はじめに
少子化の問題については、以前投稿した(参考1)。この中でも言及したが、ベーシックインカムの完成形を一気に提供することは財政問題もあり、社会のコンセンサスを得ることも難しいかもしれないが、段階的な導入として、その第一段階に子どものためのベーシックインカムを実現するのは良い考えだと思っている。
子育て世帯のためのベーシックインカム
日経新聞の朝刊(2021年5月19日)を読んでいて、びっくりした。次のような記事が掲載されていた。
【ワシントン=大越匡洋】バイデン米政権は、最低限の所得をあらゆる家庭に保障する「ベーシックインカム」に似た制度の構築を静かに進めている。3月に2021年に限って拡充を決めた子育て世帯に対する税額控除を使い、7月から毎月一定額を対象家庭に給付する。制度を定着させ、期間延長に反対する野党を揺さぶる狙いがある。
元ネタを探していると、どうも「The Guardian」のようだ。同サイトの記事(英語)を要約すると次のようなことだ。
・米カリフォルニア州のオークランドで低所得者向けにベーシックインカムのプログラムを開始する。
・収入が地域の中央値の半分以下で、18歳未満の子どもが一人以上いる世帯。特に有色人種が想定されている。
・参加者は資格要件を満たす応募者からランダムに選択される。
・支給額は月500ドルで支給期間は1年半の予定だ。
・原資は、全国的な慈善団体を含む寄付者から675万ドルを調達した。
・今回の実験は「オークランド・レジリエント・ファミリーズ・プログラム」と命名されている
オークランドの市長は、公平な社会に向けて何世紀にもわたる経済的及び人種的不公平をなくすシステムを構築したいという。この取り組みは果たして世の中でどのように評価されるのだろう。
出生数の推移
先進国における出生率の低下は著しい。その中でも特に日本の出生率は2017年時点で1.43まで低下した。2020年の出生数は84.7万人と前年比1.9%の減少だ。2021年もコロナ禍の影響で低下するのだろうか。このように減少する子どもに対する手当を厚くすることは、最小のコストで最大の効果を上げることが期待できると言えるのではないか。
図1 世界の出生率の推移(参考2)
女性の年齢別出生率
図3は内閣府が発表した女性の年齢別出生率の分布だ。1975年ではピークが25歳で出生率は0.22だった。2017年にはピークが30歳で出生率は0.08だ。つまり、平均的に言って、出産の年齢が5歳遅くなり、出生率も低下している。少子化をストップするには、出生率を高めるか、出産年齢を若返させるか、両方かとなる。個人的には、沖縄モデルが興味深い。つまり、20歳で出産して、お母さんは働く(もしくは大学生を続ける)。子育てはおばあさんが行う。おばあさんと言っても平均40歳だ。そして、子どもが大きくなって20歳になったら、お母さんは仕事をやめて子育て(孫育て)をする。人それぞれに価値観があるし、どのような生き方をするかは個人の自由だけど、少なくともこのようなライフサイクルが許容される世の中にすることができれば、出生率も少しは改善するのではないか。さらには、子どもができたらベーシックインカムで手厚く保護してくれるのであれば、奨学金(=借金)に頼らなくても、最低限の生活を親子3代で支え合っていくというモデルだ。ジャストアイデアなので、批判も多いと思うけど、どのような問題があるのだろう。
図2 女性の年齢別出生率の比較(参考3)
日本におけるベーシックインカム議論
日本維新の会がベーシックインカムを公約に掲げたようだ(参考4)。しかし、議論の構造が10年前、20年前から変わっていない気がする。結局財源論で紛糾して、先延ばしになるような懸念がある。
「ベーシックインカムはサーキュレータか(参考5)」でも持論を展開したが、ベーシックインカムとして国なり、都道府県なりが市民に提供しても、そのお金が市場を循環する中で消費税等の税金として支給元に戻ってくるような仕組みにできないものか。まさに金は天下の回りものだ。何兆円ものお金も単にどこかにストックしていては意味がない。お金が市場を循環することこそが大事なのではないか。
まとめ
ベーシックインカムを公約に掲げたのは日本維新の会が初めてではない。都知事選において緑の党が掲げた。今もホームページを見るとベーシックインカムの実現を目指します(参考6)とある。しかし、これは個人的感想だけど都知事は好きになれない。本音で話をしている感じがない。「排除します」が本音と感じた人たちは去っていった。新型コロナに限らずインフルエンザや風邪のウイルスは紫外線と湿気に弱いともいう。日本の梅雨と暑い夏の間はコロナも沈静化するのだろうか。そのタイミングでオリンピックとパラリンピックをやっちゃうのだろうか。場当たり的な対応ではなく、この日本を100年後、200年後どのような国にしたいのか、子どもたちが笑顔で自信を持って生きていけるようにするにはどうすれば良いのか。そんなことを本当に真剣に研究していきたいと思う。
以上
最後まで読んで頂きありがとうございました。もし、少しでも参考になる点があればいいね(ハートマーク)をクリックして頂けると励みになります。
拝