスオーヤマはロボットへの投資を積極的に実施している。超多品種少量生産を支えるのがロボットだと思って質問した。その結果は予想を大きく超える回答だった。つまり、中国の工場にはロボットを7000台ほど投入している。これは20年前から始めたことだ。そして、それを支える理念が「賃金はあげるが、人件費は上げない」だった。実際に中国工場の社員の賃金を毎年2桁ベースで上げている。それを実現するのは生産性の向上だ。しかし、人の頑張りには限界がある。それを支えるのがロボットだ。人が一人で担当した作業を人一人とロボット1台で対応したら生産性が向上するので、賃金をあげる。そうすると、ロボット2台を活用する方法、ロボット3台を活用する方法を社員が頑張って考える。そして生産性が高まれば賃金は上げるが、トータルの人件費は上げない。そんな好巡回を実現したアイリスオーヤマはやはり凄いと思う。

高齢者に必要なのは愛情

スマート老人ホームを提案した。人と人の心の触れ合いを骨子としたつもりだけど、大山会長はズバリ高齢者に必要なのは愛情だという。家族愛でも、友人愛でも、隣人愛でも良い。高齢者になると愛情が欲しくなると言うのはそうかもしれない。

流通の自動化パレット

アイリスオーヤマの強みの一つは流通網だ。そして、その流通網を支えるのが自動化パレットだ。特に中国の工場の物流は凄いと大山会長が絶賛するので凄いのだろう。

アイデアだけでは事業にならない

今回の学生からの発表はアイデアベースが多かった。しかし、アイデアだけで事業として成功することは難しい。事業化するには、品質と価格とニーズで競争他社に勝たなければならない。また、独自製品でヒット商品が出ると競合他社が同様の製品で殴り込みにかけてくるので、レッドオーシャンになる。その時に、そのレッドオーシャンで戦っても利益は出ない。アイリスオーヤマでは、そんな時には、儲からない市場から離れて、儲かる市場を開拓してきた。具体的には、国内で衣装ケースが過当競争になった時には米国に輸出して収益を得た。米国の市場が過当競争になったら欧州に進出した。常にサイドミラーを見ながら運転するようなマインドが必要だ。

勝ち目のない戦はしない

大手企業と真っ向正面から戦っても勝ち目はない。大手が相手にしないようなニッチな市場で儲けるか、独自の市場を作るか。また、儲けの厳選は実は仕入れだ。その上で、生産性を高めて、流通網を整備して、顧客サービスの向上を図っていくのが商売だ。

値下げを要請するようでは負け

仕入れの価格を下げるにはどうするか。負けてくれは負け。単なる値下げ要請をするのは勝負する前から負けていると言う。そうではなく、購買力を高める。100個買うより千個買う方が購買力がある。千個買うより万個買う方が購買力がある。もう一つは、調達の選択権を確保すること。これがビジネスの原点。

志とビジョンを共有できる仲間を形成する

商売は一人ではできない。誰と一緒にやるかが大事。その時に大事なのは経営者のビジョン。夢を語るのではなく、その夢を実現する道筋を考えて、実現するビジョンを伝えて、共有してくれる家族、親族、友人を集める。その時に求められる経営者の能力は伝える力。相手が理解できるようにわかりやすく説明する能力を高めてほしいと締め括った。

まとめ

米倉先生の授業はやはり最高だ!超一流の経営者に対して次の一手を提案するのは無謀だ。素人が横綱と相撲を取るようなものだ。それでも必死に考えたアイデアを大山会長は厳しくも優しく受け止めて、指導していただけた。これが毎週の商品会議が続く最大の秘密だと感じた。今回の大山会長のお話を伺ってますますアイリスオーヤマのファンになった。これからも愛用していきたいと思う。最後に一緒に何度も何度もアイデアを出し合ったチームメンバーの方々、米倉先生やそのTAを務める前澤さん、そしてゲストとして出演いただいた大山会長に心から感謝申し上げます。

ありがとうございました。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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