TED視聴:違法な乱獲の放置は海の生き物の絶滅を招く。我々が行うべき5つの行動。

はじめに

久しぶりに時間が取れたのでTED動画を拝聴した。目に止まったのが魚が助けを求めている動画だった。どういうことかといえば、大規模な乱獲によって多くの魚が絶滅の危機に瀕しているという問題提起だ。特に、3つの事例で問題を説明している。また、動画の視聴の後の掘り下げ(Dig Deeper)では解決策についても言及していたので、これらを参考に5つの解決案をまとめてみた。興味のある方はまずはこの動画を視聴してみてほしい。

(出典:TED-Ed動画)

乱獲の実態

動画の中では数多くの事例が紹介されている。ここではそのうちの3つについてまとめてみた。これ以外にエビを収穫するために地引網で根こそぎ漁獲していることやエビの養殖のために貴重なマングローブが破壊されれいることなども紹介されていた。目的以外の魚類を生きている状態で海に戻すのであれば理解できるけど、目的以外の魚類を死んだ状態で海に廃棄すると言うのは信じられない行為だ。

東カナダでの乱獲の教訓

東カナダのグランドバンクは、寒流と暖流がぶつかり、マダラ漁が盛んであった大西洋の漁場だった。年間20万トンから30万トンの漁獲量で推移したこの100年は安定したサステナブルな漁場だった。しかし、1960年代には100万トンを超え、一時的に180万トンを越えると、漁獲量は60万トンまで激減し、1992年には禁漁となった。この結果、4万人以上の漁業関係者が失業し、大きな社会的問題となった。マダラは成魚になるまで4年ほどかかるので、一度減少した魚の量を元に戻すのには時間がかかるという当然の教訓だ。

(出典:Umito

中国漁船団の脅威

動画でも現代の漁業は、戦争用に開発されたレーダーやソナーやヘリコプターを駆使して、減少しつつある魚の群れを一網打尽に乱獲する。そして、急速冷凍設備を備えた巨大な船の中で処理し、目的外の魚は死んだ状態で海に放棄される。サイエンス・アドバンシス誌(2020年7月)によれば、2017年から2018年にかけて1,600隻を超える中国漁船が北朝鮮海域で違法漁獲を行い、同期間の中国漁船によるスルメイカの推定水揚量は、合法的な日韓の合計水揚量に匹敵する16万4,000メートルトンと試算されている。2017年にガラパゴス海洋保護区に侵入したために拿捕された中国船舶には300メートルトンに及ぶ魚類が冷凍保存されて、その大部分は香港市場で人気の高い絶滅危惧種のアカシュモクザメだ。国際連合食糧農業機関(FAO)の2020年報告書によると世界の漁船の約19%が中国籍で、世界の魚消費量の36%を同国が占めている。中国船籍が尖閣諸島を往来していて軍事的な問題になっているが、それと同様に違法な漁業もおこなっていることは日本ではなぜかあまり報道されない。

(出典:Forum

残酷なシャークフィニング(Shark Finning)

現在、年間で一億匹以上のサメが乱獲されている。日本人の感覚であれば、サメでも鯨でもマグロでも漁獲すれば、徹底的に活用しようとする。貴重な命を頂くと言う感謝の気持ちと畏敬の念を込めて、食事の前には「いただきます」と唱える。しかし、そのような感覚のない民族もいる。特に酷いのはシャークフィニングだ。中国などアジアではサメのフィンの軟骨はフカヒレとして食されるので、最も価値の高い部位だ。このため、サメからフィンの部分だけをカットして、残りを海中に戻すという。フィンをカットされたサメは生きることはできない。大量に虐殺とも言える漁法に対して世界中から非難の声が出ている。

(出典:MUSEA BLOG

5つの解決案

これらの問題を解決するにはどうすれば良いのだろうか。この話題の深掘り(Dip Deeper)に記載されていたことを参考にまとめてみた。

案1) 持続可能な地元産水産物の提供と消費:地域支援漁業の推進

漁業には遠洋漁業、沖合漁業、沿岸漁業、そして海面養殖業などに分類される。日本の漁業・養殖業生産量は、1984年(昭和59年)の1,282万トンをピークに、2016年(平成28年)には436万トンまで減少している。日本は海に囲まれた自然豊かな国であった。豊かな漁場にするためには、社会の関係者が協力しあい、連携しあうことが求められる。

(出典:農林水産省

例えば神奈川県では、漁師に就業する人の安定的な確保と、漁協や漁港の整備、そして海・川・湖などの水産資源の管理強化を連携し、結果として良質な地元水産物の安定供給を図るようなグランドデザインを発表している。もっといえば、海と山も繋がっている。山と川と海を繋ぐプランも期待される。

(出典:かながわグランドデザイン

案2) 産地直送(Dock to Dish):トレーサビリティの確保

水産業の活性化をめざし、2018年12月には改正漁業法が国会を通過し、2020年12月1日に改正漁業法が施行された。これは、適切な資源管理の強化と水産業の成長産業化、違反への罰則強化などを柱としている。この法律を確実に実施するだけではなく、水産物を輸出する場合にも産地証明が求められており、漁獲物のトレーサビリを高い精度で実現することが重要だ。このような背景から、ブロックチェーンを活用したコンサルティングを推進する株式会社電縁が漁獲物に漁獲証明を与え、水揚、加工、流通等の過程を追跡することのできるトレーサビリティシステムの実証実験を東京大学大学院との共同で水産庁から受託した。期間は、2020年4月から2021年3月までで、北海道、東北、西日本の3漁場を対象としている。その結果や今後の進め方は気になるところだ。
(出典:PR Times

案3) 小規模漁業の支援:持続可能な漁法の維持と支援

先に地元産水産物の活性化に言及したけど、世界的にみても小規模漁業は、世界の漁獲量の約半分を占めており、食糧安全保障や、沿岸経済、文化に欠かせない存在と言える。小規模漁業が持続可能な漁法に移行し、それを維持するために必要な支援を確保するために、Blue Ventures、Blue Halo Initiative、Fish Foreverなどのプログラムが取り組まれている。例えば、Blue Venturesでは、20年にわたってインド洋やその他の地域の沿岸コミュニティと協力してきた経験を生かし、小規模漁民やコミュニティ組織と協力して乱獲に対処している。コミュニティ・レベルでの漁業管理と保全の設計、拡大、強化、維持に注力し、パートナーをネットワークで結び、改革を提唱し、世界中の漁業コミュニティを支援するためのツールやベストプラクティスを共有している。こうした草の根的な取り組みも歓迎だ。
(出典:blue ventures)

案4) 持続可能性格付:モントレーベイ水族館

エデンの東の舞台となった米カリフォルニアのモントレーベイは風光明媚な港町だ。ここにある水族館では、シーフードの持続可能性評価を発表している。モントレーベイ水族館のシーフードウォッチプログラムは、消費者がより多くの情報を得た上で選択できるように水産物の持続可能性を評価し、格付けするものだ。水族館といえば、デートスポットだったり、家族で訪れて楽しむエンターテインメントな場所と思いがちだけど、このような格付けを行うとは驚きだ。日本の水族館でも持続可能性を高めるために様々な取り組みをしていると思うけど、参考にすべき事例だと思った。

(出典:モントレーベイ水族館

案5) 違法漁業の追跡と阻止

国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization)によると、違法漁業による損失は年間230億米ドルと推定されている。特に、インドネシアでの違法漁業は世界の約30%を占めている。違法漁業とは、IUUと呼ぶ。IUUとは、違法(Illegal)、未報告(unreported)、未規制(unregulated)の略だ。違法な漁業(Illegal)は、漁船や漁業者が漁業法に違反して操業した場合に起こる。未報告漁業(unreported fishing)とは、適用される法律や規則に反して、関連する国家機関やRFMOに未報告または誤報告された漁業のことである。無規制漁業(unregulated fishing)とは、一般的に、国籍のない船舶による漁業、公海上の漁場や魚種を管理するRFMOの締約国ではない国の旗を掲げた船舶による漁業、または無規制区域での漁獲のことを指す。IUU漁業は労働者の人権侵害などの犯罪行為が多発していることも問題だ。台湾の遠洋漁船62隻のうち92%で減給、82%で長時間労働、24%の身体的暴力があったと言う。2021年5月にはアメリカ合衆国税関・国境警備局が、インドネシア人の乗組員に対する暴力行為などがあったとして、中国のDalian Ocean Fishing社の所有する全漁船32隻に対して輸入を禁じた。IUU漁業により獲られた水産物の額は世界全体で年間260-500億米ドルにのぼると言う。

(出典:Blood and Water)

まとめ

海洋に関する問題というと、プラスチックゴミ問題がまず連想される。1950年以降全世界で生産されたプラスチックは83億トンを超え、うち63億トンがごみとして廃棄された。回収されたプラスチックごみの79%が埋立て、あるいは海洋等へ投棄されており、リサイクルされたプラスチックは9%に過ぎない。2020年の中国のプラスチック生産量は1億トン余りとなり、プラスチック製品の生産量は7600万トンを超えている。プラスチックゴミに加えて海洋資源の大量乱獲も中国だけの問題ではないが、中国が占める比率は低くはない。日本内で解決すべき問題や解決できる問題と、国際的な連携や協調を図りながら進めるべき問題がある。どちらの対応も待ったなしだ。

(出典:Blood and Water)

以上

最後まで読んでいただきありがとうございます。

参考(英文スクリプト)

Fish are in trouble. The cod population off Canada’s East Coast collapsed in the 1990s, intense recreational and commercial fishing has decimated goliath grouper populations in South Florida, and most populations of tuna have plummeted(激減) by over 50%, with the Southern Atlantic bluefin on the verge of extinction(絶滅). Those are just a couple of many examples. Overfishing is happening all over the world. How did this happen? When some people think of fishing, they imagine relaxing in a boat and patiently reeling in the day’s catch. But modern industrial fishing, the kind that stocks our grocery shelves, looks more like warfare. In fact, the technologies they employ were developed for war. Radar, Sonner, helicopters and spotter planes are all used to guide factory ships towards dwindling(縮む、減少する) schools of fish. Long lines with hundreds of fooks or huge nets round-up massive amounts of fish, along with other species, like seabirds, turtles, and dolphins. And fish are hauled up onto giant boats, complete with onboard flash freezing and processing facilities. 

All of these technologies have enabled us to catch fish at greater depths and farther out at sea than ever before. And as the distance and depth of fishing have expanded, so has the variety of species we target. For example, the Patagonian toothfish neither sounds nor looks very appetizing. And fishermen ignored it until the late 1970s. Then it was rebranded and marketed to chefs in the U.S. as Chilean sea bass, despite the animal actually being a type of cod. Soon it was popping up in markets all over the world and is now a delicacy. Unfortunately, these deep-water fish don’t reproduce until they are at least ten years old, making them extremely vulnerable to overfishing when the young are caught before they have had the chance to spawn(産卵). Consumer taste and prices can also have harmful effects. For example, shark fin soup is considered such a delicacy in China and Vietnam that the fin has become the most profitable part of the shark. This leads many fishermen to fill their boats with fins leaving millions of dead sharks behind. The problems are not unique to toothfish and sharks. 

Almost 31% of the world’s fish populations are overfished, and another 58% are fished at the maximum sustainable level. Wild fish simply can’t reproduce as fast as 7 billion people can eat them. Fishing also has impacts on broader ecosystems. Wild shrimp are typically caught by dragging nets the size of a football field along the ocean bottom, disrupting or destroying seafloor habitats. The catch is often as little as 5% shrimp. The rest is by-catch, unwanted animals that are thrown back dead. And coastal shrimp farming is not much better. mangroves are bulldozed to make room for shrimp farms, robbing coastal communities of storm protection and natural water filtration(濾過) and depriving fish of key nursery habitats(生育地). So what does it look like to five fish a break and let them recover? Protection can take many forms. In national waters, governments can set limits about how, when, where, and how much fishing occurs, with restrictions on certain boats and equipment. 

Harmful practices, such as bottom trawling, can be banned altogether, and we can establish marine reserves closed to all fishing to help ecosystems restore themselves. They’re also a role for consumer awareness and boycotts to reduce wasteful practices, like shark finning, and push fishing industries towards more sustainable practices. Past interventions have successfully helped depleted fish populations recover. There are many solutions. The best approach for each fishery must be considered based on science, respect for the local communities that rely on the ocean, and for fish as wild animals. And then the rules must be enforced. International collaboration is often needed, too, because fish don’t care about our borders. We need to end overfishing. Ecosystems, food security, jobs, economies, and coastal cultures all depend on it. 

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