医は仁術か。勤務か開業医か、都心の病院か地方の病院か、日本か海外かで医師の年収も大きく異なる。

はじめに

小学生の将来なりたい職業ランキングは、その調査実施時点での世相を反映するので興味深い。2020年度では、男子の1位がサッカー選手、2位が野球選手、3位が医者、4位が会社員だった。女子の1位は薬剤師、2位が看護師、3位が保育士、4位が医師だった。男女ともに人気の高い医師の年収はどれぐらいなのか、海外との比較や診療科による比較や年齢による比較などにトライしてみた。コロナ禍の影響もあり、2021年度は医師の任期が上昇するのだろうか。

(出典:日本FP協会

賃金ランキングの推移

先のランキングは小学生だったけど、実際の年収はどうかを調べてみた。左は、厚生労働省の2016年賃金構造基本統計調査の結果だ。右は、e-Stat 令和元年賃金構造基本統計調査(一般労働者)職種からだ。ともに1位がパイロット、2位が医師、3位が大学教授と順番は変わっていないがパイロットと医師は年収が低下し、大学教授は年収が上がっている。大学講師や高校教員など教育関連の職種の年収が上がっている。

(出典:左が東洋経済、右がベネッセ

年齢・性別でみる医師の年収推移

医師の年収の年齢別・性別の分布は下の図の通りだ。これは、厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」からのデータだ。20代から50代までは右肩上がりで上昇しているが、60代、70代には減少傾向があるが、それでも1,000万円以上の年収だ。また、男女の格差は60歳代前半で最大400万円あるが、それ以外でも100万円から200万円程度の格差がある。特に40歳代後半で女性のみ年収が低下しているのが特徴的だが、50歳代では復活し、50歳代の後半では男性よりも女性の年収が高い。

(出典:転職

役職別医師の年収(ボーナスを除く)

先のグラフに見る通り、女性は40歳代後半で年収が落ちて、50歳代で年収が急増している。これは、役職に就いた女性の勤務継続や復職が多いためかと想定する。下のグラフは単純に支給が決まっている給与を12倍したもので、ボーナスなどそれ以外の収入を含めていない。医師の場合には役職が上がるにつれて年収も高い。副院長や病院長は、人の命を預かる病院をマネジメントするという大きな責任を負う。このため、優秀な医師が経験を積んでやっと選任される狭き門だと言える。


(出典::転職

勤務医と開業医の年間収入

医師には、大学病院などの勤務する勤務医と、独立して開業する開業医に分類できる。開業医になるには、能力と経験と資金と信用を積み上げて、磨き上げる必要があるため、開業医は医師全体の20%程度に留まると言われている。しかし、年収でみた場合には、勤務医と開業医では2-3倍の開きがある。開業医のトップ3は産婦人科、眼科、整形外科となっている。

(出典:すべらない転職

米国の専門医・診療科別年収と世界の専門医の年収比較

日本の中では医師は高収入な職業と言えるが、海外と比べるとどうか。例えば、下の図(左)は米国の専門医の診療科別の年収だが、循環器科や整形外科は6,000万円を超えている。なお、米国では勤務医と開業医で年収の格差は日本ほど大きくないという。また、海外諸国と比較すると、日本の医師の年収は平均1,228万円だが、トップのオランダは3,886万円と3倍以上の開きがある。


(出典:医師求人ランキング

都道府県別の医師の年収

日本では、都心の病院よりも地方の病院の方が医師の年収が高い。これはいくつかの理由があり、まず需要と供給の問題から、医師が足りてないところほど給与は高い。また、医師が少ない地方では医師一人あたりの負担が大きい。また、経験豊かな医師が求められるため、医師の高齢化も進んでいる。また、開業医の場合も都心は競争が激しいが、地方では医療機関も不足気味なのと看護師やスタッフの人件費も比較的高くないため、高収益につながるという側面があるようだ。

(出典:ドクタービジョン

診療科別年収提示額ランキング

医は仁術でありたい。最近では在宅医療や精神科、整形外科などの年収が高い。高齢化が進む日本社会では在宅医療のニーズはますます高まるし、コロナ禍における対応でも非常に重要な存在と言える。2017年では11位だった精神科が2位に急浮上しているのは、メンタル系の疾患が増加していることの裏返しだろう。整形外科が3位を維持している。通常の医療は行政の方針に基づく診療報酬がベースになるが、保険に頼らない自由診療が占める比率の多い点ことも要因と言える。

(出典:エピロギ

診療科別労働状況

医師はやりがいがある職業だ。以前、「課題は残業時間の削減ではなく、やる気のアップだ」に投稿した通り、残業時間とやる気には相関関係がある。患者の命がかかっているので、勤務時間で仕事が終わるわけではない。このため、医師の労働時間は1日平均10時間以上が半分近い。過労死ラインと言われる12時間以上の比率も約17%と高い。12時間労働率で見ると、最も比率が高いのは脳神経外科の31.6%だ。2位が外科の27.8%、3位が整形外科の26.7%だ。逆に、精神科、皮膚科、救急科、リハビリ科は0%だ。救急科が少ないのは、シフト体制が整備されているためだろうか。救急医は非常にストレスが高く、生命の救済に直結するため、環境の改善はぜひ進めて欲しいと思う。

(出典:プレジデント

まとめ

今回は、人気の職業から医師を特に年収の面から深掘りしてみた。その結果、医療の現場でも需要と供給のバランスから年収が決まるという構図があることがわかった。もちろん、医療は人々の命と健康を守るための仁術であるべきだけど、一方で頑張った分だけ報われてほしい職業でもある。海外の医師の年収と日本の医師の年収の違いには驚いたけど、上を見ればキリがないし、下を見てもキリがない。医師も看護師も患者もそれぞれが支え合うような社会であって欲しいと感じました。

以上

最後まで読んで頂きありがとうございます。

 

 

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