タイタニック号沈没の15の要因と9つの疑念。スーパームーン説は初耳だ。

前ページまではタイタニック号沈没の要因について分析しました。

タイタニック号にまつわる疑念

疑念1)オリンピック号とタイタニック号の入れ替わり説

図5の写真に見るようにオリンピック号とタイタニック号は外見だけでなく内部の作りもそっくりです(参考4)。両方ともホワイト・スター・ライン社が発注した客船であり、J.P.モルガンがその資金の一部をになっていた。沈没した船はタイタニック号ではなくオリンピック号ではないかという疑惑だ。これは海底に沈んでいるプロペラの識別番号を調べれば簡単に判明できるはずだが、タイタニック号保護法が2004年に制定され、調査が禁止されている。

図5 オリンピック号とタイタニック号は姉妹船

疑念2)英国海軍から要求された膨大な賠償金問題解決

オリンピック号はサウサンプトン港を出航し、1911年9月20日にソレント海峡で英国海軍エドガー級防護巡洋艦「ホーク」と衝突事故を起こしている(参考5)。ホークは艦首が大破する被害を受け、オリンピック号も船尾が浸水するほどの大打撃を受ける。莫大な賠償金は保険金で支払われたようだ。

図6 オリンピック号の衝突事故

疑念3)タイタニック号に掛けられた多額の保険金

アメリカの保険会社に500万ドル(現在の価値では150億円)、さらにイギリスの保険にも加入していて、合計で200万ポンド(現在の価値では400億円ほど)の保険に加入していた。絶対に沈まないと対外的には宣伝していたが、実際はリスクを想定して対応していた。しかも、事故からわずか2週間で支払われていたとも言われている(参考6)。

疑念4)処女航海をキャンセルしたJPモルガンと友人55名の謎

タイタニック号の処女航海には、ホワイト・スター・ライン社に出資するJ.P.モルガン本人とその友人55名もこの記念すべき処女航海に参加する予定だったが、前日になって体調不良を理由にキャンセルしている。しかし、実際はナイル川や、ローマ、フィレンツェで遊んでいたという(参考7)。どういうことなのだろう。

疑念5)石炭庫火災説

NHKドキュメンタリーでも指摘していたように、タイタニック号は出航の3週間前からボイラー室で火災が起きていた。事故原因を調査した研究者は、タイタニック中央部の石炭庫で石炭が自然発火し、出航時すでに小火災が発生していたという指摘がある(参考8)。火災によっと脆くなっていたのは右舷であり、氷山と衝突したのもこの右舷だった。火災が発生したのであれば、原因を究明し、必要な対策を講じるべきだったはずなのになぜそのまま出航したのだろう。それとも気づかなかったのだろうか。

疑念6)縦方向ではなく、横転覆ではないか説

映画タイタニックでは船首が沈み、船尾が高く空中に上がり、途中で折れる。しかし、実際には縦方向ではなく、横転覆だったのではないかという説がある。浸水が4区画を超えると横復原力がなくなり、横転覆するという可能性です。大きさと速さを追求した結果、横復元力の弱い客船となっていたという指摘だ(参考9)。横転後はしばらくは船底を上に向けて浮いていた。沈没の段階で船尾が持ち上がって船体が折れたという推察だ。

疑念7)カンパチア号の船長がオリンピック号の救援を止めた謎

タイタニック号が沈没した時にオリンピック号は800km離れたところにいたが、SOSを受信して、全速力で救援に向かった。現場まで約185kmまで来たときに、すでに現場に到着していたカルパティア号のロストロン船長は、オリンピックの救助の申し出を断ったという(参考10)。タイタニック号とそっくりのオリンピック号が来て乗客がパニックになることを心配したという。

疑念8)カリフォルニア号からの警告と届かない救難信号

タイタニック号が一時間遅れで出航した後、カリフォルニア号は氷山の存在を2度にわたって警告している。それにも関わらず、タイタニック号からの救難信号に対応せず、救助にも向かわなかった。当時の無線は24時間体制ではなかったため、4月14日の午後11時半に無線を切っていた(参考11)。その10分後衝突事故が起き、15日の午前0時15分に遭難信号を出し、その後も信号灯を8発打ち上げたが、カリフォルニアン号が気づいて現場に着いた時には救助作業が終わっていた。これを教訓にして、無線の24時間体制が義務化された。

疑念9)短編小説「タイタン号の遭難(Futility)」のミステリー

タイタニック号の事故が起きる1912年の14年前(1898年)には、この事故を予告するかのような短編小説が発表されている。モーガン・ロバートソン作の『フューティリティ』は、事件後に『フューティリティ~タイタン号の遭難』とタイトルを変え、内容も加筆修正したという説がある一方で、図7のような類似点は初版本にあったという説もある(参考12)。モーガンが優れた預言者なのだろうか。それとも小説を模して事故が起きたのか。ミステリーだ。
図7短編小説と実際の自己の類似点

生存者比率

経営大学院ではタイタニック号の生存者のデータベースから生存要因の分析を行なった。男性の生存率20%に対して女性の生存率は74%、子供の生存率は51%だった。女性や子供を優先したことが伺える。また、一等船客や二等船客の生存率は比較的高いが、三等先客では25%の生存率だ(男性の生存率16%、女性の生存率46%、子供生存率34%)。また、クルーに関しては、男性の生存率が20%に対して、女性の生存率は87%と大きく異なっている。これは女性クルーの勤務場所と男性クルーの勤務場所の違いが大きいと考えられる。


図8 生存者比率(出典:イギリス商務省)

2022年のタイタニック2号

タイタニック2号を2022年に出航するプロジェクトが計画されている。2400人の乗客と900人の乗員を収容する。250人を収容できる密閉型の救命ボートを18隻常備する。客室は映画の世界そのままで、映画でも注目された豪華な階段は再現されている。運航ルートも英国サウサンプトンからニューヨークで同じだ。当然ながら最先端のナビゲーションシステムやレーザー装置も搭載している(参考13)。ただ、心配なのはコロナ禍の影響だ。すでに中国の造船所に発注すみだけど、経済的な問題から手抜き工事をしないだろうか。個人的には心配だ。

図5 タイタニック2号

まとめ

タイタニック号の沈没には謎が多い。また、同時に安全管理の観点からは考えさせられることが多い。本質的な安全を担保できないのに、絶対に沈まないと宣伝するあたりは、原子力発電所の顛末と共通するだろう。大事なことは絶対安全を担保できない場合には、機能安全をできるだけ実施し、それでも残るリスクは情報公開することだ。タイタニック号の沈没では、情報公開どころか隠蔽している。コロナ禍の問題も何が問題か、どのような対策をするのか、その上で残リスクは何かを示すべき。恐怖心ばかりを煽るのは本来の安全対策のスリーステップではない。

以上

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