図書や論文を電子化して公開する機関リポジトリーは知の宝庫だと思う。

はじめに

東京大学大学院の科目履修生となり、一連の講義を受けた。来期はどんな科目にするかを今から悩んでいる。東京大学には令和3年5月1日時点で、教授が1,304人、准教授が984年、講師が287人、助教が1,311人いる。これだけでも、3,886人いる(出典)。総合大学のため理系から文系まで幅広い講義がある。自分の興味も理系的なもの、安全管理に関するもの、縄文時代に関するもの、シュメール人に関するものと発散気味だ。東京大学のリポジトリーも充実していて、学部や修士、博士課程の論文などもキーワード等で検索して拝読することもできる。非常に充実していると感じるけど、他の大学と比較してみたくなり、京都大学や大阪大学、九州大学、東北大学の各リポジトリーにアクセスしてみたので、その結果を示す。

各大学のリポジトリーの検索結果

自分自身の興味のあるキーワードをランダムに5つの大学のリポジトリーに入力して検索した結果は下の表の通りだ。トータルの件数では京都大学が約5.2万件とトップだった。2位が東北大学の約5.0万件で、3位が東京大学の約1.1万件だった。京都大学では、脳、安全、宇宙、農村、六曜などでトップだった。また、東北大学では量子、遺伝子、微生物、弥生などでトップだった。東京大学が思いのほか少なかったが、これは検索の仕方がおかしいのか、それともリポジトリー化が遅れているからか理由は不明だ。

機関リポジトリー

機関リポジトリーとは

機関リポジトリーとは、大学とその構成員が創造したデジタル資料の管理や発信を行うために、大学がそのコミュニティの構成員に提供するサービスだ。リポジトリ(Repository)は、本来は倉庫や収納庫、貯蔵庫という意味だが、知の共有という意味から大きな役割を果たしている。

(出典:sei-shou)

機関リポジトリー数の推移

学術的情報資源に関しては1999年(平成11年)から東京大学情報基盤センターにて検討が始まった。また、2003年(平成15年)には千葉大学が機関リポジトリを開始した。2004年(平成16年)6月には国立情報学研究所が北海道大学,千葉大学,東京大学,東京学芸大学,名古屋大学,九州大学と機関リポジトリーの設置と、学術情報資源の総合目録化を進めた。大学独自でのリポジトリーの展開は2015年に316校を数えるが、それをピークに減少した。その代わりに2013年に開始してクラウド型のインフラJAIRO Cloudを活用してリポジトリーを構築する大学が増加し続けている。2021年時点ではJAIRO Cloudの利用と公開予定の合計が699校と独自構築の176校を大きく上回っている。

(出典:nii

機関リポジトリーを公開している大学数の推移

全国の国立・公立・私立の大学のうち778校を2011年(平成23年)に調査し、そのうちリポジトリーを構築している大学は約27%の209校だった。2015年(平成27年)の調査では約62%の778校に増大している。特に私立大学の増加幅が大きく、これは前述のJAIRO Cloudの利用による効果が大きいと推定される。


(出典:resemom)

京都大学KURENAIの登録件数

京都大学では2006年に機関リポジトリーを公開し、その後順調に登録件数が増大している。2017年6月時点では、本文付きのコンテンツが20.5万件で総コンテンツ件数は21.7万件に達している。


(出典:京都大学

各大学の比較

特許庁への共同出願件数(2011年)

リポジトリーの件数と並んで知の共有という意味では、特許への出願件数も気になるところだ。調べると、少し古いデータになるが、東北大学が1位の1,416件、2位の東京大学が1,213件、3位の東京工業大学が1,105件と千件を超えている。東北大学の共同出願が多い分野は、半導体、材料、ナノ建造物、医薬などだ。これは前述のリポジトリーの件数に表れている傾向と同様だ。2位の東京大学では、遺伝子工学、材料分析、ナノ構造物、医薬品などの出願数が多い。

(出典:resemom)

女子学生の比率

知の共有の性差はどうか。直近のデータではないが、日本の大学での女子学生の比率についての報道があった。これによると大阪大学が35%と一位だった。早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学と続く。京都大学は調べた大学の中では8位の22%とブービーであり、最下位の9位は東京大学の19%だった。優秀な女子の学生が多いと聞くけど、もっと女子の学生が高まってもいいのではと感じた。

(出典:ugblog

まとめ

企業との共同特許の出願数では東北大学と東京大学の1位と2位だったけど、機関リポジトリーへの登録件数や公開件数に関する情報がなかなか確認できなかったので、独自のキーワードでサンプル調査すると、1位が京都大学で2位が東北大学、3位が東京大学だった。各大学のリポジトリーにキーワードを入れて、面白そうな論文を調べてニヤニヤしている今日この頃だ。海外の大学だとどうなのだろう。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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