新型コロナ重篤化の原因は免疫系の制御が暴走するサイトカインストームだった。

はじめに

新型コロナの感染者数がなかなか沈静化しない。これは変異株の影響だろう。ただ、コロナ禍に関しては死亡者の定義や感染者の定義などに疑問があることは先に投稿した。問題は重篤化する患者だ。なぜ重篤化するのかを調べると免疫系の暴走が原因ではないかと研究が進んでいる。なぜ免疫系システムが重篤化の原因になるのかが難解だけど、できるだけ平易に解説してみたい。

ホメオスタシスとは

ホメオスタシス(homeostasis)とは、生体が一定の状態を維持しようとする働きのことであり、恒常性とも言う。哺乳類は周囲の気温に関わらず体温を一定に保つ。これは暑くなったら汗を書いて体温を下げたり、逆に寒くなったら体温を高める。このようなホメオスタシスは、自律神経系や免疫系、ホルモンを生成する内分泌系により実現している。ホメオスタシスのために、神経系、内分泌系、免疫系の3つがお互いにバランスを保ちながら、健康維持や病気治療を行います。つまり、外部からのウイルスの侵入や熱などの刺激を神経系が受けると発熱し、内分泌系でホルモンが分泌されて臓器の機能を保つ。同時に免疫系と連携して体内の異常を認識し異物の侵入を防いだり、阻止したりする。

f:id:hiroshi-kizaki:20170328184403p:plain
図1 ホメオスタシスの構造(参考1)

サイトカインとは

まず、サイトカインという言葉をご存知でしょうか?サイトカイン(Cytokine)とは、細胞から分泌される低分子のタンパク質で生理活性物質の総称だけど、これでも難解だ。サイトカインは、生理活性蛋白質ともいい、細胞間で相互に作用し、周囲の細胞に影響を与える。つまり、細胞と細胞の間の情報伝達の役割を行う。細胞と細胞は、サイトカインと呼ばれる生理活性タンパク質を放出することで連絡を取り合う仕組みだ。体内に侵入したウイルスや腫瘍細胞などの異物に反応する細胞が分泌するインターフェロンもサイトカインの一種だ。インターロイキン(Interleukin)もサイトカインの一種で、ヘルパーT細胞(leukocyte から-leukin)によって分泌され、細胞間(inter-)コミュニケーションの機能を果たす。

サイトカインストームとは

サイトカインは、細胞から分泌され、さまざまな働きを持つたんぱく質の総称だ。特に、ウイルスなどが細胞に侵入すると、免疫にかかわるサイトカインの働きが強まり、免疫細胞を活性化して、ウイルスに感染した細胞を攻撃する。感染症にかかると、発熱やだるさ、筋肉痛などが起こるのは、体内のサイトカインが頑張って病原体と戦っている証拠だと言える。しかし、問題はこれが過剰に機能する場合だ。サイトカインストームとは、何らかの理由でサイトカインが増えすぎて免疫の働きが暴走した状態だ。

新型コロナウイルスが重篤化した場合に、免疫を抑える薬が投薬されることがある。免疫系を強化することが通常の治療だが、新型コロナに罹患して重篤化する場合に、サイトカインストームが原因となっているケースがあるためだ。同様のケースは、2003年に中国で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)でも確認されている。

図2 サイトカインストームの仕組み(参考2)

バイオメティクスとは

生命の不思議を工学に生かす学問をバイオミメティクスという。身体のホメオスアシスのために、神経系と免疫系と内分泌系が三権分立のように連携して機能しているのは興味深い。例えば、これを社内の人間関係に関連付けてみると、神経系はクレームの受付担当、内分泌系は営業担当、免疫系は保守担当といったところだろうか。お客様からのクレームを受けたら、すぐに営業担当や保守担当に連絡する。営業担当は、クレームの内容に応じて必要なエスカレーションをかける。保守担当はクレーム担当や営業担当からの指示を見ながら修理に走る(笑)。

SARS-CoV-2とCOVID-19

COVID-19とは新型コロナウイルスによる感染症の意味だ。一方、SARS-CoV-2はその新型コロナウイルスであり、「severe acute respiratory syndrome coronavirus 2」の略だ。約3万の塩基のRNAで構成されている。わずか100nmという極小の存在だけど、RNAウイルスのゲノムサイズとしては最大規模だ。人間の遺伝子はDNAでプラスの鎖とマイナスの鎖がガッチリと組み合わさっているので安定しているが、新型コロナはRNAなので一本のプラスの鎖(RNA)だ。このため、ウイルスは細かな変異を繰り返すことで生き残りを果たそうとする。このため同じウイルスでも国や地域によって遺伝的性質が異なる。変異は偶然の産物であるけど、生活習慣、国家による対策、気候、医療制度の違いなどにも影響を受けると言われている。ウイルスは紫外線と湿度に弱いという指摘もあり、日本の梅雨や猛暑の時期には沈静化するかもしれないけど、地球上にはすべての季節が同時に存在しているので、ワクチンができても長い戦いになると覚悟すべきだ。風邪の原因ウイルスには、すでに4種類のコロナウイルスがあると判明している。これら4種のコロナウイルスに感染した人はコロナウイルス属に対する免疫を獲得している可能性もあり、ヒトによっては風邪のコロナウイルスに共通の何らかの抗原を認識する「広域交叉反応性メモリーT細胞」を獲得している可能性がある。


図3 新型コロナウイルスの構造と模型図

自然免疫と獲得免疫

免疫には、自然免疫と獲得免疫がある。病原体が体の外から中に侵入するには、3つの障壁がある。最初の2つが自然免疫で皮膚や粘膜に存在する殺菌物質が病原体の体内への侵入を防ぐ。ウイルスが内側の層に入ると白血球の一部である食細胞が病原体を食べるか殺菌物質で殺すという自然免疫だ。自然免疫だけでウイルスを防げないと、白血球の中の2種類のリンパ球、B細胞とT細胞が主体となって抗体などを作ってウイルスを排除する。これが獲得免疫だ。
図4 自然免疫と獲得免疫

まとめ

サイトカインとは細胞間の伝達メッセージのようなもの。しかし、ウイルスなどが細胞に侵入するとこれを退治しようと免疫が機能する。しかし、新型コロナの重篤化の原因の一つがこのサイトカインの暴走(ストーム)だったとは知らなかった。免疫系も自然免疫と獲得免疫がある。人間の身体は本当によくできてきると感心する。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。少しでも参考になる部分があれば、いいねを押して頂けると励みになります。

最新情報をチェックしよう!