その1:電動アシスト自転車の現状と課題(便利だけど危険。事故に注意)

はじめに

空飛ぶクルマが現実になるか」で電動アシスト自転車に電力の回生システムが活用されていることに言及したが、今回は日本で広く普及している電動アシスト自転車を中心に将来のモビリティについて考えてみたいと思った。次のような3連続の想定だ。

その1:電動アシスト自転車の現状や課題(⇨ 今回の投稿)
その2:電動アシスト自転車の新しいチャレンジの動向(次回
その3:モビリティの多様化と将来の可能性(次々回

電動アシスト自転車の動向

電動アシスト自転車の販売台数の推移

電動アシスト自転車の国内販売が好調だ。2020年の販売台数は74万台と前年比5.7%増だった。国内でシェア首位はパナソニックだ。創業者の松下幸之助は自転車のライトから事業を興したこともあり、自転車への想いは強い。最近では、1回の充電で最長100kmの走行が可能な機種も登場している。国内で電動アシスト自転車が初めて発売されたのは、1994年のヤマハだ。オートバイの技術も駆使してパワーアシストを発売した。世界初は、残念ながら日本ではなくスイスのVelocityで1992年にDolphinというモデルが発売された。ただし、1992年にプロトタイプを発売し、1995年に量産を開始した(出典)という記述もあり、これが本当なら量産機としてはヤマハが世界初となる。欧米では、ペデレック(pedelec:pedal electric cycle)とも呼ばれる。これは、未来の乗り物という1999年にスザンヌ・ブリュッシュが発表した論文で提唱されたものだ。電動アシスト自転車は10万円以上の製品がほとんどだが堅調に伸びている。購入者の8割は初めて買う顧客とされている。確かに、当初は主婦層向けのママチャリが多かったが、最近はスポーツタイプも発売されている。

(出典:経済省生産動態統計調査

自転車保有台数と自動車保有台数

警察庁の資料では、2010年度における日本の自転車の保有台数は約7億6000万台だ。一方、自動車の保有台数は7億1500万台だ。自転車を保有する人は1970年以降、右肩上がりに増え続け2010年以降も緩やかな伸びを見せる。自転車自体の伸びは鈍化しているが、増加しているのが電動アシスト自転車だ。

(出典:新会社設立.jp)

市場を牽引する電動アシスト自転車

一般的な自転車(軽快車)の販売台数は減少傾向にあるが、下の図のオレンジの棒グラフで示すように、電動アシスト自転車は台数も販売金額も増加傾向にある。電動アシスト自転車の販売単価は、2007年の4.9万円/台から2020年には8.4万円/台まで拡大している。

(出典:経済産業省生産動態統計調査

電動アシスト自転車を取り巻く課題

電動アシスト自転車に対する日米欧の規制の違い

電動アシスト自転車に対する規制は国によって異なる。例えば、日本ではアシストの最高速度は時速10kmから徐々に減少して、時速24kmでゼロとなる。一方、欧州は時速20kmぐらいまではフルでアシストするが時速25kmで急速にゼロとなる。アメリカでは時速32kmまではアシストする。個人的には時速30kmぐらいまでアシストしてくれると嬉しい。下の表は、電動アシスト自転車ではなく、電動キックボードに対する規制状況等だが、国によって規制が異なる。フランスのように自転車専用レーンを多く設置している国では、電動キックボードも自転車専用レーンで走行できるようにしているので、一気に普及が進んだ。世界各国の政府は、都市部で深刻化する渋滞解消への期待やCO2削減に向けた自動車の利用抑制政策を補完するためにも電動キックボードのシェアリングサービスの普及を推進している側面があるようだ。

(出典:丸紅経済研究所

増大する電動アシスト自転車の事故

日本では、電動アシスト自転車の座席前後に子供を乗せて颯爽と自転車で駆け抜ける姿を見ることが多い。普通の自転車を漕ぐお父さんがなかなか追いつけるにいる姿はコミカルだった。電動アシスト自転車は自分も愛用しているが、数十歳若返ったように登り坂でも快適に走行できるが、前後に子供を乗せていると重心は高くなり、操作する親の体重も含めると100kgを超す。交差点での一時停止をしないだけではなく、左右の注意確認もしないで疾走する姿を見るとちょっと事故が心配になる。下の図に示すように、電動アシストの販売台数の増加に合わせて、事故件数も増加している。警察庁によると、2018年に起きた自転車関連事故は8万5,641件と10年前に比べてほぼ半減したが、電動アシスト関連は2,243件と倍倍している。さらに、死亡事故の割合も高いので、ヘルメットを親子で被るなど安全対策が必要だ。

(出典:jiji.com)

まとめ

電動アシスト自転車は、主婦の味方だ。特に子供二人を連れて買い物などをするのは大変だけど、電動アシスト自転車があれば、移動も楽だ。ただ、やはり交通事故には注意したい。被害者になるのも加害者になるのも悲劇だ。次回は、電動アシスト自転車の新しい挑戦の状況について概観したいと思う。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

参考)
その2:新しいチャレンジの動向
・電動バイクと電動アシスト自転車の二刀流
・回生充電のチャレンジ
・高出力タイプの投入
・チェーンレス電動アシスト自転車
電動アシスト自転車の安全強化に向けて
・電動アシスト自転車でのマナー違反
・電動アシスト自転車でのヒヤリハット
電動アシスト自転車の盗難防止対策
・位置管理での防犯アプリ
その3:モビリティの多様化
・キックボード
・電動三輪アシスト自転車
・電動シニアカート

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