遠隔医療その1:その定義と市場動向。2018年度で188億円の市場。今後の拡大に期待。

はじめに

コロナ禍に伴ってテレワークやオンライン授業は確実に浸透した。オンラインによる遠隔医療も当然浸透しているのだろうと思っていた。しかし、昨日の日本経済新聞では患者の負担は対面よりもオンラインの方が高くなるケースが相次いでいるという記事があり、ひっくり返りそうになった。遠隔医療のことが気になって調べると、関係することが幅広くてさらに困惑した。以前「病院の3分2が赤字経営」だと投稿したが、ビジネスの観点から見れば、遠隔医療は今後成長が見込める有望市場だ。医療の話、技術の話、医療報酬の話など多岐にわたるので、今後4回に分けて、遠隔医療に関して投稿したい。
その1:遠隔医療の定義と傾向(⇨ 今回の投稿)
その2:遠隔医療の課題(次回
その3:増大する医療費と使える遠隔診療アプリの動向(次々回)
その4:セキュリティと今後の可能性(次々々回

遠隔医療の定義

日本遠隔医療学会の定義では、「遠隔医療とは、通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為をいう」とある。遠隔医療とは、遠隔で診察、診断、治療、診療を行うことと理解するが、一般には遠隔での診察や診断として使っている。それぞれの意味は、次のような解釈する(出典)。
・診察:医師が患者の病状・病因などをさぐること。
・診断:医師が患者の病状・病因などを判断すること。
・治療:医師が患者の病気やけがをなおすこと。
・診療:診察・診断・治療をひとくくりにした総称。

D to P

遠隔診療とは前述の通り診察、診断、治療の総称だ。医師法に基づき専門医(D)と主治医(D)の間の遠隔診療は問題ない。医師(D)と患者(P)との遠隔医療はこれまで対面診療が原則であったが、平成9年や平成15年には遠隔診療の規制が緩和されている。日本国内では、旭川医科大学が道北および離島部への遠隔医療を積極的に進めている。また、海外では患者(P)と看護師(N)を遠隔で対応するテレナーシング(TeleNursing)は多くの国で大きな成長を果たしている。日本ではこれからだが、看護師不足の解消や、移動時間の短縮、自宅で看護できることなどがメリットで、実際に遠隔看護に対応している看護師の満足度は高い。調査は4年毎に36カ国1500人以上の看護師を対象に実施し、回答者の89%は看護教育の中にテレヘルスを取り入れるべきだ考えている(出典)。

(出典:医療の未来を考える

オンライン診療

2018年に厚生労働省が公表したガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療を下の図にように説明している。つまり、遠隔医療とは、D to DだけではなくD to Dを含み、かつオンライン診療、オンライン受診勧奨、遠隔健康医療相談までを含む概念だ。特に、遠隔医療のうち、医師と患者の間を情報通信機器を介して患者の診察及び診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムに行う行為と定義している。

(出典:厚生労働省

遠隔医療の傾向

遠隔医療の変遷と遷移

遠隔診療については、段階的に規制緩和が進められている。現在は、新型コロナに対応するための時限措置として、初診についても対応可能としている。診療報酬上の取扱いについては、次回に回すが、対面よりも遠隔の方が診療報酬が低いことが問題となっていた。利用者から見れば負担が減るので問題はないが、医師が受け取る報酬が少ないため、システム利用料などの保険外費用を嵩上げすることを認めたため、利用者から見ると対面に比べて高いとメディアでも指摘している(参考)。

(出典:MedionLife)

オンライン診療サービスの市場規模

調査会社のシード・プランニングが2020年7月に調査した「2020年版オンライン診療サービスの現状と将来動向」における医療機関の収入である保険診療、自由診療、オンライン診療システム、遠隔医療相談サービスの市場規模の推移を下図に示す。同市場の規模は2018年の123億円から、2030年に292億円市場と倍以上に増加する予測だ。

(出典:シード・プランニング

オンライン診療メドレーの売上高の推移

2009年6月に創業された株式会社メドレーは、2015年2月にオンライン医療事典MEDLEYを開始した。2016年2月にはオンライン診療システムCLINICSを提供開始した。そのメドレーの2020年1月から12月の決算では、売り上げは前年度比43%増の約68億円、営業利益も前年の2.6倍となる4億円を達成した。これは、医療・介護従事者の人材サービスはもちろん、新型コロナウイルスの流行とともに初診での利用が時限的に可能となったオンライン診療での伸びが追い風となっている。メドレーの売り上げの増加状況を見ると、シード・プランニングの市場規模の増加は控えめに感じる。現状では、遠隔診断の市場規模は対面診断の市場規模と比べるべきもないほど小さいが、遠隔医療の可能性と重要性はますます高まるだろう。

(出典:ビジネスインサイダー

まとめ

日本の2020年における医療費は43.9兆円だ。2030年には約62兆円と予想されている。これは少し不健全に市場規模が大きいと感じるが、ほぼ対面だ。しかし、コロナ禍に伴い遠隔での対応が増加するだろう。現状では、遠隔医療の2030年の市場は292億円と予想されており、その構成比はわずか0.047%にすぎない。しかし、今後は対面医療の水準まで遠隔医療の市場が増大してもおかしくはないだろう。課題は多く、複雑だが、間違いなく成長が期待できる新規マーケットだ。今回含めて全4回に分けて遠隔医療について投稿したい。

以上

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